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私が占い師になった理由。  作者: 月灯
第五章 アルトリア王国編
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57話 周辺地域調査と母の記憶 - 母方の特別な血筋の力

アリアは、体内に流れ込んだ虹色の力に意識を集中させていた。

それは温かい流れのように全身を巡り、これまで感じたことのない確信を彼女の内に呼び覚ます。

瞳に宿る虹色の光は、古の血筋の証。

アルトリア王国で感じ始めた母方の血筋。

幼い頃、母から「あなたには特別な力がある」と聞かされていたアリアは、今、その力が目覚めようとしているのを感じていた。


「…これが、古代の王族の力…そして、お母様が言っていた特別な力…」


アリアは、低い声でつぶやいた。

同時に、心の奥底から、ずっと昔に忘れていた温かい眼差し、優しい声が、突然、鮮やかに蘇ってきた。

母は聖なる血筋の出身でありながら、異国の王族である父と恋に落ち、この国を後にしたのだ。

その決断は、聖なる使命を背負う家系にとって、大きな波紋を呼んだのかもしれない。


「エリオット」


アリアは振り返り、隣に立つエリオットを見つめた。

彼女の瞳に宿る虹色の光は、以前よりも強く、そして温かい。


「この力…この温かい感覚…なぜか、懐かしいの。まるで、ずっと昔忘れていた温かい家に帰ってきたみたい…お母様の故郷…この特別な力…母さんの血筋と何か関係があるのかしら…」


エリオットは、アリアの感じている微妙な感情の変化を注意深く見守っていた。


「アリア様…何か思い出したのですか?」


アリアは深く頷いた。


「うん…。結晶が私の中に入ってきた時…お母様の記憶が…より鮮明になったの。お母様の血筋には、何か特別な力があるみたい…そして、その力は、私にも…」


思いがけない認識に、エリオットはわずかに目を見開いた。


「特別な力、ですか…」


「だから…私は、以前よりも強く思うの。この国を救いたいって。お母様が育った、この特別な力のルーツとなる場所だから」


アリアの声には、強い決意が宿っていた。

それは、古代の力への責任感だけでなく、亡き母への深い愛情と、聖なる血筋を受け継ぐ者としての使命感から来るものだった。


翌朝、アリアとエリオットは、アメリア王妃にさらなる調査の許可を得た。

アリアは、自身の母の血筋がこの国で何か特別な役割を担っていた可能性を王妃に伝えた。王妃は、驚きとともに、過去の回想に浸るような表情を見せた。


「…聖なる血筋…ですか…。あなたの御母上には、幼き頃に何度かお会いした記憶が…。いつも温かく、優しいお方でしたが…」


王妃は、そっと呟き、アリアに深い信頼の眼差しを向けた。


「あなたに宿るその特別な力が、この国を救う力となるのかもしれません。どうか、その力で、この国をお救いください」


王妃の願いを受け、アリアとエリオットは、王都アルトリウムの周辺地域へと調査の範囲を広げる。


最初の村に近づくにつれて、アリアは空気の質の変化に敏感に気づいた。

ミストラル村よりも濃密で、邪悪な怨念が、まるで重い霧のように立ち込めている。

聖なる血を持つアリアは、その邪悪な力をより敏感に感じ取ることができた。


隣を歩くイリスが、苦しげにその体を震わせた。

普段は透き通った虹色の体が、部分的に濁りを帯び、震えは以前よりも激しい。

聖なる力を持つアリアのそばにいることで、イリスもまた、否定的な感情の影響を受けやすくなっているのかもしれない。


「イリス、大丈夫?」


アリアは心配そうにイリスの小さな体を抱き上げた。

イリスは、アリアの温かい光を求めるように、その胸に顔を埋めた。

その温かい力は、古代の怨念に対し、わずかながらも鎮静の効果をもたらしているようだった。


村に足を踏み入れると、その荒廃ぶりは目を覆いたくなるほどだった。

活気はなく、人々の表情は石のように硬く、あちこちから重い咳が聞こえてくる。

聖なる血を持つアリアは、人々の魂に染みついた深い絶望を、強く感じ取った。


エリオットが周囲の魔力に目を凝らしながら言った。


「この辺り、魔力の流れがすごく歪んでます。まるで、じわじわと人を蝕んでるみたいだ」


その時、イリスがアリアの腕からするりと抜け、ゆっくりと前に進み出た。

その小さな体からは、以前よりもはるかに強い黄金の光が放たれ始める。

その光は、苦しそうに顔を歪めていた人々の心に、温もりと希望を届けるように、やわらかく降り注いだ。

光に包まれた人々は、そっと顔を上げ、その祝福された光を見つめていた。


聞き込みによると、異変は数ヶ月前から、じわじわと国全体を蝕んでいた。

それは、アメリア王妃の話とも一致していた。


周辺地域を調査していたアリアは、見慣れない深い青の花を見つけた。

花びらの端に向かって透明になり、中心には金色の粉のようなものが輝いている。

その花を見た瞬間、温かく優しい女性の面影が、アリアの心にじんわりと広がった。


「…忘れな草…」


その声は、春の風のようにアリアの耳元で静かに囁いた。同時に、ここが母の故郷であり、自分のルーツでもあると、改めて実感するのだった。

そして、この聖なる力は、母の血筋と深く関わっているのだろう、とアリアはぼんやりと感じるのだった。


アリアは、手の中の忘れな草を大切に握りしめ、そっと空を見上げた。

遠く離れた故郷の空は、今日、なぜかいつもより温かみのある青に見えた。

母の故郷を救う。

それは、自分の中に流れる聖なる血の使命であり、そして、ずっと忘れていた温かい面影への、アリアの静かな誓いだった。




ーーー58話へつづく

〈登場人物〉

* アリア: 虹色の力に目覚め、聖女の血筋であることを自覚し始めた主人公。

* エリオット: アリアの側近であり、忠実な騎士。

* アメリア王妃: アルトリウム王国の王妃。アリアの母を知る人物。

* イリス: 虹色の鱗を持つ小さな生き物。アリアの力に呼応する。

* 村人たち: 怨念と病に苦しむ周辺地域の住民。

✦✦✦✦✦


※このお話の舞台はヨーロッパ風異世界であり、現実世界の歴史とは一切関わりありません。

作中に出てくる 国・文化・習慣・宗教・風俗・医療・政治等は全てフィクションであり、架空のものです。

あくまで創作上の設定としてお楽しみいただけますと幸いです。


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✪読んでくださり、ありがとうございます。

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