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骨内政

「ふむ、順調であるな」


魔王城、魔王庭園。

クライドが魔王と謁見する場所だ。


ナグル族とパックスの連携を密に

取りながら、任務を行う。



任務はバッチリ成功している。


ナグル族との連携はジュニ・ナグルが。

パックスとの連携はワンが。


連携し始めは、ジュニがやや劣る面を

見せたがワンのやり方や内容を

説明することで次第に問題なく

連携を取ることが可能になった。


今やクライドは、どこにいても

この任務の状況が手に取るようにわかる。

そんな状態だ。


後は、逐次魔王へ報告すれば良い。



報酬や期限や経費など細かい話は

最初はごたついたが

大将が色々と見繕ってくれた

おかげで今や順調に回ってる。


驚いたことは

魔王様は、報酬に関しては相手の言い値で

構わないと言うんだ。


太っ腹だよなーって大将に嫌味言ったら


「バカヤロウ、魔王様はその金額の提案で

俺たちが誠実か否かや実力を多角的に

計ってるんだよ」


なんて怒られた。

真実は魔王様のみぞ知る。

なんだけど

短い時間だけど、魔王様と接して

思うに

太っ腹説よりも、大将の言う計ってる説

のほうが濃厚だよななんて思う。






「報告は以上か」


「はっ!このまま順当にいけばいずれ

成功いたします」




「うむ、では次の任務だ」



来た!

クライドは気をさらに引き締めて

次の命令に耳を傾ける。


魔王は頭巾の下の表情をニヤリと

ゆがませ


「逃げるなよ?骨」


と、さも楽しいことを告げるかのような

声色を出す。


クライドは、ますます気を引き締める。


「次の任務は

我が城の執務室で、収支計算を手伝え」



「え?」


「執務室の責任者に話は通してある。

詳しくはそこで聞け」



「え?え?それってガチの雑用?」


「そうとも言う」



「いや、隠し諜報員としては・・・」


「いいからやれ」


「でも、ナグル族とかの連携とか・・」


「さっさとやれ」


「ザンビエやらのご機嫌伺いとか・・・」


「はよやれ」


「いや、でも、だって・・・」


「お庭番として本当に雑用もやらせる。

と言ったよな」


「ハイ」


「じゃあ黙ってやれ」


「ハイ」






魔王城執務室。


ここでは、戦闘力はあまりないが

知力が高いとされる魔物達が

魔王軍運営のための様々な雑務処理を

行っている。


その一角にいた一人の魔物が

執務室入口に立つクライドの姿を見ると

ツカツカと歩み寄ってきた。


「クライド・スケルターじゃな。

魔王様から話は聞いておる」


クライドの目の前に立つ魔物。

第一印象は

濃い髭をたくわえた小柄なおっさんだ。


その魔物の姿を見たクライドは

大きな違和感を感じる。


濃い髭で小柄。


ドワーフ。


ドワーフは、頑強な体と器用な手先を

持つ種族だ。


頭が悪い種族とは言わないが

どちらかと言えば種族の特性を生かして

体を動かしたり手先を動かす系の

役割を担うことが多い。


ゆえに、頑強さや器用さとは無関係の

執務をドワーフが行うことに

違和感があるのだ。


「なんじゃその顔は?ドワーフが

内政や財政を行うことが変かね?」


「い、いえ、どなたをお尋ねすれば

よかったかわからなかったものですから」


「そんな基本的なことも確認を怠った

のか。まぁ良い。

ワシはヨーム・タスク。

魔王軍の財政面の一部を担当しておる」


ヨーム・タスク。

この短い時間だが口うるさい

印象を受けるドワーフだ。


ヨームはじろじろとクライドを

上から下までなめるように見つめ


「苦労知らん顔しとる」


と忌々し気につぶやいた。


骨見て苦労してるかしてないか

わかんのかコノヤロー。


そもそも俺の何を知ってんだ

コノヤロー。


初対面早々嫌味かコノヤロー。


など言いたいことはたくさんある

クライドであったが


「はっ、よろしくお願いいたします」


と頭を下げた。



「作業はこっちでやってもらう」


と執務室の一角へ連れていかれる。


その一角、数人の魔物が机に座り

紙に何か書きながら算盤をはじいている。

何か計算をしているのであろう。



あ、そうかパソコンとか計算機とか

無いんだ。。。



クライドがヨームに連れられて

作業している魔物達のそばにくると

魔物達は各々顔をあげ


「よろしく~」

「あ、新人さん?よろしく~」

「頑張ろうね」


と笑顔で口々に挨拶をする。


魔物っておっかない、常に戦闘態勢って

イメージが基本あるけど仲間と

受け入れるとすごくフレンドリー

なんだよなー。

ここの魔物達って戦闘要員じゃないから

特に、フレンドリーだなー。


なんて考えていると



「何を手を休めておるのじゃ!

仕事はまだまだあろうが!!」


とヨームがしっ責する。


すると、今までにこやかだった

魔物達は急にシュンとし、下を向き

黙々と仕事に向かいだした。



「この部署は魔王軍の面々が使った

費用を日々計算し項目ごとに仕分け

しておる。

支出は毎日ある。ゆえに休む間など

無いのだ。クライド、お主は算盤

できるか?」


算盤・・・・

小学生以来触ったことないわ。。。

サラリーマンになったら

そんな計算全部パソコンだし。。。


「いえ、ほとんど

触ったことはありません」


「そうか、ならば他の者の手伝いをせい」




魔王城執務室、魔王軍の日々の支出を

集計する部署。


あっという間、ほんとにあっという間に

時間は過ぎ去る。


猛烈な勢いで仕事がクライドの前に

舞い込む。

出来るとか出来ないとか言ってる

場合じゃない勢いと分量で。


「ハイ、これお願いします」


「ハイ、じゃこっちのチェックを」


「ここの計算が間違っておる!

やり直し!」


「ハイ、じゃこっちも検印を」


「ハイ、じゃこれをお願いします」


「違う、何度言えばわかるのじゃ

カーツ軍の飲み食いは補給費ではなく

逸失、ロスト、被害扱いじゃ!」


「ハイ、じゃこっちの修正お願い」


「クライド!少しは役に立たんか!」


みんなよく働いてると思うんだけど

ヨームのしっ責は止まらない。


と、そこへゴーンという鐘の音が鳴る。

休憩の合図だ。



うーんと背伸びする者、

何かを飲む者、

隣の席と話し始める者。

各々が休憩に入る。

クライドの周りは

ヨームを除き続々と執務室の外へ

出ていく。

このままだとクライドとヨームの

二人きりになって気まずいので

クライドもあわてて、

みなの後に続き執務室の外へ。



「みなさん、お疲れ様です」


クライドは同僚のもとへと近づく。



「あ、クライドさん、お疲れー」

「おつかれーす」

「おつかれさまー」



クライドに対して

みんな和やかに返事をしてくれる。


殺伐としてるのは、ヨームくらいか。


ヨームってどんなイヤな奴なのか

気になるわー。

あまりにもひどい奴だったら

魔王軍の内政業務に滞りを起こすから

排除せないかんやん。


あ!もしかして魔王様、雑務と言いながら

ヨーム・タスクのひどい噂を耳にして

どうするか俺に調べさせようと

してる!?


たしかに

あまりにひどいなら隠し諜報員として

魔王様に報告する義務がある。


ということで、他の魔物に色々と

聞いてみることにした。




「ヨームさんっていつもあんな感じ

ですか?」



「そうよ、だいたいあんな感じ。

今日は締め切りとか無いからまだまし

かな?すごい時はもっとすごいよぉ」


と魔物の一人が笑いながら話す。



「ヨームさんってドワーフですよね?」


魔物の一人がなんとも言えない

表情で


「そうよ。なんでドワーフなのに

場違いな頭脳労働してるんだ?

って話でしょ?」


と答える。

クライドは、あ、この表情

おばさんがご近所の噂話するときの表情だ

なんて考えながら


「そこまでは、アレですけど、まぁ」


と答えると


「なんでも体が弱いらしくて

普通のドワーフレベルの戦闘力とか

無理で、それで今の仕事してるのよ。

それで魔王軍のほんの一部だけど

戦闘員たちから馬鹿にされててね。

あいつはドワーフのくせに戦場に

出ない臆病者だって」



一部の戦闘員ってとこで

爬虫類野郎とその取り巻きが頭を

よぎる。

アイツらなら言いそう。


「それは、かわいそうですね」


とクライドが言うと


「そんなことないわよぉ

その馬鹿にされた恨みを仕事で

私たちに当たり散らして

発散してるんだから」


戦闘力が低いドワーフが内政で

頑張ってるという点は何ら問題ないけど

それで馬鹿にされて周りに

当たり散らして作業効率が落ちるのは

ダメだよなぁ・・・


なんて考えるクライド。


そんなことを考えていると

再びゴーンと鐘の音が鳴る。


休憩終了の合図だ。


みな再び執務室へと戻っていく。




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