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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
5食目 キングクラーケン・バーベキュー、漂流サバイバル仕込み

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 心の声をきっかけに、胸の奥で張りつめていた理性の枷が、バキバキと音を立てて外れていく。


 極限状態でおかしくなったのか。


 それとも、こういう状況に妙な興奮を覚えるのか。


 はたまた、そのどちらもか。


 どばどば溢れる高揚感を抑えきれず、俺は変な方向に前向きになる。


「よし。まずは、サバイバル飯だな……」


 腹が減ってはなんとやら、それに救難信号を出すにも火起こしは不可欠。火を起こせば、同時に食事も摂れる、一石二鳥だ。




 けして、けして、けして――“サバイバル飯をやってみたかった”とか、そういうことじゃない。


 俺は乾いて燃やせそうな漂流物を拾い集める。それから火を起こす前に、食材の確保だ。

 空腹に従うままに、俺は早速森の方へと足を踏み入れた。

 散策してしばらく、木陰に小さなキノコの群れを発見。大陸にも自生している、食べられる種類のものだ。


 さらに進むと、桃色の果実を実らせた低木が目に入る。王都でも見かける品種。もぎ取ってかじると、ほどよい甘さと酸味、問題なし。


 岩肌の露出した斜面では、見覚えのある茎の根を掘り返す。乾いた土の奥から、ゾロゾロと“土竜芋(もぐらいも)”が顔を出した。

 ぽってりとした土竜のような見た目だが、こいつは煮ても焼いても美味く食える。




 俺の故郷の畑でも育てていた根菜だ。いいぞ、採取採取。


 抱えられる分だけの森の恵みを持って海辺に戻ると、今度は浅瀬に目を向ける。


 木の枝を槍代わりに突くと、銀色の影が跳ねる。


 おお魚だ。しかも結構な数がいる。


 さらに足もと――砂の下に、手のひらほどの“潮貝しおがい”がいくつも潜んでいた。




「……食材の宝庫か、この島」 




 ――後は。


 俺は振り返り、腕を組む。


 視線の先には、砂浜に放置していたキングクラーケンの脚。


 神官の故郷、東方の小さな島国では、クラーケンを捌いて酢飯の上に乗せる“スッシー”という料理があるらしい。


 となれば、キングだって食すことは可能なはずだ。ここまでで、俺のタガは完全に外れていた。もう誰もこの冒険を止めることはできない。


 問題は、調理手段――火と水。


 この二つさえあれば、どこでだって飯は作れる。




「……仕方ない」


 腰に手を当て、軽く息を吸う。


「――イフリート。ウンディーネ。ちょっと来てくれ」


 砂浜に紅と藍の魔法陣が同時に浮かび、轟音とともに、熱風と水流がぶつかり合った。


 まず現れたのは、燃え盛る業火の魔人――イフリート。


 全身に纏う炎が竜巻のように唸り、周囲の空気を焦がす。


『呼んだな、勇者。次は誰を消し炭にするのだ』


 物騒な第一声。それに続いて、水の膜が静かに揺らぎ、しとやかな女性の姿が現れる。


 透き通るような薄青の髪と穏やかな瞳。ウンディーネだ。


『召喚に応じ、馳せ参じました主様あるじさま。どのようなお望みを叶えましょう?』


 言いにくい。だが、言わねば始まらない。


「えっと……その……バーベキューするから、ちょっと手伝ってもらっていい?」


 二体の神精霊は同時に固まる。


 そして、まるで打ち合わせたかのように声を揃えた。



『『なんと?』』

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