埠頭は戦場
スーパーに着いてから、賢一たちは、白いテクニカルを駐車場に停めた。
「俺は、日本のJSDFの賢一だ? 俺たちは漁港を目指している? もう引き返すのも、行くのも地獄だから前に進んでいる」
「私は、チャム…………私たちは食糧や弾薬を運んでいたのよ? あの軽トラにもね」
賢一は、ワゴン車から降りてきた女性たちに声をかけると、アジア系の女性生存者も名前を言った。
他の仲間たちは、周辺に散らばる死体や車両などを調べながら、辺りを警戒する。
「助けてくれた礼に、弾薬の一部を分けるわっ! さっき、手榴弾や火炎瓶を使っていたでしょう? この箱に入ってるから上げるわ」
「分かった、遠慮なく貰っておく? あとは知っているだろうが? 漁港方面はテロ集団が? 西側の方面から陸軍部隊が来ているらしい」
小さな段ボール箱を、白いテクニカルへと、チャムは運んでいく。
賢一は、それを彼女から受けとり、自分で持っていったあと、ゆっくりと荷台に置いた。
「ええ、それは知らなかったわっ! だとしたら、もう少しの辛抱ね…………じゃあ、私たらは長いしてられないから、もう行くわね」
「そっちも無事でなっ!」
チャムは考えごとをしながら、すぐに白いワゴン車に向かっていき、運転席に座った。
そして、トゥクトゥクとともに駐車場から出ていき、賢一は後ろ姿を見送った。
「さて、俺たちも漁港に行こうか? ここも、ゾンビの群れが襲ってくるかも知れんからな」
「ですね…………死体が起き上がらないと良いのですが」
「その前に、これは貰っておくわ」
「バールか? 俺のハリガンバーと同じで、作業用にも使えるな?」
遠目に見える死体、それから蠢く人影が近づいてくる前に、賢一も仲間とともに退散しようとする。
M1919の側で、メイスーはスーパー側や反対側にあるビルなどに、顔を向けながら呟く。
スーパーの前に倒れているギャングっぽい死体を、モイラは蹴っ飛ばした。
ソイツが握っていたバールが転がると、彼女は拾い上げ、ジャンは呟きながら車を目指した。
「手榴弾と火炎瓶だ」
「私も貰うわ? あと、食べ物はっと?」
賢一は、段ボール箱から武器を取り出すと、エリーゼも中身を漁る。
「食い物は、あっちだ? それより、出発するぞ」
「分かってるわよ…………ガリガリ」
「早く行こうぜぇ~~? ゾンビが来る前にな」
賢一が、白いテクニカルに座ると、エリーゼは段ボール箱の中から、ポテチを取り出して食べる。
ダニエルは、赤いテクニカルの運転席に背中を預けながら、欠伸をする。
「ああ…………出発しよう? 食うのは、車を動かしながらでも、できるだろう?」
「ええ」
そう言って、賢一が白いテクニカルを走らせると、エリーゼも赤いテクニカルの荷台に乗った。
こうして、車両部隊は漁港を目指して、ひたすら前へと進んでいった。
「海岸だな? 前に見たような景色だ…………」
「科学プラントや工場ですね? 漁師ゾンビも出てくるんでしょうか?」
右側には、たくさんの大きな建物が建ち並び、左側には、船が一隻もない青く光る海が広がる。
賢一とメイスー達は、曲がり角を通るときに、ふと前方を眺めながら呟く。
「じゃないと言いな?」
「ですね」
賢一とメイスー達は、幾つものコンテナが並べられた壁に、白いテクニカルは近づいていく。
赤色、緑色、青色などの積み木に見えるソレらは、三階から四階くらい高い。
その背後には、超巨大な黄色いクレーン&銀色穀物サイロなども幾つかあった。
どうやら、漁港は要塞化されているらしく、こちら側からは入られそうになかった。
そして、ここは埠頭らしく、コンクリートが右側の海に延びており、赤い建物が見える
「こっちはダメか?」
「通れませんね…………」
「止まれ」
「ここは、港湾労働者組合の敷地だ」
白いテクニカルが止まると、賢一は諦めモードで、ハンドルから手を離した。
メイスーも、M1919を両手で握ったまま、顔だけを上に向けてみる。
黄色いクレーン車から、こちらに狙撃銃を向けながら、作業員の姿をした生存者が叫ぶ。
漁師姿の生存者も、コルト45を構えながら、真正面にあるコンテナ上から怒鳴った。
「俺たちが連絡のあった救援部隊だっ! 甘と言う研究者から聞いているはずだっ!」
「その証拠は? ギャングや私兵ではないと言う確証がないと、撃つぞっ!!」
「おいっ! 北側にゾンビが出ているっ! こっちからも増援を送るぞっ!」
賢一が叫んでも、作業員姿の生存者は、狙撃銃を手放す様子はない。
しかし、そこに水産職員の姿をした生存者が、コンテナ上に、大慌てで現れた。
「北側だなっ! そっちに行くぞっ!」
「私たちが、助けに行かないと…………」
「あっ! 止まれっ!」
賢一は、白いテクニカルをUターンさせて、巨大倉庫の合間にある道路に向かった。
戦いを嫌がりながらも、メイスーはM1919を強く握りしめて、不安気な表情を強ばらせる。
そんな二人を作業員姿の生存者は、狙撃しようとしたが、動く車を上手く狙えなかった。
さらに、他のテクニカルに乗っている仲間たちも、素早く動いたため、撃たれはしなかった。
「メイスー、ゾンビを頼むぞっ! 反対側に回ったら撃ち殺してくれっ!」
「分かってますっ! 向こうに着いたら、すぐに漁師さんたちを助けましょうっ!」
カマボコ型の古い倉庫を右手に曲がり、合間を通って、反対側に出た。
そこにも、工場や事務所などが並び、十字路から彼らは、また右側に曲がった。
賢一は、スピードを上げすぎると事故を起こすかも知れないため、注意しながら運転した。
M1919のグリップを握り、メイスーは不安気な顔から真剣な表情になり、戦う覚悟を決めた。
「どこも塞がれているな? これじゃあ、入れない」
大量に、設置された木箱や木製パレットなどが、カマボコ倉庫の隙間なく埋めている。
それを四回ほど越えると広い海浜公園が見えたため、賢一は右側に回り込む。
「見えたっ! 戦っているな?」
「ひぇっ!? ゾンビの群れが迫っていますっ!」
「ガアアアアーーーー!?」
「ギュオオオオーーーー!!」
赤色や青色などのコンテナ周辺では、何人か生存者たちが戦っている姿が、視認できた。
ゾンビの群れは、先頭は疎らだが、後ろからは大集団で、漁協を目指している。
迷うことなく、賢一はアクセル全開にして、壁に向かっていく、ゾンビ達を轢き殺そうとする。
機銃弾をバラまき、テクニカルに近づく敵を、メイスーも蹴散らす。
「突っ込むぞ、メイスーーーー!?」
「はい、賢一さんっ!!!!」
「グエッ! ガーー!」
「ギュオッ!?」
「ウゲ、ガガ、ゴ…………」
「アガガ、ウッ!」
白いテクニカルが、漁師ゾンビや水着アジア系ゾンビたちを跳ねる。
その度に、ガタガタッと衝突音を鳴らし、連中を宙に舞いあげた。
M1919が火を吹くと、次々と走るゾンビ集団が、血を撒き散らしながら草原に倒れていなく。
賢一とメイスー達は、真剣な表情で、ただ真っ直ぐに、コンテナ壁に向かっていく。
「コイツは凄い数だぜ? なあ、エリーゼ…………昨日みたいに勝てると思うか?」
「勝てるわよ? 何故なら、こうして、ゴムを伸ばせばっ!」
「ジャン、車を停めたら迫撃砲を撃つから、射撃や格闘は宜しくね」
「分かった、邪魔なゾンビ達は任せてくれっ!」
赤いテクニカルを運転するダニエルは、真顔で汗を滴しながら、エリーゼに話しかけた。
彼女は、それに答えながら、ビッグスリングショットで、火炎瓶を何度も発射した。
M2迫撃砲の向きを変えて、モイラは収納ボックスに納められた砲弾を取り出す。
ジャンは、数が多いゾンビの群れを避けながら、青いテクニカルで、コンテナ壁を目指した。




