第81話 この寺院に、何がある?
草むらに覆われた山を、ソランジュは王子の誘導で進む。
「これからどこへ向かうんだ?」
「西にある、『太陽の寺院』です。その宝石の名は月の石と言います」
太古に建造された、無人の寺院である。キエフ・クテイ共有の秘宝が眠っている、最有力候補らしい。
「太陽の寺院か、コジモも、わたしのことを『ソル』と呼んでいた」
クテイの言葉で、『太陽』という意味だ。
「素敵です。わたしもそう呼べたらなぁ」
「友がつけてくれた愛称だ。愛着があるんだよ」
寺院の前に到着した。
石造りで、遠くから見ると黄金でできているように美しい。だが、人は誰もいなかった。
そこで、ソランジュはハッとなる。
リッコの言葉を思い出したのだ。
「そういえば、どうして私がコジモにソルと呼ばれていたか、キミは知っていたんだ?」
「はえ!?」
奇声を上げて、リッコは目を丸くする。
ソランジュを立ち直らせる際に、リッコはコジモが自分をソルと呼んでいたことを知っていた。誰にも話していないはずだ。
「や、やだなぁソランジュさん。酔っ払ったときに、話していたじゃないですかぁ。忘れっぽいんだからぁ」
モジモジしながら、リッコは語る。脂汗をかきながら。
「ううむ、そうだったか」
いちいち酒量など覚えていないので、記憶が曖昧である。
「そうですよ。お酒の飲み過ぎですよ、ソランジュさん」
リッコに丸め込まれた気がするが。
まあいい。
今は秘宝が先決だ。
「これだけ立派ならば、侵入されてもおかしくないのでは?」
「代々のキエフ王が、『誰も近づいてはならぬ』と」
侵入者はいたらしい。が、全員生きて帰ってこなかった。屈強の冒険者も、大部隊の盗賊たちも。高価な武装をした、異国の騎士団でさえ。
「何か、恐ろしい存在を封じているのではないかと。理由を聞く前に先代を失くしたので、ボクには分からずじまいでして」
参拝者は、近くまで来ても入らずに、付近で祈るだけなのだそうな。
「なにか、参考になるヒントはないか?」
「関係があるかは分かりませんが、コジモ・クテイ姫は、かつて一五〇〇年前に秘宝を守った、コスタ将軍の直系だとか」
コスタ将軍は、クテイの親戚筋だったという。だが、王家には女児しか生まれず、近親婚をしたという。その子孫がコジモらしい。
「そうだったのか! だからコジモはあんなにも、秘宝にこだわっていたんだな?」
クテイ王家は代々、友好の秘宝の在処を守っていた。が、伝える前にコジモが死に、秘宝の謎を知るものの数も減る一方らしい。
「この寺院の下に、何が」




