54 ロストミスティック
魔王城に戻った私は、早速キルナス迷宮……ではなく、図書館を訪れていた。
確かに、キルナス迷宮をさっさと攻略してしまいたいところだ。
しかし、今の私のステータスでも、武器がなければキルナス迷宮後半の攻略は厳しい。
コルタは、武器が完成したら連絡をすると言っていたが、まだ連絡は来ていない。
急かすわけにもいかないし、私は他にもやらなきゃならないことがあるから、そちらから手を着けることにした。
急がば回れってね。
図書館を訪れた私は、ロロちゃんに頼んで、図書館にあるありったけの魔法書を持ってきてもらった。
しばらく読み進めていって、役に立ちそうな魔法はいくつかあった。
でも、私が求めているものはなかった。
「魔王様、何を探しているのですか?」
「ちょっとね」
ロロちゃんが声をかけてきたけど、これはあまり、人には話せないものなんだよね。
気は進まないけど仕方がない、書庫に行ってみよう。
一応、許可証は持ってきてるからね。
私はロロちゃんに魔法書を返却して、図書館奥の大扉に触れた。
この浮遊感は何とかならないものか。
書庫に着いた私は、辺りを見渡した。
無愛想のレレは居ないようだ。
うーん、他に誰か居ないかな?
「魔王様、ですね?」
背後から声をかけられた。
透き通るような綺麗な声に振り返ると、そこに居たのは巨乳美人だった。
女の私でも、その豊満さに目がいってしまう。
羨ましい乳しやがって……じゃなくて、この人も司書だろうか?
「お初にお目にかかります。私はララ。書庫の司書長を勤めさせて頂いております」
書庫長だったか。
まさかとは思うけど、ロロちゃんやレレのお姉さんかな?
「はい。妹達がお世話になっております」
深く一礼するララさん。
何だか、お姉さんよりもお母さんって感じがする人だね。
「魔王様が直々とは、何か特別な書物をお探しでしょうか?」
「司書長なら、話しても平気かな? ……実は」
私は探しているものの詳細を、ララさんに伝えた。
「それでしたら『ロストミスティックの探求』と言う書物に、似たような事が書かれていた筈です。お持ちしましょうか?」
「ロストミスティックね……お願いしようかな」
「かしこまりました、少々お待ちください」
礼儀正しく一礼すると、ララさんはフワフワと飛んでいった。
相変わらず、書庫は不思議な場所だ。
そう言えば、書庫には魔素の上昇気流があるんだっけ。
それに乗って浮くことができるなら、上手く魔力操作すれば書庫以外でも飛ぶことができるのでは?
二段ジャンプだって、擬似的なものではなくなるかもしれないし、色々と試してみる価値はありそうだ。
……とか考えてたら、ララさんが分厚い本を持って戻ってきた。
「お待たせいたしました、こちらになります」
私はララさんから本を受け取った。
ずっしりと重い。
開いてみると、そこには今は失われた技術や魔法の研究について書かれていた。
「ありがとう、読ませてもらうよ」
ララさんはニコッと笑うと、また深く一礼して書庫上空へ飛んでいった。
それを見送った私は、近くの床に座って分厚い本を開いた。
いやはや、これは凄いわ。
失われた工房の鍛造技術、禁忌とされた死者の蘇生魔法、魔素エネルギーの抽出と保管の方法。
ここに書かれている技術を持ち出せば、中世風のこの世界が、一気に近代化してしまうほどだ。
そんなことをするつもりもないし、再現するための材料も既に失われてるから、あまり意味はないけどね。
しばらく読み進めていくと、私が求めていた魔法が見つかった。
見つかったは良いけど、難易度が高すぎる。
でも、できないわけじゃない。
それに、この難易度に見合う効果は期待できそうだ。
〔生成魔法:リザレクションを記憶しました〕
〔生成魔法:シャドウサーヴァントを記憶しました〕
〔生成魔法:インフェルノを記憶しました〕
〔生成魔法:コキュートスを記憶しました〕
魔法の記憶は妖精さんがしてくれるから、便利なものだよ。
そう言えば、この世界の魔法は全て日本語(?)で表記されているはずだ。
でも、今覚えた魔法はカタカナ(?)で表記されていた。
ロストミスティックだからだろうか?
意味があるようでなさそうな、変な気分だ。
……まあ、このことを考えたって仕方がない。
目的の魔法を覚えることもできたし、あとは使えるようにキルナス迷宮で練習だ。
そう言えば、ララさんはレレの持っていたようなベルを渡さなかった。
読み終わったから本を戻したいんだけど、大声を出すわけにもいかないし。
「魔王様、お求めの魔法は覚えられましたか?」
ナイスなタイミングで、ララさんが戻ってきた。
「おかげさまでね」
「それは何よりです。もう、お戻りになられますか?」
「目的は果たせたからね」
「分かりました。そちらの本は、私が戻しておきますね」
司書長をさせておくには勿体ないほど、ララさんの働きは素晴らしいね。
さて、帰るには許可証の魔法陣に触れるんだったね。
私はララさんに礼を言って、許可証に描かれている魔法陣に触れた。




