再会
僕は どこにでもいるサラリーマン これといって何の取り柄もない 毎日同じ時間に会社に向かい 同じ時間に帰宅する 酒は呑まない 人付き合いは苦手 平凡無趣味という言葉が これほどまでにあてはまる男はこの世にいないって感じの男 妻と子供が1人 今の生活に特に不満は何もみあたらない ただただ一日一日を消化していくだけ
とある日の夜 息子を寝かしつけ暇を持て余していた僕は少し1人になりたくて深夜のレンタルビデオ屋へと向かった とりあえず来てはみたが何を借りるでもなく店内を彷徨っていた 1時間近く店内をうろうろしただろうか 結果これといって観たい映画もない 肩のこりをほぐすように頭をグルリと回し 店の出口へと向かう
なぜこの店にきたのか
何を求めてここにきたのか
来るべくして来たのかもしれない
何かに導かれるように...
遠くの方から 元気な女性が走ってくる 手を振りながら「としちゃん ‼︎ 」と叫びながら
僕の名前は 東山 俊彦 僕のことを「としちゃん」と呼ぶ人は限られている おばぁちゃん 母 妹 近所のおばさん 幼い頃からの聞きなれている呼び方 がしかし最近では実家に帰った時だけに使われる呼名
条件反射でその女性のほうへと視線を向ける そこには見なれた無邪気な笑顔 その女性は5年ほど前から音信不通になっていた女性 僕が密かに思いを寄せていた 林 優子 という名前の女性だった
『おぉ 久しぶり 元気してたっ?』 よそよそしい定番のあいさつ
「元気 元気 としちゃんも元気してたっ?」定型文でのやり取り
会いたかったような もう会いたくなかったような 不思議な気持ち
「あっ 携帯の電話番号 メールアドレス おしえるねっ」
彼女はレンタルビデオ屋に備え付けられているアンケート記入台でアンケート用紙の裏側に 自らの携帯番号 メールアドレス を書き僕に渡した
「子供が車で寝ているから 行くね 後でメールちょうだい」
『あ あぁ...』
「元気そぉでよかった じゃあね」
『じゃ じゃあね』
子供かぁ... ちゃんと結婚したんだぁ
僕は1人店の外へ出て ため息まじりの深呼吸を大きくひとつし ゆっくり夜空を見上げた
なんとなく暖かい夜風が心をふきぬけた




