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騎士の在り方

「……気に入らないんだよ」


唐突だった。


焚き火の火が小さく揺れる中、ライゼルが口を開いた。


周囲にいた者たちが静まる。


ウォーテンは顔を上げた。


「何が?」


静かに聞き返す。


ライゼルは一歩近づいた。


「お前だよ」


間を置かずに言う。


「前に出ない。目立たない。

 なのに、結果だけ持っていく」


言葉に棘はない。

だが、押さえきれない何かが滲んでいた。


「持っていってるつもりはないよ」


ウォーテンは答える。


「やるべきことをやってるだけだ」


「それだ」


ライゼルの声が低くなる。


「それが気に入らない」


周囲の空気が張り詰める。


「戦場はな、結果が全てなんだよ!」


ライゼルは続ける。


「強さを示し、仲間を鼓舞し、敵を圧倒する。

 それが前に立つ者の役目だ」


ウォーテンは少しだけ考えた。


「……崩れないことも、役目だと思う」


ライゼルの眉が動く。


「崩れない?」


「前に出すぎて崩れたら、意味がない。

 力がない者は繋がってないと勝てない」


「だから目立たなくていいって言うのか?」


「目立つ必要があるなら、やるよ」


ウォーテンは淡々と言う。


「でも、今は違う」


沈黙。


ライゼルはゆっくりと剣を抜いた。


「……一度、はっきりさせようか」


空気が変わる。


「俺とお前、どっちが正しいか」


周囲がざわめく。


「ライゼル……!」


誰かが止めようとする。


だが、彼は構わなかった。


「騎士としての在り方を賭ける」


ウォーテンは剣を見た。


そして、ゆっくりと立ち上がる。


「……それで納得するなら」


短く答えた。


「逃げないんだな」


「逃げる理由がない」


剣を抜く。


二人は向かい合う。


―――


開始の合図はなかった。


ライゼルが踏み込む。


白く煌めく剣の筋が空中を裂く。


正面からの圧。


ウォーテンは受ける。


衝撃。


オーギュレイで受け止める。


押し込まれる。


だが、崩れない。


弾く。


距離を取る。


ライゼルは止まらない。


連撃。


一撃一撃が鋭い。


「どうした!それで終わりか!」


ウォーテンは答えない。


受ける。

流す。

逸らす。


踏み込まない。


崩さない。


ただ。


繋ぐ。


「来いよ!」


ライゼルが叫ぶ。


ライゼルの剣が発光し、力が増す。


「選ばれし者の力を見せてやる!」


強力な一撃がウォーテンを襲う。


硬質がぶつかり合う音と共に吹き飛ばされる。


「ウォーテン!」


ぶつかった樽が粉々になり、破片が散らばった。


「おい、やり過ぎだぞ!」


周囲の声にライゼルがはっとする。


「お、俺はただ…」


我に返ったライゼルは走り去った。


「ウォーテン!大丈夫?!」


仲間達が集まると笑顔で起き上がる。


「大丈夫。オーギュレイが守ってくれたよ」


「怪我は…してないみたいだね」


「よかった」


マーニャが落ち着きを取り戻す。


「それより、なんであんな勝負したのよ?勝てる気

 だったの?」


「いや、勝てないよ」


「なら、なん…」


ウォーテンが遮る。


「ライゼルは強い。そしてそれを証明する必要がある」


「そ、そんなのって」


埃を払いながら笑顔で言う。


「あんな強いのが仲間なんだ。安心だよ」


マーニャは呆れ顔だった。


「それにしても、その剣、本当は凄い剣なんじゃ?」


確かにあのライゼルの一撃を喰らっても刃こぼれはしていない。


「今度王都に行った時に調べてもらおうよ!」


「もしそれで凄い剣だったら転売しよ!」


マーニャの目がキラキラと輝いていた。


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