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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第六章 王都セントラル編
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88話 真実の影 - それぞれの正義

✪読んでくださり、ありがとうございます。

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謁見の間に、ひときわ鋭い足音が響く。


ルシウス。騎士団副団長として、数々の戦場を越えてきたその男が、父の仇とされる元重臣バルドの前に立ちはだかる。


その隣には、弟のユリウス。兄と同じく剣を携えた騎士。だが、表に出る激情よりも、冷静な観察と判断力で兄を支えてきた男だ。


「バルド・エグゼリア……お前が、父を死に追いやったというのか」


ルシウスの声は低い。だが、その一言に込められた怒りは、空気すら切り裂くほどに鋭い。


父・ヴィクトルは、王の次男として生まれながら、常に民と共にあろうとした優しい王子だった。

その姿を間近に見て育った兄弟にとって、彼の死は未だ癒えぬ傷。


バルドは、その問いに一つも動じず応じる。


「私は、国家の秩序を守るために動いた。それが王家に仕える者の義務だ」


ユリウスがわずかに眉をひそめた。

(秩序の名の下に、真実を捻じ曲げる者の多いこと…)


兄が怒りを露わにする一方で、弟は冷ややかにその言葉を見極めていた。


「秩序のために、父を葬ったと?」


「ヴィクトル殿下は理想に偏り過ぎていた。貴族の信頼も得られず、国を揺るがす危うさがあった」


「それが人を裁く理由になるか!」


ルシウスが声を荒らげる。

部下たちが身構えたその瞬間、ユリウスは一歩前に出て、抑えた声で兄に囁く。


「兄さん、今は証拠を突きつける機をうかがうべきだ。剣を抜けば奴の思う壺だ」


「……わかっている」


ルシウスは一瞬、悔しげに奥歯を噛む。

けれどユリウスの冷静な言葉が、熱くなりすぎた思考を鎮めてくれる。


「父は、誰よりもこの国を想っていた。お前の“正義”は、ただの独善だ。民の声を、剣で封じたに過ぎない!」


ルシウスの目に、宿るのは怒りと信念。

一方で、ユリウスは静かに周囲の動きを観察していた。バルドの背後に控える兵の配置、わずかな視線の動き――不穏な気配が、確かに満ち始めていた。


(……来る)


ユリウスの手が、無意識に剣の柄に伸びる。

そして――バルドの配下の一人が、わずかに剣を抜いた瞬間、ユリウスはすかさず動いた。


「伏せろ、兄さん!」


ユリウスの剣が閃き、敵の斬撃を弾く。

次の瞬間、ルシウスも剣を抜き、間合いを詰めて反撃する。


「バルド……! 父の無念、ここで晴らす!」


兄弟が背中を預け合い、謁見の間に火花が散る。


バルドは一歩退きながら、にやりと笑った。


「……やはり、お前たちはよく似ている。かつてのヴィクトル殿下に」


その言葉に、兄弟の動きが一瞬止まる。

胸を突いたのは、皮肉ではなく、かつて彼らの父が誠実に貫いた“理想”の記憶だった。


「ならば、俺たちは……その理想を、今こそ剣で証明してみせる!」


ルシウスが叫ぶ。

その背後で、ユリウスは静かに頷いた。


(兄さんが前を切り拓くなら、俺はその道を守る盾になる)


ヴィクトルの息子たちは、いま、かつて父が信じた“正義”の真価を、この場で証明しようとしていた――。




ーーー89話へつづく

※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。

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