第57話 男爵夫人とエンカウントしました!
「貴様が、タンドック男爵夫人?」
「いかにも。アタシがデイナ・タンドックよ」
高圧的な態度で、夫人は名乗る。どれだけの人生を送れば、これだけふてぶてしくなるのだろう。
「な、なんか小っこいですよ!?」
そうなのだ。夫人というから、てっきり妖艶で狡猾な熟女を連想していた。が、目の前にいる少女は、どう見ても幼妻である。
「ちっこい言うな! これでも成人はしているのよ!」
自称夫人は、ミノタウロスの上で足をバタつかせた。
「アンタ達と違って、生娘でもないんだから!」
跡取りを産む任があるため、女性は若いうちに嫁に行くというが。いくらなんでも幼い。言動からして、見た目が幼いだけでもなさそうだ。
「これがわたくしのペット、グレーター・デーモンのハーゲンティよ」
夫人は魔物の角を撫でる。魔物のエネルギーをコントロールする角を撫でさせるとは。相当飼い慣らしているらしい。
「アレが、ココを仕切っている本当のボスですね?」
リッコが、チヨメに確認を取る。
「そうニャ。手強いらしいニャ」
チヨメは、まともに戦ったことがないらしい。しかし、凄腕の冒険者でも勝てないのだという。
「またグレーターデーモン。今度はミノタウロスか。今までの相手とは格が違うぞ」
「はい」と、リッコが盾を握り混む。
「こいつら食ってもいいのか?」
ハーゲンティという名のミノタウロスが、タンドック夫人にお伺いを立てた。
「そうね。秘宝を狙うヤツらはみんな敵ですもの。適当に食い散らかしなさいな」
こちらを見もしないで、夫人は杖キャンディを舐める。
「アタシの邪魔をする者らを、痛めつけておやり!」
宙に浮いたままの夫人を、ソランジュは警戒した。
「貴様の相手は我だ、ソランジュ・オルセンよ」
ミノタウロスが、ソランジュの視界に割って入る。
「邪魔をするな」
ソランジュが火球をミノタウロスに叩き込む。
だが、ミノタウロスのぶ厚い胸板に阻まれた。
「我こそは魔王アガリアレプトのしもべにして、グシオン将軍配下が一人、ミノタウロスのハーゲンティ! 我の糧となれ!」
猛烈な前蹴りが、リッコに襲いかかる。まともに浴びれば、小さな身体など踏み潰されてしまうだろう。
「シールドキーック!」
盾で防ぎつつ、ドロップキックで相手の威力を相殺した。だが、わずかにリッコの方がひるんでしまう。
「くう、強い!」
「重いだけだ。パワーだけのモンスター相手に惑わされるな」
「はい!」
倒れたままのリッコに、ハーゲンティの踏みつけが迫ってきた。




