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交通事故


 教会から離れた賢一たちが乗っているピックアップは、街中を走行していた。



「甘、聞こえるか? 新しいゾンビが登場したんだっ!自爆するタイプだ? 銃撃を喰らっても多少は平気な奴だった」


「聞こえているぞ、賢一っ! ソイツの報告なら受けているっ! ボンバーと言う名前だ」


 賢一は、無線機を取り出して、車内のカップホルダーに置きながら、甘に連絡を取る。



「奴は、多少の知性が残っており、生存者を見つけると、助けて貰いに近づいてくる…………だが、走ってくると、安心感から気が緩んで自爆するようだ」


 無線機の向こうで、甘は研究室から冷静に、ゾンビに関する情報を説明する。



「とは言え、ほかにも怒りや恐怖感から自爆する事もあるらしいな? 気をつけてくれ」


「なんだよ、そりゃあ~~結局、どうやって、倒せば良いんだ?」


「弾も効かない奴が、相手なんだよ? 私たちは、無敵のアンデッドを相手にするのかい?」


「お前ら、落ち着け? 何か策があるはずだ」


 自爆ゾンビ、ボンバーの詳細を甘から聞いて、賢一は倒す手法が分からず困りはててしまう。


 荷台から、モイラは溜め息混じりに愚痴ると、ジャンは険しい表情で、左右を睨む。



「もちろんだ、ジャンの言うとおり、爆発する前に大量の銃弾を浴びせたり、刃物や打撃で殺害すると破裂するだけで、爆発はしないらしい? ただ、衝撃波は喰らうがな」


 新型自爆ゾンビに困る皆に対して、甘は対象方法を教えてくれた。



「あと、新しいゾンビの情報だが、くしゃみを飛ばすゾンビを見たと言う報告がある? また、幽霊やスケルトンを見たともな」


「くしゃみ?」


「は…………幽霊?」


「スケルトン?」


 新しいゾンビのことを、甘が教えてくれたが、賢一は何を言ってるんだと思った。


 モイラとジャン達も、非現実的な敵の名前が出てきたため、ポカンとなってしまう。



「まだ、未確認の情報だ…………情報は錯綜しているし、ゾンビを見間違えたのかも知れない」


「そうかもな? 肉が食われたり、腐って無くなっているゾンビを、スケルトンと勘違いしたんだろう」


 甘ですら、新型アンデッドの存在に懐疑的なようであり、賢一も見間違いだと思った。



「それから悪い情報だ、プロケト・イスラム解放戦線が支配地域を広げているらしい? 山岳地から漁港にも向かっているようだ」


「ああ、ソイツは良くない情報だ…………だが、行くしかないっ! このまま向かうが? そっちから連絡して置いてくれよ? 青と赤の自動車が来たら味方だとな」


「それから、食糧も用意して置いてね? 私たちは、腹が減っているんだから」


 甘から最後に知らされた情報は、賢一とモイラ達に良くない話しだった。



「分かっている? 漁港の港湾労働者委員会には、こちらから攻撃しないのと、食糧を用意するように伝えておく…………もう切るぞ? まだ用はあるか?」


「いや、ない? 切っていい…………と言うか、またな」


 漁港に向かうため、甘との話を終えた賢一は、ピックアップで道路を進んでいった。



「昨日は、酷かったな? 漁協以来の激戦だった」


「連中、夜になると凶暴化するからね? 吸血鬼か? ゾンビか? ハッキリして欲しいわよ」


「エングラーが叫んだから、さらにゾンビの数が増えたしな…………そして、犠牲者もだ」


 昨夜の戦闘では、小走りゾンビ達までが走る速度を上げて、集団で襲いかかってきた。


 フレッシャー並みの速さで走ってくる連中に、賢一は苦戦したことを思いだす。



 ジャンピンガー達も、攻撃性が増しており、モイラは厄介な相手だったと回想する。


 その後ろで、ジャンは激戦で戦死した生存者たちを偲び、十字を切った。



「いつも、慣れない…………この仕事に…………あの父娘も救えなかった」


「仕方ないさっ! 私たちは、スーパーヒーローじゃないからね? いつも最善を尽くして、民間人を助けよとするわよ」


「そうだぞ? 自衛隊や海兵隊、消防士だって、ただの人間だ…………限界はある」


 住宅や店舗が建ち並ぶ通り、青いピックアップは低速で走り続ける。


 ラウラと父親たちを思い、ジャンは憂鬱になってしまい、俯いたまま愚痴った。



 モイラは、彼を励ますために、屋根に背中を預けながら何とか説得しようとする。


 賢一も、昨日の嫌な記憶を忘れるべく、運転に集中するため、ハンドルを握る掌に力を入れる。



「はっ? 事故車があるっ! 負傷者もだっ!」


 広い交差点の手前で、軽トラと乗用車が衝突しており、負傷者が倒れている。


 それに、賢一は気がついた事で、急ブレーキを踏んで、ピックアップを停めた。



「はあ、はあ、助けてくれ」


「大丈夫なのか? いや、モイラ…………分かっているよな」


「ええっ! ジャン、彼と行くのよ? 私は見張りを行うわ」


「周囲の見張りをするんだなっ! 分かった、俺が救助に向かう」


 軽トラの側で、苦しそうに倒れている白人男性を、助けに行く前に、賢一は異変に気付く。


 モイラも、それが何なのか分かりきっており、M4カービンを構えながら、荷台から周囲を伺う。



 消防士として、責任感のあるジャンは、すぐに気を取り直して、救助に向かった。


 周辺からは音もなく、不気味な静けさが漂い、嫌な雰囲気に包まれている。



「ぐぅぅ?」


「おい? 大丈夫か? ってな」


「賢一、何をするんだっ!」


 助けようとする振りをして、白人男性の両手を掴み、賢一は地面に組伏せた。


 それを見て、ジャンは訳も分からず、なぜ拘束したのかと、彼を問い詰める。



「動くなっ!」


「お前たちは包囲されているっ!」


 左側手前の韓国レストランから、向かい側にあるコンビニから声が響いた。



「持っている物を寄越せっ!!」


「動くと、撃つぞ」


「分かった…………撃つな」


「この野郎、話しやがれっ!」


 韓国レストランからは、二階の窓に黒人ギャングが、グリースガンを向けていた。


 一階でも、AK47を太平洋系のギャングが、ドアから構えている。



 白人ギャングは、賢一が両手を上げると、急いで立ち上がった。


 そして、シャツの中に隠していたトカレフを抜き取り、背中に銃口を向けた。



「…………モイラ、反撃だっ! この野郎っ!」


「うっ!」


「奴ら、反撃しやが…………」


「な、なんだ?」


 賢一は、素早く後ろに振り向き、トカレフを奪い取ると、即座に白人ギャングを射殺する。


 そして、モイラが反撃するかと思いきや、別方向から、いきなりライフル弾が飛んできた。



 太平洋系のギャングは、AK47を連射しまくり、すぐさま壁に身を隠す。


 その間に、コンビニからも、ギャング達が屋上で、銃を撃ちまくった。



「死ねっ! 逃げろ、逃げろ」


「ううっ!」


「クソがっ! 罠だったのかっ!」


「アンタら、下がるのよっ!」


 トカレフが弾切れになるまで撃ちながら、賢一は乱射しながら青いピックアップへと走る。


 すると、韓国レストランに隠れていた太平洋系のギャングは、流れ弾が壁を貫通して、射殺された。



 ジャンは、九九式軽機関銃を乱射しまくり、敵を牽制しながら、その場から離れた。


 モイラは、ピックアップの屋根に両肘を載せて、M4カービンを単発射撃を繰り返す。



「うげっ!」


「仲間が殺られたっ!」


 コンビニの屋上から、CQ311を連射していたアジア系のギャングは、胸を撃たれて血を吐いた。


 ラテン系のギャングは、すぐに伏せながら、M1ガーランドを撃ちまくってきた。



「不味いっ! 建物の中に隠れろっ!」


「おいっ! 賢一、ヤバい雰囲気なのは察していたが、これは何が起きているんだっ!」


「ギャングとは、反対方向から銃弾が飛んできているわ? 私兵、狩猟者のどちらかが、右側から攻めてる」


「ひええ~~!? そ、それなら早く逃げましょうっ!!」


 右側にある三階建ての小さなビルに、賢一は走っていき、入口に身を引っ込めた。


 韓国レストランの中に入って、ダニエルは向かい側にあるコンビニを睨み、すぐに頭を下げる。



 エリーゼは、赤いテクニカルの後部に隠れながら、弾丸が飛び交う様子を眺める。


 メイスーも、彼女の左側で、体を丸めながら発砲音が鳴る度に悲鳴を上げた。

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