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人見知り勇者さんは、今日もどこかでぼっち飯。  作者: 天野 肇
4食目 マーメイドソルトの潮騒バゲットサンド

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3

 宿の廊下。角を曲がったところで、弓使いと魔法使いがばったり鉢合わせるのを丁度発見した。


 互いに、ほんの瞬きほどの間の後に目を逸らし、足が止まる。昨晩の気まずさが明らかに尾を引いている。


 踵を返す弓使い、寂しそうに表情を歪ませ俯《うつむ》く魔法使い。


 ああ、だめだ。見てられない。俺は無言で去ろうとする弓使いの肩を掴んでくるりと方向転換させる。


「ちょ、なにすん」


 文句を言われる前に俺は紙袋を二つ魔法使いの手に握らせた。


「……はい、朝飯」

「え」

「港の名物だって。一緒に入ってるレモンペッパーの揚げ芋もなかなかうまいぞ」


 二人は紙袋を受け取って、ちらと顔を見合わせる。まだ雰囲気がぎこちないな。もうひと押しするか。


「屋上のテラス、日が当たってる。海も見えるし、風が気持ちいいぞ。いいから、ゆっくり食べてこい」


 こういうの、ほんと柄じゃない。

 どちらかというと戦士か神官辺りがスマートにこなすポジション。


「うわあ。柄にもないことしてんなあ」

「ほんと、無理してる感ありあり」


 正面からの的確な突っ込み。あ〜、もう。喧嘩してるくせになんなの君たち。

 ともあれ、そのタイミングでお互いの空気が緩んだのか二人は小さく笑い合う。


 提案通り並んで屋上への階段を上がっていくのを見届けて、しばし耳を澄ます。言い合いにはなっていないようでホッとする。


「美味しい……」

「勇者のくせに小洒落たもん選んでくるの笑える」

「そういうこと言ったらダメでしょ」

「いや、実際そう思うっしょ」

「そうだけど……あは」

「揚げ芋うめえ。これ無限に食える」

「ほんと、これもすっごく美味しい」


 いまいち腑に落ちない会話をしているが。これ以上聞き耳立てるのはヤボだ。多分きっと大丈夫だろう。テイクアウト、いい橋渡しになったかな。


 そう思い、船出の準備をすべく部屋に戻った。その数時間後――事態が急変するとも思わずに。



 昼時――。宿屋の食堂で神官が水の入ったグラスを運び、戦士はやたら元気に皿を並べている。

 俺と武闘家は荷物の最終確認を終えて席に着いた。


 そこで――弓使いと魔法使いが、並んで立ち上がる。並んで、だ。朝よりも、なんでか距離が近い。


「あー……その、昨日はお騒がせしました」

「ほんと、ごめんなさい」


 神官が、ほっとした顔で微笑み、戦士が胸を撫で下ろす。武闘家は腕を組んで頷く。


「やっと話せたんですね」

「いやー、見ててどうなることかと」

「仲直りできてなにより」


 そこで、二人が目を合わせ、息を合わせるみたいに同時に口を開いた。


「それで……報告があります」

「実は……」


 は? なに……。


「……前からお互い、気になってて」

「その……」


 え。


「魔王を倒す道のりの途中ですが、正式にお付き合いさせて頂くことにしました」


 ………………え?

 ちょ、


 え⁉︎


 神官が目を細め、戦士が親指を立て、武闘家は肩を揺らす。


「やっとですか」

「うんうん」

「めでたい」


 え。ちょ、ま、みんな、

 なにその反応。

 知ってましたみたいな。


 だって昨日まで言い合って、というかその前から色々と――。


 おつ。お付き合い――⁉︎


「勇者さん。結構にぶいんですね。あれはどう見たってそういうのじゃないですか」

「僕でも気づいてましたよ、いやあ、若いっていいなあ」


 神官と戦士に言われて、困惑する。

 全く気づかんかったわ。


「わたしたち、人間とエルフだから、時間の流れや価値観が違って、それが怖くてお互いを遠ざけていたけど。勇者のおかげでもっと歩み寄らなきゃって思ったの。これからは恐れずに歩み寄っていくよ」


 魔法使いが照れくさそうにする横で、弓使いが「アシストサンキューな」と軽く言うもんだから、お付き合いは良いけど、仲良くしてくれよと一瞬胃がキリッとする。


 完全に想定外。……まいったな。恋愛はさすがに守備範囲外だ。


 結果オーライ。とはいえ、


 俺は具材(パーティ)を纏めあげる、バゲット(リーダー)としてはまだまだ未熟らしいと痛感した。

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