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第7話:天への階梯と番人の問い

天を突く光の柱は、数秒後、その眩い輝きを収束させ、穏やかな月光のような、静かな光へと変わった。大地を揺らしていた振動は止み、後には盆地を支配する絶対的な静寂だけが残された。


光の柱は消えていない。それどころか、俺たちの目の前で、信じられない変化を遂げていた。光の粒子が寄り集まり、密度を増し、まるで実体を持ったかのように凝縮していく。やがてそれは、祭壇から空に浮かぶ『太陽の船』の船底まで続く、一本の長大な螺旋階段へと変貌したのだ。


「…道が、できた…?」


セリアが、目の前の光景を信じられないといった様子で呟く。

あの、あらゆる物理的・魔法的干渉を拒絶していた『不可侵障壁』に、唯一繋がる道。それは、俺たちが『月の欠片』の謎を解いたことに対する、船からの返答であり、招待状のようだった。


「行くしかない、みたいだな」


俺の言葉に、セリアは覚悟を決めた顔で頷いた。だが、天への階段を昇り始める前に、俺は一つだけ、済ませておかなければならないことがあった。


「本日もスキルガチャの時間でーす!」


この神々しい光景の中で響く脳内の電子音は、最高に場違いだった。俺は、もはや無心でレバーを回す。


【一度だけ、触れたロープの『健康状態』を完璧に理解することができる】


「……ロープの、健康状態」


頑丈か、切れそうか、そういうことだろうか。これから古代文明の遺産に乗り込もうという時に、ロープのコンディションを知ってどうするというのか。俺は静かにスキルリストを閉じた。


俺とセリアは、光でできた階段に、慎重に足を乗せた。足元は、すりガラスのような不思議な感触だが、確かな実体があり、滑ることもない。俺たちは、一歩一歩、空へと続く螺旋の道を踏みしめていった。


どれくらい昇っただろうか。眼下の盆地は豆粒のように小さくなり、俺たちはついに、『太陽の船』の巨大な船底の真下へとたどり着いた。船の表面に刻まれた古代の紋様が、一つ一つはっきりと見て取れる。その圧倒的なスケールに、ただただ畏怖の念を抱かずにいられない。


階段の終着点、船の入り口と思われる円形のハッチの前で、俺たちの道は、一体の奇妙な存在によって塞がれていた。


それは、光そのもので編まれたかのような、巨大な人型の何かだった。決まった形はなく、常に輪郭が揺らめいている。顔も、目も、口もない。だが、その存在の中心から、直接、俺たちの脳内に、厳かな声が響き渡った。


『―――試練を越えし者よ。我が主の座へ至る資格、汝らにあるか』


番人。この船を守る、古代の防衛システムか何からしい。セリアが剣の柄に手をかけるが、番人は全く動じる様子を見せない。


『力は無意味。示すべきは、調和への理解』


番人がそう告げると、俺たちの目の前の空間がぐにゃりと歪んだ。目の前に広がるのは、船の内部へと続く、広大な空間。だが、そこに床はない。代わりに、大小様々な浮遊する足場が点在し、それらが、光でできた何本もの細いロープのようなもので、互いに結ばれていた。


『渡れ。かの岸辺まで。されど、道は一つのみ。偽りの道は、汝らを奈落へと誘わん』


見ると、足場を結ぶ光のロープの中には、明らかに不安定そうに明滅しているものや、色がくすんでいるものがあった。セリアほどの身体能力があれば、いくつか飛び移ることはできるかもしれない。だが、全てのロープが安全とは到底思えなかった。


力ずくでは進めない、一歩間違えれば奈落の底。まさに、番人の言う通りの試練だった。


絶望的な光景を前に、セリアが息を呑む。だが、俺は、その光景を…無数に張り巡わされた『光のロープ』を、全く別の目で見ていた。


脳裏に蘇るのは、今日手に入れたばかりの、あのハズレスキル。


【ロープの『健康状態』を、完璧に理解できる】


俺は、ゴクリと喉を鳴らし、目の前に広がる光の罠を見据えた。

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