日影で休むヒーローたち
賢一たちは、収納ボックスから武器を取り出して、色々と調べていた。
「シグP220か? 自衛隊でも使っているし、使い慣れている…………十四年式と交換しようっ! 威力と貫通力は上だし」
賢一は、武器を取り替えると、暴発しないかと、シグP220の安全装置を確かめる。
「このピンク色の変なリボルバーと黒い拳銃は? あと、ライフルも?」
「ピンク色リボルバーの名前は、アンダーカバーと言う警察の囮捜捜査用を意味する奴だ? 38口径だから、エリーゼのスカンジウムと弾の互換性がある」
メイスーは、アンダーカバーとマカロフを持ち上げて、二丁拳銃の構えを取る。
それを橫から見ていた賢一は、彼女に武器の説明をして、近づいていくと、彼女は顔を紅くさせる。
「拳銃の方は、マカロフだ…………トカレフに代わって、ヤクザが使い出した旧ソ連製の小型拳銃だな? ライフルは、SKSと言って、ダニエルのAKと弾は同じだ」
「じゃあ? エリーゼさんのとも、弾は同じですね?」
マカロフの事を教えながら、賢一は次に収納ボックスからSKSを取り出す。
そして、ボルトを引くと、クリップに挟まれたライフル弾を、メイスーに見せる。
「エリーゼのは、同じAKでも弾の大きさが違うから使えないんだ」
「AK47、AK74の弾はサイズが違うのよ? ほら?」
「あ、本当ですね?」
賢一の言葉を聞いて、エリーゼは口からポテチ袋を離して、丸めるとポケットに突っ込んだ。
それから、彼女はAK74の弾倉を抜いて、メイスーに弾を見せた。
「小さい弾の方が、命中率が良いから、74年から大きさを変えたんだ? だから、47と74と言う…………ただ、大きい弾も威力や射程距離では優れるから、どちらが悪いかは言えない」
「な、なるほど…………」
賢一の説明を聞いて、メイスーは納得しながらSKSを構えてみる。
「メイスー、今までの武器より威力もあるし? 旧式武器と取り替えたら、どうだ? 射撃の反動にも慣れただろうし? あと、他の連中は?」
「そうですねっ! 私も射撃技能が上がっている気がしますし? 名残惜しいですが、これからの戦いには強力な武器が必要ですし」
賢一のアドバイスを聞いて、メイスーはM1カービンを収納ボックスに仕舞う。
26年式拳銃、九四式拳銃なども、ホルスターから抜いて、見つめながら呟く。
「こっちの散弾銃は? 既に持っているが? 軽いな? 次からは、これも取り替えるか」
「イサカM37だな…………陸自じゃ、使わないから、余り分からないな?」
「海兵隊でもね? 使うと言ったら、レミントン870、モスバーグ500、ベネリM4くらいだし」
ジャンが両手で持ち上げたイサカM37を見て、賢一とモイラ達は呟く。
「グアムやハワイの射撃場で使ったのは、ウィンチェスターライフルくらいだしね? 他は仕事で使う奴? それから、ショットガンやリボルバーは適当に撃っただけだからね? それらを連射している人も居たけど…………インストラクターに聞いとけば良かったわ」
「俺たちも、仕事で使うだけで、武器の専門家じゃないからなあ」
「そうか? でも、これは良い銃だ…………マシンガンが重い分、ショットガンが軽いと持ち運びが楽になる」
モイラと賢一たちの話を聞きながら、ジャンはイサカM37を構えた。
「それより、これは私が貰おうかしら?」
「コイツは俺のだ」
エリーゼは、アイスピックを右手に握りしめ、鋭い突きを繰り出す。
ダニエルは、やたら目ったらに、ツルハシを振り回して、重さを確かめる。
「まあ、みんなに新しい武器が行き渡ったから、飯でも食って休もう?」
「そうね? 今は昼休みにしましょうかっ!」
賢一とモイラ達は、腹が減ってきたため、そろそろ昼食の時間だと、二人とも思った。
こうして、ギャング達から奪った食糧の内、簡単に食べられる物から口に運んだ。
そうやって、のんびり過ごしていると、やがて彼らは暑さに嫌気が差してきた。
海から吹く浜風は、生温く日影に居ても涼しさを感じられないのだ。
「しかし? 最初は、軍隊の捜索から始まり、ボートの回収に向かうことになった…………俺たちが貴重なサンプルだと言うが、その割には最前線に出されてるな」
「きっと、どこも人手不足なのよ? それに、刑務所で採血した分があるから、甘は私たちが死んでも平気なんだわ」
白いテクニカルの屋根に座り、M1919を眺めながら、賢一は額から汗を垂らす。
青いテクニカルの後部に、背中を預けるモイラも、空を眺めながら愚痴を吐く。
「確かにな? 兵隊なんて、使いすての駒だからな? だが、困っている人々を放置するために、抗体持ちだからって、後ろに下がる気はないぞっ? …………その甘からだ」
『賢一、漁港には軍の部隊が向かうことになったっ! 君たちは下がってもいい』
賢一が、渋い顔で自らの決意を語っていると、無線機から甘の声が聞こえた。
さらに、今話している内容と関係していることを、聞かされたため、みんな驚いた。
「…………そうは言っても、漁港は近い? 行くも戻るも同じ地獄の道を通らねば成らない」
「甘、予備の血液サンプルは抽出しているんだろう? だったら、私たちが死んでも困らないはずだわっ! だから、今まで戦闘に参加させてたんでしょう? これからも海兵隊員は戦うわよ」
賢一は、戻るよりも前進して、漁港に救援に向かうことを選び、真剣な表情で話す。
モイラも、一軍人として、飽くまでも戦い続けると闘志を燃やし、撤退を拒否する。
「ああ、だが? 生きている方が研究はしやすい…………それに、君たちが無事なら私も安心する…………あと、ようやく内陸部から大規模な軍の増援が到着するんだ? 治安も回復傾向にあるし、ワザワザ死にに行く必要は無いだろう? 飛行部隊も間も無く到着するはずだ」
甘は、賢一たちの身を心配して、なおも退却してくるように促す。
「今までは、人手不足を理由に君たちにも無理をさせていたが、その必要は無くなったんだ? ゾンビ・ウイルスにも、ある程度の耐性を持つ人々も見つかったしな」
「甘、俺たちはスーパーヒーローじゃない…………だが、困っている人々は見捨てないっ! と、さっき話していたんだ」
「私たちは、引き続き救援部隊として、漁港に向かうわよっ! それに、こっちはまだ治安が悪いからねっ!」
「窮地に陥る人々が存在する限り、俺は決して見捨てないぞ」
説得を続ける甘に対して、賢一とモイラ達は、すでに覚悟を決めていると話す。
すると、近くで話を聞いていたジャンも、無線機に向かって、大声で答えた。
「…………分かった、だが気をつけてくれよ? 軍隊が来る前に市街地には、プロケト・イスラム解放戦線の車両部隊が到着したからな? 絶対に死ぬなよ」
「ああ、生き残って、そっちに必ず戻るっ! じゃあな」
甘は、固い意思を持つ賢一たちの声を聞いて、説得を諦めざる終えなかった。
「甘との話しは終わったわね? そろそろ、出発しましょう? カメラのレンズには、人影が映る…………しかし、よろけるのも見えれば? 武器を手にする集団も見えるわ」
「やべぇな、おい? ゾンビか? 人間か分からないからな? 何だったっけ…………武器持ちゾンビだって、存在するんだしよっ!」
エリーゼは、カメラを右から左へと向けて、砂浜を歩く集団を見かける。
ダニエルは、さっと赤いテクニカルに乗って、ハンドルを握った。
「賢一さん? 私も怖いけど、人助けには付き合います…………私より弱い年寄りや子供のためならばっ!」
「メイスー、そうだな? 自衛隊を辞めるまでは、戦わなくちゃなっ! 機関銃手を頼んだぞっ!」
SKSを抱えるメイスーが、真剣な顔つきを見せると、賢一は急いで、白いテクニカルに乗った。
「よし、みんな行くぞっ!」
こうして、賢一が白いテクニカルを走らせると、残りの二台も、後に続いた。




