55 冒険者ギルド
キルナス迷宮、カークの居た広間から、少しだけ戻った場所。
図書館から戻った私は、この場所で新たに覚えた魔法の練習を行っていた。
インフェルノとコキュートスは、広範囲殲滅魔法だ。
カークの居た広間なら練習できるけど、ここは狭いから練習することができない。
もし成功したとして、その威力にダンジョン崩壊でもしたら笑えないからね。
ここで練習するのは、リザレクションとシャドウサーヴァント、それから図書館で覚えた魔法と魔術を少々だ。
本腰を入れるのはシャドウサーヴァント、それ以外は時間をかけても良いだろう。
あれから3日が過ぎだ。
魔法と魔術は、すぐに使いこなせるようになった。
でも、リザレクションとシャドウサーヴァントは一筋縄ではいかないね。
……少し、気分転換でもしようかな?
私はアナスタシアに頼み込んで、城下町への外出許可を勝ち取った。
もちろん、魔王シリーズや貴族っぽい服は着れないから目立たない服を着て、さらには魔法衣で作ったフード付きローブも着ている。
これなら魔王だってバレないでしょ。
大通りをぶらぶらしていくと、冒険者と思われる集団とすれ違った。
その集団は、今回のクエストがどうだとか、あの洞窟のモンスターがどうだとか話していた。
そう言えば、この国にも冒険者ギルドがあるんだよね。
今後のことを考えて、少し覗いてみようかな?
私は集団の後を、こっそりとつけていった。
大通りから少し外れたところには大きな酒場があり、集団はその中へ入っていった。
ここかな?
実は、冒険者ギルドの存在は知っていても、その場所は知らなかったりする。
仮にここじゃなくても、酒場なんだから情報は仕入れられるでしょ。
私は集団の後に続いて酒場に入った。
酒場に入った瞬間、強いお酒の匂いが鼻孔をくすぐる。
酒場だから当たり前か。
転生前も転生後もお酒は好きだ。
そして、この雰囲気も大好きだ。
一杯やりたくなってしまう。
……今は我慢しておこう。
中の様子は、さすが酒場といったところだ。
食事をしている者が居れば、静かにお酒を呑んでる者も居る。
ある者はテーブルの上に立ち、大きな声で歌を歌い始め、それを冷ややかな目で眺める者も居る。
カウンター内では、マスターと思しき中年のおじさんが、歌っている者を見て困った顔をしている。
この雰囲気、大好きだ。
さて、さっきの集団は……居た。
マスターの奥にもう一人、耳の長い少女が居る。
その少女に、集団はモンスターの素材を渡していた。
あの少女はまさか。
「受付さん、依頼品を調達したぜ」
「スリープシープの羊毛に、フレイムゴートの巻き角、それからサンダーベアの爪……はい、確認しました。クエスト達成、おめでとうございます」
受付さんと呼ばれた少女は、モンスターの素材を引き取り、集団に硬貨の入った袋を渡した。
ここがギルドで間違いないようだが、あの少女の長い耳。
……間違いない、あの少女はRPGの定番、エルフだ。