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61 仕事と言う名の苦行

 あのクエストから、数日が経過していた。

 ギルドの依頼をこなしていきたいが、そう何度も外出できるわけもなく……。

 私は厳重な監視下のもと、玉座の間に閉じ込められている。

 理由は簡単。

 私がこれ以上、仕事をサボらないようにするための措置だ。

 確かに、私は何かにつけて仕事をサボってきたさ。

 時にはダンジョンへ潜り、時にはエレヌスさんの小屋を訪れ、時にはギルドの依頼をこなし……。

 私は、ありとあらゆる言い訳を用意して、仕事と言う苦行を回避してきた。

 ヒキニートの私にとって、仕事とはただの苦行でしかないのだ。

 それを、魔王城に住む連中は理解していない!

 まったくもって理解していない!


 ……分かったよ、私を苦しめようと言うのなら、私にだって考えがある。

 私に仕事をさせたいと言うのなら、私は私に舞い込む仕事を抹消してやる。



 玉座の間を埋め尽くす書類の山を前に、私は少しだけ冷静さを欠いていたようだ。

 仕事をしたくないけど、しないことには国が回らないのも事実。

 ……少し、書類の中身を確認してみようか。

 まずは確認して、どの様な報告が上がっているのかを把握しよう。

 そこから、削れそうなものをピックアップしていく。

 これだけの書類だ、いくつか穴があるだろう。



 予想通り、穴があった。

 と言うか、穴だらけだった。

 書類を確認した上で私に通してるのは、各組織のトップだ。

 まったく、トップがこれでは末端はもっと酷いのだろう。

 平和ボケしすぎだ。



「これはこれは、書類の山ではありませんか」



 ノックもせずに入ってくるなアルベルト。

 と言うか、何の用?

 見ての通り、私は忙しいのだよ。

 用件があるのなら、手短に済ませてくれないかな?



「お困りのご様子ですし、お手伝いが出来ればと」



 とか何とか言って、下心が見え見えだっての。



「確かに、夜のお手伝いも出来ればと考えてはいますが」

「サイテー」

「ただの冗談です。手伝いに来たのは事実なのですから」



 アルベルトが手を二回叩くと、アルベルトの部下と思われる者達が玉座の間に入ってきて、書類の確認作業を始めた。



「書類は私の部下に任せて、一緒にお茶などいかがでしょう?」



 手段が露骨すぎるんだよ。



「悪いけど、あんたとお茶をする気もなければ、勝手に書類仕事をさせるつもりもないよ」

「仕事熱心なのは良い事ですが、あまり無理をなされてはお体に障ります」

「生憎、私はこの程度で体調を崩すほど、ヤワじゃないんだよ」



 これだけ言ってもアルベルトは引くつもりがない。

 でも、こっちだって引く気はないよ。

 それに、仕事を大幅に減らす方法を思いついたんだ。 あんたの出る幕ではない。

 それから、これ以上粘るのならアナスタシアを呼ぶよ?



「分かりました。あまり無理をなさらないよう、お体に気をつけてください」



 アルベルトは部下を引き連れて、玉座の間から出て行った。

 アナスタシアの名前を出せば、大抵のことは解決する。

 それだけ、アナスタシアの信頼が厚く、権限も絶対だってことだ。

 そこにすがらなければ解決できないってのは、魔王としては複雑な気分だね。


 さて、余計なことに時間をとられちゃったし、目の前の問題に戻ろう。

 この穴だらけ、不備だらけの書類を片づけていたのでは、いつまで経っても仕事が終わらないし、こんな書類にサインなんかできやしない。

 かと言って、それぞれの組織を教育してやるつもりはない。

 これはに関しては、アナスタシアに言えば何とかなるだろう。

 それでも半分か……。


 穴のない書類は……モンスターの被害状況と討伐報告についてが8割以上を占めていた。

 つまり、これらの書類がなくなれば、私はかなり楽ができるようになる。

 さらにシャドウサーヴァントを完成させれば、ついに私は、働かずして惰眠を貪ることができる。


 シャドウサーヴァントは、自分の影を実体化させ、自分の影武者を作り出すロストミスティックだ。

 発動者の魔力が高ければ高いほど、より精巧な影武者が作り出せる。

 私の魔力で作り出せば、精巧な分身を作り出すことも可能だということだ。

 そして分身に仕事を押し付けてしまえば、私は働かなくて済むのだよ。


 さて、まずはアナスタシアを呼ばなければ。

 こんな穴だらけで不備だらけの書類に、サインなんかできないと伝えなければ。

 それが終わったら、まずは残りの書類を片づけないと。

 終わるまで部屋から出さないと言っていたし、今ある書類だけはどうにかしないと。

 その後は、私の元に仕事が来ないよう、裏で色々と手を打たなければならない。

 全ては、私の安眠確保のためだ。

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