第3章 侵食の始まり~名家の外堀を埋める時(9)~
「じゃあさ、ビデオレターを作るなんてのは、どうかな?」
唐突な妙案の提示に、驚きの様子が垣間見えたが、翔太はさらに続けた。
「確かに、寄せ書きにもみんなの思いが、それぞれの字に込められてはいるけど、実際に友達や先生からの生の声で思いを伝えれば、更に咲希の心に響くんじゃないかと思うんだけど。」
すると、親友の1人がこう叫んだ。
「じゃあ、私たちが作ったのは、無意味だって言うことなんですか!!」
しかし、翔太は冷静に話を続けた。
「違うよ。この寄せ書きと一緒にビテオレターを渡したらどうか、と言うことを言いたいんだ。」
「すいません。そういうことだったんですか・・・。」
一瞬、押し問答か水掛け論に発展しそうな空気こそ流れたものの、どうやら一応の納得に漕ぎつけることにはなったようだ。
「でも、1人1人に協力を得てもらうのって、大変じゃないのか?それに、誰がビデオを撮りゃいいかって話にもなって来るし・・・。」
ふと、智博はそう不安を洩らしたところで、話は難航するかのように見えた。しかし・・・、
「大丈夫です!!今のうちだったら、クラスメイトの協力が得られそうだし、何とかみんなで手分けして、先生にも参加してもらうよう頑張ってみます!!」
「ビデオの扱いに詳しい先生も居るし、咲希が帰って来る為にも全力で頑張ります!!」
「あと、出来るようだったら、高校時代の友達にも手を貸してくれるよう頼んでみます!!」
と3人は改めて、咲希への思いと復学へのアシストを口にしたのだった。
そして、最後に智博は「何かあったら、連絡するように」と伝えた上で、3人に名刺を渡し、寄せ書きも一旦は翔太が預かる形で、この場を終えたのであった。




