「犯人」を探して
何度読み返したところで。
何も分からなくて。
やっぱり気になる私は。
ダンボールの中から、卒業アルバムや写真の類いを抜き出した。
それらをテーブルの上に並べる。
確実なのは高校一年生の時に同じクラスだということ。
よし。
思いの外、一年生の頃の全体写真は少なくて。
始業式の時と社会科実習の時くらいしかなかった。
一人一人目で追ってみて。
名前すら想い出せない子もいた。
誰だっけって。
その子の名前を思い出そうとして。
いちいち作業が中断する私。
ただ、実際のところ。
顔を見ても手紙を出した人物が分かるわけではなくて。
想い出が挨拶してくるだけ。
ふーん。
岡田とは三年間クラスが一緒だったんだ。
岡田昌樹は、親友の亜季や志帆と一緒で、小学校からの幼馴染み。
?
まさか岡田?
なーんて、訳ないよね。
岡田なら手紙なんて書かないで。
直接言うか。
メッセージとか……
なんで、手紙なんだろ?
メッセージでも送ったら……
あ!
連絡先を知らないからかな?
家の住所も?
でも、家にラブレター送るって聞いたことないし。
だから靴箱?
うーん。
とりあえず、岡田にメッセージを送る。
「あのさ、私に手紙書いた?」
よし。
私はまた、写真とにらめっこをはじめる。
うーん。
私を好きそうだった子?
指先で一人一人なぞっていく。
ふんふん。
……
わかるわけなーい。
!?
あっ。
でも、懐かしい顔が目に入った。
一色透くん。
確か、高校二年生になる前に引っ越した。
爽やかな笑顔が好きだった。
かな。
初恋だった。
のかな。
あの時から。
ちょっぴり気になっていたのかも。
そう。
唯一の想い出。
あれは――
金華山が燃えるような紅葉に染まった頃だった。
部活が終わり、忘れ物を取りに教室に向かって廊下を歩いていると。
カカカン、カカカカカカ……
どこからか、甲高い金属音が響いてきた。
どこかで耳にした事があるメロディ。
教室に近づくに連れて大きくなる。
あっ。
斜陽が差し込む窓辺の机に一人。
一色くんがいた。
髪が淡い光に包まれて。
私がいるのに気づいていないみたいだった。
音の正体は、一色くんの机の上のオルゴール。
私はそっと、その後ろの自分の席に向かう。
音色のせいか。
放課後の空気のせいか。
室内の時の流れが、不思議と緩んでいた。
私が椅子に手を掛けたとき。
音楽が止んだ。
「素敵な曲だね」
きぎーっ。
慌てた様子で椅子を鳴らして。
一色くんは振り返った。
「びっくりした」
本当に驚いたみたいで。
目と口が大きく見開かれていた。
「ごめんね、脅かすつもりはなかったんだ」
「いや、全然」
「珍しいね、こんな時間まで残ってるの」
「そう? そっか。相川さんはどうしたの?」
「忘れ物しちゃって」
私は机の中からペンケースを取り出した。
「なるほど」
ペンケースをリュックにしまいながら。
少し高鳴る鼓動を誤魔化して。
「それ、なんて曲?」
そおっと椅子を引いて腰かけた。
「ああ……」
一色くんは、片手を伸ばして取ったオルゴールを私の机の上に置いた。
茶色い木目調の両手に収まるくらいの箱。
表面には何かの花が彫られていて。
厳かな気品をまとっていて。
角や一部が剥げているところもあって。
私が見ても古い物だというのは分かった。
一色くんは箱の横に平べったい金具を突き刺して。
じー、じー…
それを回し始めた。
私を見て。
すーっと、柔らかく微笑んだ。
ピクッとした私。
夕焼けに染まる一色くんの笑顔。
私の頬を染めたのは。
きゅんとした気持ちだった――
ピコン!
「ひゃっ!」
私の思考を遮るように。
テーブルの上のスマホが鳴った。
お読み下さりありがとうございます。
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