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60 アダムとカーティス

 私はあの日誌を持って、冒険者ギルドへ戻ってきた。

 アダムに、全てを伝えるためだ。



「……何か見付けましたか?」



 私はマスターに日誌を渡した。

 マスターは日誌を読み進めていく。



「これは……カーティスの」

「マスター。アダムは今、どこで何をしてるの?」



 マスターは小さく溜め息をつくと、日誌を閉じた。



「マオさん。私を、この日誌があった場所へ案内してくれませんか?」





 森林地帯の洞窟へ、私はマスターを連れてきた。

 奥ではホーリーウッドが佇んでいる。



「イビルウッド……」

「違う。こいつはホーリーウッドに生まれ変わったんだ。もう悪さはしないよ」

「……そうですか」



 マスターはカーティスが眠っている場所まで行き、跪いた。

 そして、両手を合わせて祈りを捧げている。



「ひとつ、昔話をしましょう」



 マスターは跪いたまま、淡々と語り始めた。





 今から三十年以上も前の事。

 冒険者ギルドには、アダムとカーティスと言う、二人の腕利きの冒険者が居ました。

 二人は幼少からの親友であり、ライバルでもありました。

 互いに高め合い競い合い、成長した二人は冒険者としてそれなりの名声を得ていました。

 特にカーティスは、次期ギルドマスターとして期待されるほどの存在となっていたのです。

 そんな折、カーティスのもとに、ひとつの依頼が舞い込んできました。

 イビルウッドの討伐です。

 イビルウッドの討伐は、彼らにとっても難しい依頼でした。



「それで、カーティスは一人で、イビルウッドの討伐に向かったと」

「そうです。そして当然、アダムはカーティスを止めました。一人で行くなんて無謀すぎる、と」



 それが原因で、二人の間柄は険悪なものとなってしまいました。

 そしてカーティスはそのまま、イビルウッドの討伐へ向かってしまったのです。



「カーティスは戻ったけど、イビルウッドは討伐できなかった。それどころか、イビルウッドを倒すなってギルドに上申しちゃったわけか」

「……当時のギルドは実力主義でした。クエストの失敗ならまだしも、討伐対象を前に逃亡する事は、自らの信頼を失墜させる行為だったのです」

「……今では考えられないね」

「まったくです」



 そしてそれを知ったアダムは、カーティスと決別してしまいました。

 カーティスはギルドから脱退、しばらくはカーティスの事もイビルウッドの事も語らないよう、ギルドからの通達がありました。

 ギルドの汚点を抹消したかったのでしょう。


 それからしばらくして、アダムはカーティスの住んでいた部屋へ訪れました。

 彼は一言、謝りたかったのです。

 しかし、部屋は既にもぬけの殻。

 アダムはカーティスを探しましたが、ついに彼を見つける事が出来ませんでした。

 以後、アダムはずっと、後悔の中で生きていました。

 今日、この場所で全てを知るまでは。



「マスター。あんた、やっぱり……」

「そう、私がカーティスを……友を信用できなかった愚かな男、アダムです」



 アダムはホーリーウッドを見つめている。

 その表情は、悲しみと後悔の入り混じったものだった。



「この場所は、口外しない方が良いでしょう。マオさん、わざわざ連れてきていただき、ありがとうございました」



 私は、立ち去ろうとするマスターを引き止めた。



「マスター、ひとつだけ聞かせてほしい。私に、イビルウッド討伐を依頼したのは何故? ……私を、試すため?」

「そうではありません。貴女にギルドを諦めてほしかったのですよ、魔王様」



 やっぱり気づいてたか。

 悪いけど、諦めるつもりはない。



「私の正体を知っていながら無理難題をぶつけて、私の心を折ろうとした?」

「そのつもりでしたが、我らギルドは貴女のような人材を待っていた事も事実」

「だったらどうする?」

「どうするつもりもありません。改めて歓迎しますよ、冒険者マオさん」




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