暗闘
季節が過ぎて冬が来た。
原作のゲームである王冠の野望は冬と夏の政略フェイズのBGMがやたらいいんだよなぁ。あの曲だけでご飯が食べられる。嘘つきました。超食べられません。
サヴィダン公爵は一度は王軍に敗れたものの踏みとどまり、それ以上の侵攻を防いでいる。
しかし状況はあまり芳しくないらしく、パスカル・シクスとの同盟を模索しているという噂が流れてきた。
これは原作ゲームにはない展開だ。だが、トップ陣の考えが噂で流れてきているというのは「ほとんど決まった状態」か「絶望的に決まっていないフェイク」かのどちらかだ。
サヴィダン公爵自身がパスカル・シクスと組めば実質国内でも最強の勢力となる。王軍を圧倒できるかもしれない。
しかしそれと同時期にシクス侯爵配下の政務官であり、ゲーム中でもそれなりに優秀な武将だったガエルが原因不明の突然死を遂げる。
……これも原作にない展開だがプレイ中によく見た光景でもあった。
序盤の王家は暗殺をバンバン仕掛けてくる。
システム上、武力が高い武将がいる土地への暗殺は決まりにくいのだが、ガエル政務官はちょうどパスカル・シクスのいる場所から離れていた。
アメリーお義姉様にガエル政務官のことを聞いてみたところ、「兄と仲良くしてくださっていました。とても柔和な方なのですが、粘り強い交渉をなさる方だと信頼していたようです」とのこと。切れ者ジャン・ヤヒア子爵の子飼いとすれば、そしてサヴィダン公爵との同盟が本当だとすれば、交渉は彼も関わっていた可能性が高い。
……うーん、優秀な政務官を失ったことで、少し話が後退しちゃうかもしれないな。これは様子を見るしかない。
メンディ大司教は特に動くことはなく、ガスティン侯爵はその動きの鈍さに助けられた形となっていた。
裏でなんか取引しているんだろうなぁ、なんて想像はできる。
王家から離れたらガスティン侯爵家が支援するとか、あり得る話だ。そもそもガスティン侯爵自身の政治力が国内ナンバー2だ。大敗しても時間があればすぐに回復してくる。それなりに所領も多く、全軍が病から回復すればまたどこかに出兵することが考えられた。
メンディ大司教との裏取引なんてものはなく、攻め込むのは向こうの方かもしれないが。
ペドレッティ伯爵家を含む辺境仲良しクラブは平和なものだった。
亜人の侵攻イベントがあればそれなりに忙しくもなるが、あれは季節最初に起こるイベントであり、今季は大丈夫なようだ。
お父様は領主としてのお仕事が忙しく、アメリーお義姉様はその補佐を請け負ってくれている。
ベルナールお兄様はひたすら練兵である。
私もお父様のお仕事を手伝ったり、そこそこ忙しい毎日だった。
ユーリお兄様? あの人が働くってのは詩を作るってことだぞ。
そんな冬の日、ペドレッティ伯爵家領の中部に位置するルノワ村の村長がお父様に謁見を申し出ていた。
いや、別になにか難しいことが起きたわけではなく定期連絡のようなものである。
争い事の調停とか、税収がどうとか、亜人の動きの様子とか、大事なことではあるけど、今のところすぐにどうということはなさそうな話題だった。
まぁ、こういうふうに「平時のお仕事」を疎かにしないからお父様は領民に慕われているのだと思うが。
ルノワ村は1日で帰れるような場所でもないため、村長はその日はうちの館に泊まることになった。
「いやぁ、いい酒をご馳走になって!」
村長はハゲ頭を真っ赤にしてご機嫌に酔っている。
おもしろくてユーリお兄様とベルナールお兄様は村長にガンガン飲ませていた。アメリーお義姉様はもう潰れていた。この人、私よりお酒に弱い。
……アルハラじゃないよ。村長が飲みたがってるから。
「そういえば、はくしゃくぅ。こんなめずらしいことがぁ、あったんですよぉ」
呂律が回っていない。
「なんかねぇ、ぜっせーのびじょが、うちのむらにきてぇ、あるばしょをゆびさしたとおもったらぁ、そのままきえちゃったんですよぉ」
絶世の美女が、ルノワ村にきて、ある場所を指さしたと思ったら、そのまま消えた、と……
季節イベントきた!
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科
政務官ガエル:フランチェスコ・トルド
ルノワ村村長:アドリアーノ・ガッリアーニ




