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68 壁上の騎士が見たもの

とある騎士の視点です。


メインストーリーが騎士と兵士の区別もつかない素人魔王様の主観なので補完のために。


読まなくても困りません。

獣人討伐の任から戻った俺たちを待っていたのは魔王が現れたという凶報だった。


半年に渡る聖戦を終え、10万の兵が帰ってきたのだ。本来なら凱旋で称えられ、豪勢な食事が振る舞われ、女を買って楽しむところだ。


それがどうだ、魔王のせいでろくに休みも与えられずすぐに街の警備に就かされた。そんなものは街に残っていた者がやればいいのだ。


俺は明日の警備に備えて酒も程々に久々のベッドで眠った。




事態が動いたのは2日後、南門の城壁での見張りに当たっていた時だった。


早朝からけたたましい警鐘が町中に響く。


第4警戒警鐘。それを聞くのは人生で2度目だ。


初めて聞いたのは5年前のⅠ白昼の悪夢(デイライト・ナイトメア)の時だった。


あの時は俺は騎士ではなく、守られるが側だった。

不甲斐ない兵たちに不満を漏らす事ばかりして、いつからか自分ならもっと上手くやれるなどと思いだして、気づけば騎士の道を歩んでいた。


次は俺が敵に立ち向かい皆を守る番だが、今ならわかる。あの頃の騎士団はよくやってくれていたんだと。


あの災害で多くの兵が亡くなった。

兵だけじゃない。老若男女問わず罪のない多くの民草の命が失われ、プロンタルト王国も大きな打撃を受けた。


5年経った今、街も復興し、ようやく皆が前を向けるようになったんだ。季節外れの魔王なんぞに街を奪われる訳にはいかない。



『敵襲!敵襲!南に魔物の大群!数2000!黒獣だ!』


黒獣と聞いて身が引き締まる。目を凝らせば遠くに、森を抜けて南門に向かってくる黒い集団が見れた。


黒獣、魔王が生み出すとされる全身黒色の魔物。その中で目だけが赤く光り、倒すと跡形もなく霧散するという。

実在の魔物の姿を象っているが、オリジナルよりもあらゆる面で能力が高いと聞いている。


「しかし…」


こちらとて今は万全である。

王都駐在の兵5万に合わせ、俺達遠征帰還組が10万。計15万の兵がいる。


多少強くなっていたとしてもたかだか2000程度の魔物に遅れをとることなど決してない。


第1隊が門を抜け、外壁に沿って陣を組む。絶対障壁・アリア様の加護も作動した。こちらは準備万端だ。


魔術師団による牽制攻撃を合図に第1陣が前進、王都防衛戦が始まった。




第9騎士団隊と第4魔術師団による1陣は危なげなく魔物の群れを殲滅している。


しかし妙だ。


魔物はどこからともなく森の中から続々と現れる。

その総数は決められたかのように約2000。増えるでもなく、減るでもなく、倒したら倒しただけ、倒された魔物が現れる。


たかだか2000体の魔物といえど、もしそれが永遠に沸き続けるとなると大きな脅威だ。


ただの防衛戦なら城壁から離れる必要は無いのだが、この不気味な事態を打開すべく1陣は前進を選択した。

なんせ相手は魔王だ。何が起こるか分からない。本当に無限に黒獣が沸き続ける可能性だって否定できない。


魔物そのものに手こずっている訳ではないため、第1陣は順調に前線をあげる。

魔物を倒すスピードと、新たな魔物が現れるサイクルが早まっているように見え、徐々に何らかの確信に近づいているのを感じた。



もう少しで何かの核心に辿り着くのでは―――その時であった。



第1陣と本隊の間に黒獣が沸いた。


地面から浮き上がった大量の影により第1陣は完全に挟撃される形となった。


本隊の魔術師団が一斉に魔法の準備に入るが第1陣は進撃が順調だった故に距離が離れすぎていた。

新たに現れた魔物の群れは迷わず第1陣側へと流れる。

何名かの兵は魔法や騎馬で黒獣の波を掻き分けてこちらへと逃げ仰せたようだが、ほとんどの者が為す術なく魔物の餌食となり、そのまま影の中へと沈んでいった。





―――現在、隊は再び森側への進軍を試みる。


前線の人数を増やしつつ、挟撃に備えて中継にも隊を置く。見えない敵に対して大規模な陣形を展開し、全勢力の2/3を投入している。


途中から西側からも魔物が流れてくるようになったが、中継として置いていた兵が対処にあたることができ、結果としていい方に転んだ。

城壁の守りは薄くなるが、アリア様の加護があるため、街の守りは心配することはない。それ故に多くの兵を街外へと送り出せる。これこそが王都プロンタルト防衛における大きな強みだ。


1度は部隊を壊滅させられたが、今は順調に進んでいるし、不意打ちへの油断もない。一帯には勝戦ムードが流れている。このまま魔王を追い詰めて、2日前に出来なかった凱旋を今度こそやるんだ。


頭の中に、この戦いに勝利した後のイメージが浮かび始めたその時、先頭から信号弾が打ち上げられた。


目を凝らすと、前線にこれまで見なかった形の黒獣が現れている。


「なんだあれ、なんの魔物だ?」


黒獣は全身真っ黒なので見分けをつけづらい。新たな黒獣の姿はとても見慣れている気がするのだが、ピンとこない。


とてもゴツゴツしているが手足に頭のある人型のようだ。手には剣と盾を持っている。


その後を追うようにさらに新たな魔物が姿を見せた。次の魔物はゆったりとした布をなびかせている。


その2種の黒獣の並びを見て、気づいてしまった。


「まさか………嘘だろ…………」


剣と盾を武器にし、大層な鎧を纏った者と、ローブを羽織ったもの。それらは紛れもなく、俺たちプロンタルト騎士師と同じ姿だ。騎士、魔術師の黒獣は他の黒獣と並び、こちらに襲いかかってくる。


続けて西側からの魔物に対処していた部隊からも非常事態を報せる信号弾があがる。

そちら側には新たな大型魔物の群れが迫っていた。


一気に前線が崩れる。

黒獣にやられた部隊は影に飲み込まれ、姿を消していく。襲い来る魔物の数は数倍に増えている。



ふと、先程奇襲の魔物が沸いた辺りの地面一帯が黒く染っていることに気づく。まさか―――


「気をつけろ!奇襲がくるぞ!」


俺が叫んだ直後、地面から湧き出るように影が浮かぶ。

それらが象ったのはプロンタルト国の装備を身につけた騎士、魔術師だった。


「まさか、倒れた者たちを黒獣にしているというのか」


奇襲は2度目とあって全員身構えることは出来た。

しかし、その姿が同胞であることに狼狽え、またそうでなくても純粋にオリジナルより強いようで、皆が翻弄される。

西、南、そして中央の3点から攻められ、陣形はめちゃくちゃだ。


『後退だ!城壁を背にして戦え!魔術師団は援護しろ!戦えない者は街の中に避難だ!』


部隊長の号令がかかるが皆思うように動けない。


「ぼさっとするな!大砲と弓の用意だ!急げ!」

「は、はいっ!」


命令を受けてすぐに援護の用意にかかる。まだ射程外ではあるがすぐに全隊が引いてくるはずだ。

最悪の場合は街の中に逃げ込めばいい。街に入りさえすれば魔物が絶対障壁を超えてくることはない。

全隊が門を抜けるまでの間は城壁上部に構える俺達がサポートしなければ。


意気込んで戦場に目をやる。その目の前をスッと何かが過ぎ去ったように思えた。


疲れが目に来たのかとも思ったが、他の者も何か起きたのかと周囲と顔を見合わせたり、上を見上げたりしている。


魔術師の1人が青ざめた顔をして口を開いた。


「加護が………絶対障壁が……………消えた?」


その呟きは決して大きな声ではなかったが、その言葉に全員が魔術師に首を向けて固まった。


『陣を立て直せぇ!引くことは許さん。城壁より先には何人たりとも通すなぁ!』


外の隊もその事に気づいているようだ。

なぜ加護が消えてしまったのかは分からないが、これで街の中に引くという選択肢が潰えてしまった。

だが、状況は絶望ばかりではない


『うおおおおおおおおおお!!!!!』


「来た!援軍だ!」


こちらへ向かって掛けてくる騎馬隊の姿が見えた。

騎馬隊は門を駆け抜けてそのまま戦線に加わる。

続いて歩兵も戦場に増員されて形勢は五分以上になった。


再びこちらが前線を押し返している。


このまま押し切って森の奥にいる魔王を倒す。

城を守る隊以外のほぼ全ての戦力が結集している、総力戦だ。

絶対障壁が無くなった今、俺の立っている城壁が最終防衛ラインと言ってもいい。

ここを守りきれるかどうかがすなわち、魔王に勝つか負けるかという事だ。


ここは絶対に死守する。

その覚悟を確かめるように自分達が背中に背負っている街を一瞥する。

その目を飛び込んできたのは瓦礫をまきあげながら天に向かって吠える巨大で真っ黒なサンドワームの姿だった。


なぜ、街の中に黒獣が?


城壁の上からその光景を見た俺達は固まってしまった。


「て………敵襲!西区に大型ワームの黒獣が出現!」


なぜ、どうして、いつの間に…

認めたくない現実に疑問の言葉ばかりが頭をよぎる。


だって……どうするんだ…………。兵はほぼ全て街の外、街の中には守りなんてないぞ。

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