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33 アナスタシアに修行

 技って考えるの難しいね。

 そもそも、何を以て技と呼ぶんだろう?

 ただの連撃でも、技名を付ければそれっぽくなっちゃうし。



 と言うわけで、私は一度ダンジョンから脱出して図書館に来ている。

 技に関する書物なら訓練所だろうけど、そっちに行ったら図書館に保管してあると言われた。

 どうやら、書物関連は全て図書館に集められているらしい。


 と言うわけで、ロロちゃんに事情を説明して、技巧の書と言う書物を貸し出してもらった。

 この技巧の書には、魔王城の騎士達が編み出した数々の技が記されていた。

 誰がいつ編み出したのかも書いてあるけど、そこにアナスタシオスの名も記されているのは驚いた。

 それが、ひとつやふたつではないからさらに驚いてる。

 ……だから、アナスタシアは決別なんて言ったのか。


 アナスタシオスの技は、一言で言えば理想型だ。

 使いこなすことができれば、これほど強い技は他にないと言えるほど。

 だからこそ、習得難易度は極めて高い。

 アナスタシアは双子だから、お兄さんの技を身近に見てきた。

 自然と覚えていったんだろう。

 そして、同じ技を持つ二人が対峙した。

 同じ技を持っているということは、互いの手の内が分かっているということ。

 この技が出れば、この場所を攻撃されると、互いに分かってしまう。


 アナスタシアは、お兄さんを止めたいと言っていた。

 お兄さんが説得に応じない限り、戦いは避けられない。

 そうなったら、技を見て覚えたアナスタシアより、技を編み出したアナスタシオスの方が有利と言える。

 そうでなくとも、ステータスやスキル的に、アナスタシアは完全に不利だ。

 だから、アナスタシオスの技を上回るような、アナスタシア独自の技を作るしかないってことか。


 しかし、もう一度言うが、アナスタシオスの技は理想型だ。

 これ以上の技を編み出すのは容易なことではないし、そもそもそんな技を作れるのかさえ疑問だ。

 アナスタシアのことは期待してる。

 でも、それ以上に、アナスタシオスが完璧すぎる。

 ……これは、アナスタシアと話した方が良いかもしれないね。



 中庭では、アナスタシアが修行の最中だった。

 とりあえず一段落するまで、アナスタシアの技を観察しようと思う。


 しばらく観察して思ったけど、アナスタシアの使う技には、無駄な動きがない。

 攻撃技にしても防御技にしても、非の打ち所がないほどだ。

 これは、元の技を上回るのは無理じゃないかな?

 でも、これ以外の技を編み出さないことには。

 ……と、全ての分身体を倒したみたいだ。

 私はアナスタシアに話し掛けた。


 もちろん、コミュ障のスキルは健在だ。

 だから、風音魔法で私の声量を大きくして、私自身は独り言として呟く。

 これなら、それなりに会話もできるはずだ。



「魔王様、いらしていたのですか」

「ちょっと、アナスタシアと話をしたくてね」



 うん、分かっていたことだけど、私が普通に話していることに驚いてるね。

 こんな状態だとまともに話せないから、軽くネタバラシをしておかないと。


 私とアナスタシアは、中庭にあるベンチに腰掛けている。

 小鳥のさえずりに、頬をなでるそよ風。

 なんて平和なんだろう。

 ……そんな場合じゃないよね。

 とりあえず、技について話さないと。



「魔王様、お話とは何でしょう?」



 私は、アナスタシアに技巧の書を渡した。



「お兄さんの技、見させてもらったよ。まったく、非の打ち所がないね」

「はい。お兄様……アナスタシオスは、剣の天才でしたから」



 やっぱり。

 だからこそ、アナスタシアにお兄さんの技を超えることは。



「アナスタシア。私と、手合わせしてくれない?」

「え?」

「大丈夫、こっちは手加減するから」

「しかし、魔王様にお怪我をさせてしまっては」

「心配しなくても、アナスタシアのステータスでは私に傷も付かないよ」



 しばらく悩んだアナスタシアだったが、渋々といった様子で、私の相手をしてくれることになった。



「念のために模擬刀を使用しますが、本当に宜しいのですか?」

「良いよ、全力で向かってきなさい」



 アナスタシアは躊躇いながらも、私に向かって走ってきた。

 私の右側に回り込むように。

 そこで私は、左側への攻撃を警戒する。

 案の定、アナスタシアは私の間合い一歩手前で上体を低く落とし、逆側へ。

 うん、私が左側への攻撃を警戒してるのは分かっていたはずだ。

 それなのに、アナスタシアはそのまま攻撃してきた。

 狙われてる場所が分かれば、どれだけ早く重い攻撃だって対処することはできる。


 その後も、アナスタシアの攻撃を全て凌いでみせた。

 どうも、アナスタシアは素直すぎるようだ。

 だからこそ、私はアナスタシアに教えたい。

 時には、ひねくれることも必要だって。


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