第3章 侵食の始まり~名家の外堀を埋める時(10)~
その夜、智博は今日の翔太の家での出来事を父に打ち明けた。
「そうか。少しは、冷静になってくれたか。」
「うん。やっぱ、自分1人の力じゃ、どうにもならないし、幸い、咲希ちゃんの友達も復学を強く願ってたみたいだから。」
すると、父の口から、思いもよらない言葉が飛び出たのだった。
「今回、父さんも(お前の野望の実現に)参加させてもらうことにするから。」
「えっ?マジで言ってんの?」
驚く智博を傍目に、父は続けた。
「実は、取引先の1つに岳南製菓専門学校があって、そこの校長さんや教頭さんとも付き合いがあるから、父さんからもお願いしてみる。」
何と、智博の家業は「教材用でも、職員の休憩用でも良質のお茶を提供してくれる」との理由で、咲希の通う学校とも深い縁があり、そこの校長や教頭とも、お互いに酒を酌み交わす程の親交があると言うのだ。
「知らなかった。そんなこと・・・。」
つい最近まで、半ば途方に暮れていた智博に取って、こんな追い風になるような条件を差し出されたことは、正に、渡りに船と言わんばかりの思いだった。
「ただ、くれぐれも言っとくが、短気を起こして勝手な真似だけはするんじゃないぞ!!」
「うん、分かった。」
「じゃあ、これで決まりだな!!」
こうして智博は、サプライズの形ではあれども、尊敬する父を味方に付けることとなった。
「やっぱ、父さんの言う通りにしておいて、良かった。」
「うむ。流石は、俺の息子だな!!」
こうして2人の間に笑い声が響くと共に、いよいよ智博の秋川家潰滅プロジェクトは、本格的に幕を開けるのであった・・・。




