ごめんなさい
アヴニールがカムビに連れられて首都に来た時は全てが終わっていた。目の前には安らかに眠るシナミの姿があった。選ぶ未来を変えられたアヴニールは苦悩する。
『終わっちゃったねぇ、全部。』
カムビが耳元で舐めるように呟いた。わざと癪に触るように。
『君の選択ミスで私に会い、私によって未来が狂わされた。私は感謝しているよ、君のおかげでニンゲンを殲滅できるのだから。そして、我々の時代が始まる。我々がニンゲンとなる。』
アヴニールの目線に靄がかかる。頭に血が上りフラフラする。怒りと悲しみが混じり合い自分でも分からない感情が生まれる。
『さぁ、もう一仕事だ。後は残った「駒」の連中を殺すだけ…。』
その時、アヴニールの拳がカムビを掠めた。
『やるのかい?君が一番分かっているだろう、僕に勝てないのは。』
拳をゆらりとかわし、余裕そうな笑みをカムビは浮かべた。
無言で何発も拳を入れるアヴニール。それを毎回軽く触り、流すカムビ。アヴニールは当たらないと分かっていても隙が生まれるまで殴り続けた。
いくつか時間が経った頃、カムビに隙が出来た。
『いい加減しつこいぞ。』
苛立ってきているカムビに対して無言で殴り続ける。
その時、見事なほど顔面に1発入った。鼻血を出してよろけるカムビ。
『少しミスったか』
鼻血を拭き終わる前に今度はボディーブローが入った。その後も何度も殴り続けた。必死に殴り続けた。数えきれないほど殴り続けた。憎悪の感情を込めて。
『カハッ…何故…』
その間も無言で殴り続ける。そして顔面を鷲掴みにして地面に叩きつけた。
『貴様ァァ!』
カムビがアヴニールの腕を触った瞬間、肉が削げ落ち、骨だけの木偶の棒となった。
『余裕こきすぎてパワーも無くなったか、無様だな、変化神。』
もう片方の腕で頭を押さえ続けながら、骨となった腕でカムビの体を滅多刺しにする。
『何で、私の力が効かない。』
アヴニールの口に血がついているのをカムビは気づく。
『血か…。』
『くたばれ…、害悪が。』
アヴニールがトドメを刺そうとした時、カムビが不敵な笑みを浮かべる。
『貴様も道連れだ、未来神!』
アヴニールの体の左半分が消し飛んだ。
『アアあぁア逢ァァあ唖ァア荒飽アッッッ‼︎』
痛みに悶えながらも残った骨でカムビのこめかみを貫いた。
『これで…、終わっ……。』
アヴニールはその瞬間盛大に口から血を噴水の様に吐き出した。もう声もほとんど出ない、呼吸もままならない状態でシナミに近づく。
ぽろぽろと涙を流しながら必死に口を動かして何かを伝えようとする。
「……ご………め……………………ん……」
アヴニールはその場で血を流しながら倒れる。涙を地面に染み込ませながら、ゆっくりと息を引き取った。