できる事
10話目です。
・・・ではどうぞ。
朝、朋花はうちに来なかった。
『これでお仕舞い』聡太が昨日言っていた言葉が、頭の中で木霊する。考えれば考えるほど時間を戻したくて仕方が無い。あーもう、何て馬鹿なんだ、あの時の俺!?
一方、隣を歩く聡太は普段と変わった様子も無く、飄々として朋花がいない事に何の疑問も抱いていないようだ。
「・・・なぁ、俺やっちゃったかなぁ?」
「そうだね。」
簡潔に即答された応えは、取り付く島も無い。
「朋花・・・来なかったな。」
「当然だね。」
良過ぎるテンポで帰ってくる短い言葉は、俺の心に深く鋭く突き刺さる。
「聡太・・・どうしたらいいと思う?」
「僕を頼るな、自分で考えろ。」
・・・違う。これは普段とは全く違う。飄々としてるんじゃなくて怒ってるんだ。あぁ、俺には縋る所も無いのか? その後も何度か聡太に話しかけたが、痛い言葉しか戻って来ないので諦めて口を閉じる事にした。
朝、航の家には行かなかった。
行けるわけが無い。キャンセルなんて言われたんだ、私はきっと航に嫌われるような事をしたんだ。謝って元の関係に戻りたい。
・・・でも、何て謝ればいいんだろう? ちゃんとどこが悪かったのか自分でよく分かってもいないのに、表面だけ謝っても今迄のような関係でいられるとは思えない。
・・・バカだな、私。
学校で、航が何度か声をかけようとしてきたけど・・・私はずっと逃げ続けた。
朋花とは話ができない。捕まえようとしても逃げられる・・・困った。
でも、これは自業自得だ。だから今は最初の問題を片付ける事にした。そもそもの理由『朋花の事を知りたい』だ。普段強気の朋花がどうしてあんなにパニックに陥ったのか、その理由を・・・前に質問しても答えてくれなかった、転校前の事を知りたい。担任の皆川ちゃんなら何か知ってんじゃないかって、昼休みに職員室に行ってみた。
あっよかった、いたいた。皆川ちゃんは自分の席で、食べ終わった弁当のフタを閉めていた。タイミングはいい感じだな。
「皆川ちゃーん、話あんだけどー。」
「先生をそんな風に呼ぶなって、いつも言ってるでしょ。」
「気にすんな。」
「します。」
青筋立てそうな皆川ちゃんの様子と、他の先生までこっちに注目してるのに気付いて、これ以上苛つかせるのは止めて本題を切り出した。
「で、先生、朋花・・・石川さんが転校してきた理由をご存知ありませんか?」
急な切り替えに皆川ちゃんは一瞬ついて来れなかったが、俺の質問に渋い顔をした。よし、これなら知ってるな。
「安田くんどうしたの?」
交渉の技術なんか持ってない。状況証拠しかこっちには無い。
どれだけ引き出せるかは、俺の口先にかかっている。
「前に、女の子数人に呼び出されて、パニック起こしかけてたんです。俺が止めに入って収めたんですけど・・・石川さんの様子が引っかかって、」
「そう、そんな事があったの・・・ありがとね、安田くん。」
よし一枚突破。
「いえ、友達ですから。」
「そうね、君達仲良いみたいだよね、転校してすぐは浮いてたみたいだから、先生心配してたんだけど・・・。」
実はこの先生結構熱血で、こういうのに弱いんだ。理想を押し付けてこようとするのはどうにかして欲しいんだけど。
「ハッキリしたいい子だと思いますよ?」
「えぇ、そうね、でもそういうのは裏目に出る事もあるのよね・・・いい友達ができて先生は嬉しいわ。でもごめんね。」
「でも・・・、」
教えてくださいと続ける前に、皆川ちゃんは優しく・・・でもきっぱりと俺の口を塞いだ。
「こういうプライバシーに関する話はやっぱり言っちゃ駄目だと思うから、また何かあったら教えて。」
「・・・そっか、先生ありがと。」
「安田くんもありがとね。」
・・・くそっ駄目か。
俺じゃ無理か? やっぱ単純に真正面から行っても無理なんだな・・・聡太なら上手い事聞きだせるかな?
いや、でも・・・あの理由をあいつに言うわけにもな・・・困ったな。
職員室から出て教室に向かいながら、他に手段は無いものかと、もう一度考えてみた。
どこかに書いた気がしますが、今回難航しまして、
二回破棄した、三度目の正直?なんですが、
この話の一部分は、破棄した一作目からリサイクル。