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31 カグラとソウリュウ

 かれこれ一時間近く、カグラはカンナさんを見破ろうとしていたようだ。

 しかし、ヒントもない状態ではどうすれば良いのか。

 結局何も掴めなかったカグラは、しばしの休憩中だ。

 縁側に座って、溜め息をついている。

 私の方も、またしても宝箱にモグモグされて死んでしまったし、一度魔王城に戻ることにしよう。



 休憩を終え、再びキルナス迷宮を攻略中、そこそこ広い部屋を発見。

 中にはモンスターが一匹居るだけで、他は何もなかった。

 ここのような部屋を簡単に見つけられれば、みんなの様子もすぐに見れるのに。

 と、ダンジョンに愚痴っても仕方がないよね。

 カグラのその後はどうなっているかな?



 あれからそこそこ経つけど、カグラは未だに縁側に座っていた。

 できる限りのことはやった。 やり尽くした。

 そんな風に考えているのかもしれない。

 でも、カグラはまだ見落としてることがある。

 私の考えている方法なら、もしかしたらカンナさんを見破れるかもしれない。

 教えてあげたいところだけど、これはカグラが自分で見つけなければならない方法だ。

 私だって、この方法を閃いたのは偶然だったしね。


 カグラは小さな溜め息をついた。

 これで何回目の溜め息だろうか?

 さすがに可哀想に思えてくるけど、ここは我慢だ。


 カグラの居る縁側に、誰かがやってきた。

 この人は確か、カグラのお父様のソウリュウさんだ。

 ソウリュウさんは何も言わず、カグラの隣に座った。

 ソウリュウさんは親馬鹿だし、カグラのことが心配になったんだろうね。


 しばらく無言の二人。

 何だか、イマドキの父と娘を見ている気分だ。



「お父様」



 先に沈黙を破ったのはカグラだった。



「私は、お母様の意図が理解出来ません。お母様は私に、何をさせたいのでしょうか?」



 それを聞いたソウリュウさんは、カグラの頭にポンと手を乗せた。



「カンナは、カグラちゃんに期待しているのだ。だから、こんな問題を出しているのだよ」

「しかし私は、その期待に応えられません。手掛かりも無く、どうしたら良いのかも分からないのです」

「そうか」



 ヒント無しは可哀想だとは思うけど、ヒントを言ったら答えに直結しそうなんだよね。

 カグラは転移者、そしてカンナさんは、そのことを知っている。

 だからなのかもしれない。

 この世界に暮らしてる人には、この問題は何年経っても解けないだろうからね。



「カグラちゃん。鑑定とは、どの様な原理か分かるか?」

「……いいえ」

「鑑定とは、深い知識により対象を理解するスキルだ。しかしそれは、見えている部分に限られる。表面上の情報だけで、その根幹を知る事は出来ぬのだ」



 その通りだ。

 たとえば、私の隣にある壁。

 一見するとただの壁だし、鑑定結果もキルナス迷宮の壁だ。

 しかし、これに少し手を加えると。



〔擬態虫。壁や床、天井に擬態する虫。獲物が通り掛かるのをひたすら待つ習性を持つ〕



 ね?

 そこに潜むものを鑑定することができる。

 そして、この方法の有用性は、魔素と魔力を視認できるようになること。

 自分だけでなく、他人やこの世界に流れる魔素も視認できる。

 これはカグラのような、魔法サポーターにとって極めて重要なことだと言える。

 カンナさんは、この方法を教えたいんだと思う。

 感覚的にしか分からなかった魔力が見えるようになるのは、魔法の精密性の向上に繋がるからだ。



「カグラちゃん、目に見えているものが全てではない。見えないものを見るにはどうするか、知らないものを知るにはどうするか。まずはそこから始めてみなさい」



 ソウリュウさんはそれを伝えると、座敷の方へ戻っていった。

 いやはや、素晴らしいヒントだわ。

 あとはカグラ次第だけど、カグラは頭が良いし、ゲーマーのスキルがあるからゲームのことも詳しいみたいだし、きっと何とかなるでしょ。

 こっちは大丈夫みたいだし、私はダンジョン攻略の続きといきますか。

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