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漁港までは、もう少し


 石をコンクリートに混ぜた壁に囲まれた白い屋敷は、屋根がなく屋上は、歩けるようになっている。


 あの後、賢一たちは車列を、敷地内に入れてしまい、ここで休憩することにした。



「ダニエル、頼むぞ」


「ああ、いくぞ」


「移動するぞ? 危ないから退けてくれ」


「弾を容れないとね」


 明けられていた鉄格子の門を、左右から賢一とダニエル達が閉じてしまう。


 ジャンは、白いテクニカルを運転して、右側から曲がりながら、正門に車を横付けした。



 M1919を操作して、モイラは機関部の蓋を開き、100連ベルトを突っ込む。


 こうして、ここで彼らは休むことにして、日影へと移動していった。



「今は昼過ぎか? 今日中に漁港には行きたいな? でも、今は休むぞ…………」


「ほうよね? …………疲れたわ、なんだか腕も痒いし」


 屋敷の左側には、広い車庫があり、そこで賢一は奥にある赤いドラム缶に座る。


 そこに、エリーゼが何かを口に含みながら現れたかと思いきや、収納ボックスの上に腰掛けた。



「うわ? 一人言をしゃべっている時に、いきなり現れるなよ? 驚くじゃないか」


「ガチッ! 驚かせて、悪かったわね? でも、私は腕に着ける傷薬を探しに来たのよ」


 賢一の対面に座っているエリーゼは、飴を噛み砕きながら、右腕を前にだす。



「傷薬か? これからは包帯や傷薬も、持ち運ばないとな」


「飲み物や食べ物もね? 傷は治りかけているけど、その代わり胃が空っぽになったように感じるのよ」


 戦闘で負傷したら、武器を持てなくなり、出血は命に関わるため、賢一は治療器具が必要と考える。


 エリーゼの方は、ゲンナリした顔つきで、また飴玉を袋から出して、口に運ぶ。



「きっと、ウイルスの効果なんだろうけどね? ないと思ってたけど、ここに痒み止めがあったら良いのに」


「残念だが、痒みは我慢してくれ? 食糧なら、まだ車に残っているだろう?」


 血で赤くなった右腕を、カリカリと掻いて、エリーゼはヒリヒリする痒みと痛みを堪える。


 苦悶の表情を浮かべる彼女に対して、賢一は薬局に探索しに行き、痒み止めを探そうかと考える。



「ここにも使える物や食糧がないか、探しに来たのよ? 飴玉が道具箱の奥にあったから、それを食べているけど、ほかに糖分を取れそうな物を漁りにね」


「だったら、何も無いぞ? あるのは工具、農作業用の道具くらいだ」


 バッグから、菓子パンを取り出しながら、エリーゼが呟くと、賢一は辺りを見渡す。


 ピッチフォーク、バール、ハンマー等が、三方を囲む壁に掛けられている。



「でしょうね? はあ~~暫くは休まさせて…………外は陽射しが強いのよ? ガリガリ」


「ああ、ここに座っててくれ? 俺は周辺を見回りに行く」


 腕を掻きながら、眉間にシワを寄せるエリーゼのために、賢一は薬を探しに行く



「行ってらっしゃい」


 そう言うと、エリーゼは袋を破り、今度は菓子パンを食べ始めた。



「皆は、何をしているんだ? 痒み止めの薬を取りに行きたいが? 休息も必要だしな」


 賢一は、エリーゼの事を心配するとともに、仲間たちを探して、キョロキョロと視線を動かした。



「あの? 弾の切り替えは、どうするんですか?」


「ああーー! それはね? ジャン、アンタのも教えるから来なっ! M60を持ってきてくれ」


「ん? どう言う事だ?」


 メイスーは、白いテクニカルのM1919を弄っているモイラに話しかけた。


 すると、青テクニカルの荷台後部に腰掛け、両腕を組むジャンも呼ばれた。



「今から銃の扱い方を教えるのさ? こうやって、蓋を開けて、弾を引っ張るんだよ」


「なるほどな」


「ほへ~~な、なるほど…………」


 モイラは、機関部の蓋を開いたり、弾を引っ張ったりして、ジャンとメイスーに装填方法を見せた。



「ダニエルだけが見えない?」


 賢一は、屋敷の屋上や右側に設置された螺旋階段を眺めたり、建物裏側に回ろうかと思った。



「敵が来る? あっちかっ!」


「チュンチュン」


「チュン」


「ダニエルは上か? 見張りをしているのか?」


 しかし、屋上から声が聞こえたため、そこを見ると、ダニエルがAK47を構える姿が見えた。


 どうやら、彼は屋敷を囲む崖の上にある木々から飛び立った小鳥に反応したようだ。



「はぁ~~? 何やってるんだか? あっちから登ったのか? 見張りをしてくれたんだな?」


「賢一、来てくれっ! 敵だっ!」


 左側にある赤い螺旋階段を見て、賢一は両腕を組みながら、溜め息を吐いた。


 その時、ダニエルが上から叫んだため、驚いた彼は急いで屋上に向かった。



「今度は何だ? まさか、また見間違いじゃないだろうな?」


「いや、ゾンビリザードだっ!」


 屋上に着いた賢一は、ダニエルがAK47を構える正面の道路左側を見た。


 すると、彼が言うように黒と黄色のオオトカゲが、走ってくる様子が分かった。



「はあ? 本当だな? しかし、下手に刺激しないでおくか…………銃声は他のゾンビを引き寄せてしまうからな」


「そうだよな? 焦って、撃ってしまうかも知れなかったぜ…………」


 賢一は、九九式狙撃銃のスコープを覗くと、オオトカゲは、体中が傷だらけである事も分かった。


 だが、彼は放置することを選び、ダニエルもAK47の銃口を下げた。



「どうしたんだっ? 敵が来たと聞いたが?」


「大丈夫なのかいっ!!」


「大きな声を出さない方がいいっ! 今、説明しに行くっ!」


「ゾンビリザードが出たんだよ?」


 M60を肩に担ぐと、ジャンは螺旋階段の方に向かって、歩いてきた。


 M1919を両手で握りながら、モイラは道路から何が来るのかと、戦闘体制を取る。



 賢一は、二人を落ち着かせたあと、屋上からダニエルとともに降りていく。


 すると、屋敷の前では、メイスーが怯えており、エリーゼは呆けっとした顔で立っていた。



「な、何が出たんですか? もしかしたら、例のお化け?」


「…………な、ワケないでしょ? ゾンビが彷徨いているのよ」


 アンダーカバーを両手で握りしめながら、メイスーは中腰になり、不安げな顔で辺りを警戒する。


 一方、エリーゼは、ホルスターに容れているスカンジウムを、いつでも引く抜けるようにしていた。



「そうだな? 黒と黄色のゾンビリザードって、感じだった」

 

「一匹だけだが? 他にも、歩いているかも知れない」


「はあ? ソイツは…………ミンダナオミズオオトカゲじゃないか?」


「ここらじゃ、野良犬なみに珍しくないですよ?」


 賢一は、何ともなかったかのように言って、皆を落ち着かせようとした。


 険しい表情のまま、ダニエルはAK47を抱えながら、眼を鋭くさせている。



 話を聞いて、ジャンはM60を青いテクニカルの荷台に置いてしまった。


 メイスーも、敵の正体が分かると、ホッと胸を撫で下ろすとともに、下を向いた。



「ただ、体中に生傷があったし、赤黒い部分もあったからな? アレは、どう見てもゾンビだった」


「だろっ! ここも、ヤベーー場所なんじゃねぇか? 早く行こうぜっ!」


 疲れたかのように、賢一は肩から力を抜きながら、自分がスコープ越しに見た敵を説明する。


 ゾンビリザードと戦いたくないダニエルは、素早く赤いテクニカルに乗り込んだ。



「だったら、さっさと行くとしようか? トカゲの餌に成りたくは無いからねっ!」


「全くだわ…………ああーー痒い」


 モイラは、青いテクニカルに、エリーゼは赤いテクニカルの荷台に乗った。



「メイスー? そう言うワケだから、あんまり休めなかったが、機関銃手を、また頼むな」


「はいっ! 後ろは任せてくださいねっ! それより、行きましょうっ!」


 賢一が門を開けようとすると、メイスーは左側から手伝ってくれた。


 そして、二人が白いテクニカルに乗ると、車列は移動を開始したのだった。


 ■ 生物説明。



 ミンダナオミズオオトカゲ。



 フィリピン全域に生息するオオトカゲであり、黒と黄色の模様が目立つ。


 市街地にも、頻繁に現れるため、目撃することが多い。



 プロケトでは、フィリピンに近い北側に生息しており、体長は150センチ程である。

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