53 権限
魔王のスキルは逃げることが出来なくなるが、それは戦闘に入った場合のみ。
戦闘に入っていなければ、互いに逃げることも可能なのだ。
戦闘に入ってしまっても、互いに戦う意思がなければ、それは戦闘に見なされない。
ようやく、魔王スキルの理屈が分かってきたよ。
グラントはローブの老人の姿に戻った。
そして小さく一礼すると、森の奥へと姿を消した。
戦闘狂のカークと違って、グラントはとても紳士だったね。
これでようやく、エレヌスさんに会うことができる。
グラントとの戦闘に時間をとられたし、さっさと話をしてしまおう。
小屋に入ると、エレヌスさんは部屋の奥で瞑想をしていた。
やっぱり予言者ともなると、瞑想している姿も様になっている。
「ぐー……ぐー……」
……つっこまないよ?
「何じゃノリの悪い」
私にツッコミを求めてはいけない。
それよりも、エレヌスさんに報告しておきたいことがある。
「報告とな?」
私はサーペントのことや、夢にセラメリアが出てきたこと、ついでにワーフォックスのユキメを懐柔したことを報告した。
「ワーフォックスか。確かに数こそ少ないが、彼奴らは魔法に特化しておる。懐柔したのは正解と言えよう。しかし、サーペントがそこまでの力をつけているとは」
サーペントのことは、この際どうでも良い。
それよりもセラメリアだ。
彼女が夢に出てきたことが、どうにも気になる。
「確認するが、セラメリアちゃんはサキちゃんの肉体に宿るはずだったと言っていたのじゃな?」
そうだ、私が宿る予定ではなかったと言っていた。
そう言えば、私が転生した時のことは話してなかったか。
もしかしたら関係があるかもしれないし、このことは話しておいた方が良いかもしれない。
「なるほどな。セラメリアちゃんが何をしようとしたのか説明する前に、サキちゃんにはこの世界の権限について、話をしておかなければな」
おっと、意外なところで意外な情報が手に入りそうだ。
「この世界がシステムによって動いておる事は、薄々感づいているのではないか?」
感づいてはいても、システムが何なのかなんて分かってないからね。
「では、システムについて少しだけ語ろう。全てを語る事は出来んからの。システムとは、この世界の全てであり、LVやステータス、スキルの概念そのものでもある。サキちゃんも幾度となく、メッセージを聞いておるはずじゃ」
LVUPのアナウンスとかしてくれてるね。
システムアナウンスなんだろうなとは思ってたけど、その通りだったんだ。
「サキちゃんは知っとると思うが、システムを動かすためにはプログラムが必要じゃ。そのプログラムの名はFAIRY。サキちゃんが聞いとる声は、このFAIRYの声なのじゃ」
あの声がFAIRY(妖精)の声だったとはね。
これからは妖精さんと呼ぼうか?
「そして、システムに干渉するためには、権限が必要じゃ。儂はシステムに干渉し、これから起こる事を予言しとる訳じゃの」
なるほど。
それはもうチートだけど、システム外の者は予言ができないってことね。
その後のエレヌスさんの話をまとめると、まずステータスはHP、MP、SPが999999がカンスト。 その他は99999がカンストだけど、権限LVを上げると限界突破するらしい。
さらに、この世界で閲覧できる書物の制限が解除されたり、スキルの獲得条件も解除されるようになるみたいだ。
それならサーペントの強さも納得いくと思ったが、どうやらあいつは別の方法で強くなったらしい。
その方法までは分からない。
それから、これが重要。
セラメリアは、この世界のシステムにハッキングする方法を知っているらしい。
システムにハッキングして、本来宿るはずだった私の肉体を検索。
そこからさらに、私自身へハッキングをしているようだ。
本来ならFAIRYプログラムのハードプロテクトに遮断されてるけど、それをかいくぐって私に干渉しようとしている。
私がセラメリアの夢を見たり、見に覚えのないスキルを会得していたのは、ハッキングによりセラメリアのデータが逆流したのが原因だったようだ。
面倒なことをしやがって。
「それから、サキちゃんがその見た目で転生した理由は……正直言って分からん。しかし、サーペントとアナスタシオスが関わっている事は確かじゃ。これは一度、禊ぎの泉周辺を調べた方が良さそうじゃな」
それはエレヌスさんに任せる。
私はダンジョン攻略をしなければならないし、他にもやらなきゃならないことが多いからね。
その後も細々とした話を聞いたあと、私は一刻も早くダンジョンを攻略するために魔王城へと戻った。




