その1 転校生は魔法少女なのか魔女なのか?
「今日からお世話になる、ミント・ハリケーンです。北欧の辺りから来ました。実は、魔法の国からやってきた魔法少女です。ふつつかものですが、よろしくお願いします」
北欧の辺りからやって来たとかいう留学生の少女は、流暢な日本語で挨拶をすると、軽くお辞儀をした。銀色の、毛先がくるくるしたポニーテール。菫色の瞳。なんだか、ひんやりした感じの、きれいな子だ。
透き通った、冷たい水底のイメージ。
言動には、いろいろと気になることはあるけれど、とりあえず礼儀として、わたしも挨拶を返す。
「相羽のりこです。こちらこそ、よろしく・・・」
えーと。それでだ。今の微妙な内容の挨拶は、単に日本語に不慣れなだけなのか、それとも、偏った日本文化に脳髄を侵された結果なのか。
今ここで、はっきりさせておくべきか。とりあえず、流してしばらく様子を見るべきか?
迷っていたら、さらなる衝撃発言がきた。
「んー。小中学生なら、なんか、もっといい反応してくれそうだけど、さすが高校生ともなると、そうはいかないかー。夢見るころを過ぎて、地に足がついてきてるんだね。なにか、さみしい。まあ、それはそれとして。こうなったら、のりこには本当のことを話そう。本当は、私は、魔法少女じゃなくて、魔女なんだ」
はい・・・・・?
真顔で何を言っているのかな、この子は?
ていうか、魔法少女と魔女は、何が違うの?・・・年齢?
「ここには、魔女の仕事できたんだけど、とある事情で魔法少女として活動していく予定なので、のりこも協力してね。さて。とりあえず、見せたほうが早いよね。じゃ、変身するから、衣装の感想とかよろしく!」
そう言って、ミントは仁王立ちになり、そして、眩い光に包まれた。
「わ!」
反射的に目を閉じ、両腕を目の前でクロスさせる。
「もう、大丈夫だよー」
さほど立たないうちに、ミントから声をかけられ、恐る恐る目を開けると。
「イ、イリュージョン!?」
手品? 本当に魔法?
さっきまで、ブラウスとスカートという、普通に普通すぎる普段着だったのに、うん、なんていうか、魔法少女だ。テイストが。
白と青を基調としたシンプルなデザインは、一見クール系美少女のミントによく似合っている。肩はむき出しで、ミニスカートだが、ひじ下までの手袋とひざ上まであるブーツのせいで、全体的な露出は少なく、あまりエロさはない。胸も標準サイズだ。
手袋とブーツの折り返しの部分には、ペンギンの飾りがついていて、ちょっと可愛い。
ペンギンが好きなんだろうか?いわゆる魔法のステッィクにも、こぶし大のペンギンの飾りがついている。
「どう? どう? 似合ってる? 魔法少女っぽい?」
目をキラキラさせて感想を求めてくるミントに、思った通りの感想を伝える。
「似合ってるし、魔法少女っぽい。だがしかしだ!」
魔女かどうかということも、とりあえず置いといてだ。女子として、言いたいことがある。
「仁王立ちはやめろ」
とりあえず、詳しい話はお茶でもしながらということになった。わたしとしては、あまり聞きたくないというか、いっそ、ここまでのすべてをなかったことにしたいくらいなんだけど、当の本人はなぜか話す気満々だ。なぜ、そんなにわくわくしているのか?
まあ、それは置いておいて。
お茶の準備の間に、そろそろ簡単に自己紹介でもしておこうかと思う。
えーと。相羽のりこ。16歳。この4月で、私立万葉女子高等学校の2年生に無事進級。寮生。明日が始業式。以上。・・・さすがに、ちょっと、簡単すぎたか? まあ、いいや。
でも、万葉女子高については、もう少し補足説明をしとこうか。
えー、ここ万葉女子高は、かつては、全寮制の超お嬢様学校で、全国のお嬢様が集まっていたらしい。でも、経営上の問題だとかで、今は全寮制を廃止して、生徒の半分くらいは地元の庶民の娘たち・・・だったような。寮自体は、今も残っていて、遠方から来たお嬢様たちなんかが現在も生息中。まあ、数は半分以下? になったみたいだけど。ちなみに、わたしは、地元民で庶民なんだけど、母親の強い希望で寮生やってます。憧れの学校だったらしい。今は、全寮制じゃないんだし、寮にまで入らなくてもいいんじゃないかとは思うんだけど、『寮生限定のイベントがあるし、このために、若い時から貯金をためてきたの!』と熱く語られて、断れませんでした。断っていたら、きっと、なにか恐ろしい目にあわされていたと思う。
おこづかいUPと引き換えに、写真とレポートの提出を義務付けられていたりする。
寮は基本2人部屋で、ペアは毎年更新。
今年の更新で、留学生との相部屋を頼まれて、ちょっとドキドキしてたんだけど。うん。まさかこんなのが来るとは・・・・。
さて、お茶の準備も整い(まあ、家から持ってきたクッキーと、自販機のお茶だけど)、いよいよ、真相? が語られることになった。
「学校とか会社とか、人が大勢集まるところって、思念が淀みやすせいなのか異次元と繋がりやすいんだよね。それで、異次元と繋がると、空間に穴が開いてね、そこからなんか変な生き物? とか、瘴気?・・・・えっと、人間の精神を狂わせる毒ガスみたいなのが出てくるんだよ」
「はあ」
「それを、魔女たちが持ち回りで、穴ふさいだり、変な生き物やっつけたり、みんなのために戦ってるんだよ。あ、ちなみに、各国の政府承認済みで、穴をふさぐ代わりに、下界での活動支援やお金もらったりしてるらしい。難しいことはよく知らないんだけど」
「ふ、ふーん?」
なんかいきなり政府とか出てきたんだけど。そして、魔法少女どこいった?
「というのが、まず、前提にあってね。本題はここからです」
ここで、きりっと真顔になるミント。つられて私も背筋を正す。
「大魔女様っていう、魔女たちの中で一番エライ魔女がいてねー。その大魔女様が日本の魔法少女アニメにはまっちゃって。何に目覚めたのか、手下の魔女にアニメ作らせ始めてねー・・・。ネタが欲しいから、穴をふさぐついでに魔法少女活動をして、何でもいいからネタを仕入れて来いって言いだしてさ。ついに、私の番が来たんだよ」
大魔女様とやらのオタ趣味のためかよ。
「めんどくさい様な気もするけど、ちょっとおもしろそうだし、おこづかいもらえるし。まあ、やってもいいかなって。ふっふふー。日本で、ペンギングッズ買い集めるんだー」
私利私欲かよ。っていうか、おこづかいって・・・。せめて、バイト代くらい言ってほしい。
「ちなみに、今回で7作目になります!焼き増ししたDVDは、政府に高値で売れるらしいよ」
何してんだよ、政府!
「魔法少女の正体は、みんなには秘密っていう設定なのでよろしく」
みんなに私は含まれてないの?てゆうか、設定って。
「わたしのおこづかいアップのために、これから協力してね、のりこ」
おまえのためかよ!
えーと? つまり?
ミント・ハリケーンは、なんか魔法とかが使える魔女(自称)で、これからこの学校で、いわゆる日本のアニメ文化的な意味での『魔法少女』活動をする予定だと。
いや、意味わかんないし。
本当に魔女なのか、ただの手品好きの自称魔女なのか。
うん、追及はしない。
てゆーか、全力で関わり合いになりたくないし!




