両者の言いボーン
魔王様からナグル族とパックスへ
仕事を依頼してはならない。
というお触れが出た。
ナグル族とパックスを干すということだ。
どうしてだ、そんなことされたら
自分は片手をもがれたも同然だ。
幸いイコン族は干されてないから
情報収集や以前から行っている
魔王様をお守りするための
魔王様周辺の結界と情報は入ってくる。
だがやはり、イコン族だけでは
決め手に欠ける。
荒い仕事をこなせるナグルとパックスが
使えないのは痛い。
なぜだ?
周りに頼るな。
自らの力を使え。
という魔王様からの戒めか?
それとも?
クライドは急ぎ魔王城に登城し
デグへと謁見を求めた。
案内がくるまでの間ぼんやりと考える。
魔王様どうしちゃったんだろう。
何があったんだろう。
今、俺は魔王軍正規兵、位階持ち。
改めて考えれば随分出世した。
「骨!キサマを御庭番に任命する!」
魔王様から初めて仕事を
任されたころと比べれば圧倒的な出世だ。
魔王軍の他の連中からの目線や
対応も昔に比べれば圧倒的に変わった。
御庭番の頃は雑用として
適当に扱われることも多かったが
今や、魔王軍の幹部様扱いだ。
だが、魔王様とのつながりは
薄くなってしまった気がする。
今は魔王様が何を考えているのか
何を狙っているのか全くわからない。
いやまぁ、そもそも魔王様が何を考え
何を狙ってるのかよくわかんないことの
ほうが多いけど、やっぱり顔合わせてると
なんとなくわかった気になれたんだ。
だけど今はどうだ・・・。
なぜナグル族とパックスに仕事依頼
しちゃダメなんだ・・・。
クライドが考え事をしていると
やがてデグの部屋へ案内が来た。
デグの部屋へ入ると、いつもと変わらず
堂々と椅子に座ったデグがクライドを
迎える。
デグさん全然焦ってないな。
「パックスとナグル族の件であろう?
正直私も困っておる。
私自身の任務をこなすのに
激しい滞りが出ている。
私もラ・モンド様にお伺いしようと
思っておったのだが
ラ・モンド様は不在なのだ」
デグさん冷静な顔してるけど焦ってんだ。
ラ・モンド様がいないと詳しいことは
わからないようだが、それでも
デグが分かってる範囲で状況を
知りたい。
「なんで急にナグル族とパックスを
使っちゃダメってなったんですか?」
「うむ、詳しくはわからんのだが
両者は魔王軍入りの誘いを断った
らしい。それが原因だと」
「魔王軍入り?」
今まで散々非公式、下請け扱い
しといて、急になんで?
「そうだ。
カーツ様とジュード様が魔王様に
献策したそうだ。
この二つの集団は優秀ゆえに
一介の兵に活用させるのではなく
魔王軍直属として魔王軍全体で
効果的に活用すべきだ。
とな」
一介の兵ってデグさんや俺のことか?
他にもパックスやナグル族に依頼する
魔王軍正規兵達のことか?
というか、そもそも
なんで
クソ爬虫類野郎とクソアンデット野郎の
二人がそんなことを?
困った顔をして沈黙するデグに
これ以上情報は持っていなさそうだと
感じたクライドは、デグに礼を言い
退出した。
待っててもラチあかない。
もうナグルとパックスに
直接聞きに行こう!
任務で使ってはならないという
命令は出てるけど
会っちゃならないという命令は
出てないもんな!
■
まずはナグル族へ向かう。
ナグル族の屋敷を尋ねると
すぐにナグル族当主、ワズム・ナグルが
会ってくれた。
「よう来た!クライド殿!
我々が困っているところ
危険も顧みず
何も言わずとも訪れてくれるとは!
まことに感謝じゃ!!」
相変わらず俺に対する勘違いは
激しいけど、魔王軍に干されて
困っているのは間違いないらしい。
「いったい何があったんですか?
隠し立てなしで詳しく教えてください」
「うむ。ある日突然、何の連絡も無しに
ジュード軍のベルザとかいう
ハイアンデットがきたんじゃ」
「ベルザ!ベルザ・アーク!」
クライドの顔が蒼白になる。
「そうじゃ。魔王軍では名が知られて
おるのかの?でじゃ。
奴と我々は初対面であるのじゃが
態度が非常に高圧的でな。
魔王軍からわざわざ来てやったんだ。
と言わんばかりでな。
しかも我々を一瞥して
こんな一団など私の手一振りで
消し飛ばせるがな、的な
発言をしおった。
実力を読む限り、確かにそうかもしれん。
だが、それを口に出すのはどうか?
という話じゃ!!」
「たしかに高圧的でしょうけども・・・」
「もちろんそれだけが理由ではないぞ!
それで魔王軍とことを荒立てるほど
我々は愚かではない。
そうではなく
こやつが以前シーノ殿に執着しておった
ハイアンデットではないかと
直感したのじゃ。
それはもはや敵じゃ!
だから追い返してやったのよ!
去り際にニヤリと笑いおったのが
また気に食わぬ!!!」
ベルザ・アーク。
何を企んでいるんだ。
険しい顔を崩さないクライドに
「我々はイコンのおかげで人間との
取引があり、財政的にはどうにかなるが
魔王軍の魔物が一切よりつかなくなって
しまい、色々仕事にも支障がでつつある。
だがもっと悲惨なのはパックスよ。
クライド殿、お主パックスと
つながりがあったと思うが
パックスへはもう行ったか?」
「いえ、この後向かうつもりでおります」
「そうか、すまぬがパックスも
行ってやってくれ!」
■
ナグル族の屋敷を後にし
クライドはすぐさまパックスの砦へと
向かった。
パックスの連中は、相変わらず
いるのだが、活気がまったくない。
悲壮感が漂う。そんな雰囲気だ。
クライドが砦に到着すると
すぐにシックスの元へと通された。
部屋に入ると厳しい顔をした
シックスとワンがいた。
ワンはもう余裕で大将の代理人が
できるな。
なんて思いながらふと気になったことを
言う。
「あれ?大将、ゴロムは?」
「あぁ、ゴロムは任務でおらん」
またかよ。
とことんめぐりあわせ悪いな。
なんてことを考えていると
シックスが
「クライド、心配かけてすまんな」
と頭を下げる。
「大将、いったい何があった?
隠し立てなしで詳しく教えてくれ」
「うむ」
そして憤った表情をした
シックスが事の顛末を語りだした。
「わしらのところに魔王軍からの使い
といってカジーとかいう
蝙蝠の羽が生えた魔族がきたんだ。
非情に高圧的でな我々魔王軍に
入れるのだから泣いて喜べとな。
カーツ軍団だそうでな。
ワシらは、カーツ軍にあまり良い
感情を抱いておらん。
奴らはワシらを雑魚呼ばわりするのでな」
確かに以前から大将はクソ爬虫類野郎
に対してあんまり良い印象の発言は
してなかったな。
「そんな中で、高圧的な態度だからな。
ウチの連中も切れちまってな」
そういや、クソ爬虫類野郎やシェイ含めた
一部の連中の実力はとんでもねーけど
カジーの野郎の実力は
それほどでもなかったかな。
「あのやろー、よえーくせによー。
イキリ腐るからボコボコにしてやったぜ」
ワンが声をあげる。
それに続くようにシックスも
「おうよ!わしも頭きたから
ボコボコにして追い返してやったわい」
と続く。
大将・・・・。
部下の暴発に目をつぶるまでは
ギリだけど、自分も一緒になったら
アカンやん・・・・。
ワズムさんは大人やったで・・・・。
まぁ気持ちはわかるけどさ。




