逆転劇
随分間が開きました。
後半戦・・・続きです。
別タイトルで行こうかとも思ったのですが、あらすじが面倒なので(^^;
それ以外にも、本当に続きだし、転校前の朋花の話の要約が面倒で・・・
で、続きを2章としてUPする事にしました。
今日から本編9話と、おまけの聡太くんサイドの話を1話か・・・
長くなり過ぎたら2話に分けてUPです。
本編は上がってるので、明日以降はいつも通り午前10時にお届けします。
おまけは、今書きかけです。
ではどうぞ。
「・・・あのさ、朋花、まだ返事は保留のまんまだよな?」
「あーそういえばそうだね。」
学校からの帰り道、不意に航がそんな話を持ち出してきた。
今の状態が居心地がよくて、ついそのままになっていた。質問攻めの間で急に告白されてから一ヶ月くらい過ぎたと思う。航も返事を急かすような事をこれまで一度も言ってこなかった。
「言い難いんだけど・・・」
「何?」
あの航が珍しく言い澱んでいる。さすがに返事が聞きたいんだな、確かに長い事放って置き過ぎた気もする。
『OK、いいよ』って返事を用意して私は航の言葉を待った。
「あのさ、ちょっとキャンセルしていいか?」
「・・・はっ?」
「朋花の事好きなのは変わってないんだけどさ、あの時は俺・・・お前の事何も知らずに言っちゃったからさ・・・だから、少し時間くれない?」
「・・・何それ?」
思いもかけない事を言われ、私は足元が崩れて谷底に落っこちでもしたような・・・そんな状態だ。
「だって、まだ返事してないんだからいいだろ?」
「そういう問題じゃなくて・・・、」
私は付き合う前から、ううん、返事をする前に、告白してきた人に振られるって事?
まったく悪びれた様子も無く、何か物を借りる時くらいの感覚で言われた言葉に、ものすごくショックを受けて私はその場を逃げ出した。
「あ、朋花? ち、ちょっと待て・・・」
航の引き止める声を振り切って、私は家まで走って帰った。
「何で、何でよ!? 何で今になってキャンセルなんて言い出すの!?」
肩で息をしながら自分の部屋に駆け込み、勢いでカバンをベッドに叩きつけた。
しかし、その反動でベッドの上にあったコンポのリモコンが飛び上がり、床に落ちて電池が飛び散り・・・当たり散らしてもいい事なんか無いぞって、どこかの誰かに言われているような気がして、ガックリと力が抜け床に座り込んだ。
「何でこうなるの・・・?」
いきなり過ぎて、まだよく分かんないけど、きっと自業自得・・・なんだよね? きっと私何かやったんだ。
段々航に傾いてる自分に気付いて、航に構って欲しくて色々ちょっかい出してきたから、それかもしれない。その挙げ句がキャンセルさせてくれってんだから、おかしくて仕方ない。今の私は全然笑えないけどさ・・・。
さっさとOKしとけばよかっただけなのに、今となっては後の祭りで、もうどうにもならない。
カバンを床に引きずり下ろして、布団に倒れ込んで突っ伏した。制服に余計なシワが入ったり、白くなったりしそうだけど、何か今はどうでもいい。このまま寝ちゃって、起きたらすべて夢でしたって事になってたらいいのに・・・
でもそんな事はあり得なくって、眠れもせず、後悔に苛まれたまま時間だけが過ぎ、下から夕飯を告げるお母さんの声が聞こえた。
朋花が走って行った後、突然後ろからどつかれた。
つーか、蹴ったな!?
「航、お前何してんだ!?」
聡太にしては珍しく大きな声だ。しかも怒っているらしい。
「痛いな・・・、何すんだ?」
「何じゃない、お前こそ正気か? キャンセルってどういう気だ?」
振り向くと怖い顔なんかじゃなくて、逆に表情がよく分からないくらいでかなり驚いた。からかうと嫌な顔したり睨んでくるけど、ひょっとしてこれは、そういうのを突き抜けた状態なのか? だとしたら、こいつがここまで怒ったのは見た事が無い。
「・・・あぁ、それか。やり直したかったんだ。」
「何を?」
「何って、告白自体をだよ。」
「何で?」
「・・・言ったろ? 朋花の事何も知らないで勢いで言っちゃったから、よーく朋花の事を知ったうえで、改めて告白し直したかったんだ。だから、朋花の事を知る時間が欲しかったんだけど・・・。」
聡太は右手で顔の半分を押さえて項垂れた。さっきまでの怒りはどこかへ行ってしまったらしく、いつもの見慣れた聡太に戻って眉をしかめている。
「・・・見事に誰にも伝わってないぞ、それ。」
「途中で逃げられたしな・・・。」
「違う。・・・あのさ航、それはとっても航らしいと思うんだけど、バカ正直にキャンセルなんて言わなくてもいいと思うんだけど?」
「そうか?」
「そうだ! 現に今。朋ちゃん傷つけただろ?」
「ん・・・そうみたいだよな・・・参ったな~。」
俺は、こうなるなんて思ってもみなかった。
軽々しく告白してしまった事が申し訳なくて、俺の知らない朋花もどうにかしてやりたくて、全部まとめて任せとけ!・・・って言えるように、前の学校での事を聞きたかったんだが、それ所じゃなくなったな。
「・・・参ったって、ちゃんと先の事考えろ。そうしないと次無いぞ。このまま朋ちゃんに嫌われて、これでお仕舞い。航、残念でした~って?」
聡太はふざけた口調で恐ろしい事を言う。その内容に俺は本気で血の気が引いた。
「マジか!? そりゃ困る。」
「短絡的。・・・その時その時の気分で決めてないで、たまにはに本気で考えろ。」
指を突きつけて、俺に念を押した聡太は、急に向きを変えると先を歩き始めた。
・・・いや、今回は俺、よく考えたつもりだったんだけどな。
まったく何で今? どうして今、あんな事を言い出すんだ航は?
朋ちゃん、絶対航の事好きになってきてたのに。後ろから見てたらそれが一目瞭然で・・・ショックだろうな。
僕としても、三人でいるのが当たり前になってしまった今、このままバラバラになってしまうのは嫌だ。間に挟まれて気まずい思いをし続けるのは、もっと御免被りたい。
という事は、今僕はあの二人の仲直りに尽力するしかない・・・という事になる。
・・・さて、どうしたものか。
朋ちゃんの気持ちに微塵も気づいてもいない航に、それをはっきり伝えたら、ルール違反だってきっと朋ちゃんは怒るだろう・・・そもそも僕が伝える事じゃない。
朋ちゃんに航の考えを伝えるのは癪だ。ああいう考え無しな行動を今後改めてもらうためにも、今は十分考えて自分でどうにかして欲しい。
とは言え、板挟みの状態は好ましくない。
秋から冬に変わりかけの幾分暗くなった道を一人で歩きながら、前途多難な先を考えている自分に溜息を吐いた。
自分の事もどうにもできずにいるのに、どうして人の恋路に手を出さなければならないのか・・・その今の状況を周りのもの全てに笑われているような気がして、もう一度溜息を吐いた。
途中で手放した事を本気で後悔。
区切らなければ、朋花の過去は本人の回想じゃなくて、
兄貴の和樹に語らせたのにー!!