ボーンな集まれ
ナグル族、パックス両方の元を
訪れ、話を聞いたクライドは
魔王城に戻りデグの元へ向かう。
デグはすぐにクライドと会ってくれた。
「デグさん!
ナグル族、パックス両方から
話聞いてきましたよ!
どうやら
カーツ軍とジュード軍から
本当に魔王軍に入れる気があるのかどうか
疑わしいレベルの調子に乗った
ふざけた勧誘だったから
追い返したということですよ!」
「ふむ・・・」
「だから断ったじゃなくって
断らさせられた
というのが正確な表現ですよ!」
罠にはめられたようなものだ。
デグは、机の前に詰め寄ってきた
クライドを制しながら
「たしかにお前の話が真実かもしれぬ。
だがどのような形であれ
魔王様の誘いを断ったというのは事実だ。
それゆえ魔王様のメンツを潰した
ととられても致し方ないのだ」
諦めたかのような表情で
クライドをたしなめる。
そんなぁ・・・・。
自分の任務を進めるのに多大な不都合が
あるというのはもちろんだけど
なによりパックスの衰退した惨状
ナグル族の表には出さなかったが
どことなく漂う停滞感。
このままでは未来が無いというのが
容易に想像できる。
これが見てられない。
沈没していく船を黙ってみるだけ
なんて耐えられない。
今まで散々、ナグル族にも
パックスにもお世話になった。
なんとかできないか?
色々なことを考えながら
クライドは魔王城城下町を
トボトボと歩き、ボニーの家へ向かう。
考え事をしながら歩くクライドの耳に
道の向こうから
ゴアー、ゴアーという騒音が
飛び込んできた。
騒音はだんだんと近づく。
ふと音のほうへ顔を向けると
魔王軍4侯爵の一人
カーツ・シーヴァとその取り巻き達が
いつものように街の人々に声をかけながら
こちらへ歩いてきていた。
まるで図ったかのようなタイミングだな。
そして相変わらずうるさくて偉そうだな。
なんて心の中で悪態をつきながら
かといって道を変えるのは癪だから
そのまま
まっすぐクライドは歩き続ける。
双方の距離が近づいた時
カーツ側もクライドの存在に気が付いた。
これだけ距離が近づかないと
敵対する相手に気が付かないなんて
平時で一応の味方とはいえ
索敵能力低すぎだろう。
俺一切悪意隠してないし。
などと心の中で悪態をついていると
カーツがクライドをジロリと睨み
「こざかしい雑魚どもがチョロチョロと
うっとうしいわ。これで少しは
静かになるかの!」
と吠える。
ナグル族とパックスの件だ。
おそらくカーツとジュードが示し合わせた
罠だったということだろう。
策でした。って聞かれてもないのに
自分でゲロってどうすんだよ。
策は秘中。手中にあればこそ。
策は策を使ったことすらばれちゃ
ダメなんだ。最後まで秘密にしなきゃ
ダメなんだ。
というのは、ゴロムからのアドバイスだ。
"混沌者"に教わったらしい。
策の神髄。その通りだと思うよ。
それを、このクソ爬虫類野郎のバカ野郎は
自分でゲロってんだもん。
三流以下だこのバカ。
心の中で言い返すが、口に出さず
沈黙しているクライドに向かい
カーツの取り巻きの中の一人
蝙蝠の羽がはえた男。―カジー―
がカーツに追従するように
クライドに向かい
「魔王様のありがたいお申し出を
あの亜人共は全然理解せぬ愚か者よ
この状況は当然の結果よ」
と追い打ちをかける。
カジーの得意満面な顔を見て
クライドはふと
「え、君、パックスでボコられただけ
じゃん。なんでそんなに偉そうなの?」
と言い返す。
「「ボコられた!?」」
カーツの取り巻き連中は驚いた顔をして
カジーの見つめる。
周囲の目線を感じながらカジーは
焦った口調で
「あ、亜人ども、カーツ様のご威光を
思い知るがいい」
「まぁそれは良いけどボコられたよね?」
「あ、亜人のような雑魚どもが魔王様の
お申し出を断るなど言語どうだん・・」
「でも、その雑魚にボコられたよね?」
「あ、あのような
野蛮な者どもに言葉など通じぬ」
「言葉が分かったうえで怒りを買って
ボコられたよね?」
「あのような
雑魚亜人共は滅びてしまえ!」
「ただのボコられた私怨ですよね?」
「あ、う、、あ・・・」
カーツの取り巻き連中のカジーに
向けられる目線が次第に冷ややかな物に
なっていく。
と
「もう良い!カジー!」
とカーツが吠える。
カジーはしゅんとして
後ろに引っ込む。
カーツは後ろに下がったカジーをチラリと
見た後、すぐさまクライドのほうへ
向き直り
忌々し気な表情でギロリと睨みつけ
「骨!キサマのくだらん工作など
不要よ、ぐははははは」
と立ち去っていった。
なんだあれ。
■
ボニーの家に戻ると
「魔王城から知らせだよ。
ローアーク以上は全員火急登城せよ。
だってさ。
火急って何?あとさ
クライドってローアークだっけ?」
第7位階、第6位階をローアーク。
第5位階、第4位階、第3位階を
ミドルアーク
第2位階、第1位階をハイアーク
と呼ぶ。
クライドは、第6位階だから
ローアーク。
そして
火急とは、緊急よりもさらに
急いでといいうこと、
すごく急いで、という意味。
つまり
魔王の命令はローアーク以上は
速攻であつまれ。
「そうだよ、ローアークだよ。
って行かなきゃいけねーじゃん!」
とクライドは慌てて飛び出していった。




