骨よ大志を抱け
「いや、こういうことは私の独断では
できかねますし、それに持ちあわせも
ございませんので」
ジロリ、殺気にも似た空気で
ガーチェがクライドを見つめる。
「良いのでおじゃか?
本当に良いのでおじゃか?
別に麿たちは、ウラー家から支援を
受けぬでも構わんのだぞ?」
きた。
値上げ要求は毎度のことながら
今回は手を切るということを
言い出したとケイが言っていた。
手を切ると言い出せる理由として
考えられるのは
まず一番が、単なるハッタリ。
しかし今まで言わなかったのに急に
言い出したということは
このケースでは無い。もしくは
ハッタリしなければならないほど
経済的に苦しい。どちらかだ。
そういえば、支援のお金って
何に使ってるんだろ?
決して少なくない金額だぜ?
「ウラー家からの支援を受けずに
どうするのですか?
もうお金は不要になったということ
ですか?っていうか今まで何に
使ってきたんですか?
今回の金額だけでもこの家から
他へ簡単に引っ越しできるでしょうに」
何に使っているのか?という問いに
ガーチェが一瞬苦しそうな顔をしたのを
クライドは見逃さなかった。
「もらった金の使い道は麿達の勝手で
おじゃ。使いっぱしりに
とやかく言われる筋合いは無いでおじゃ!
ケイは麿達と手を切っても良い
ということでおじゃね?」
強気で手を切ると言える理由
一番ありえるのが他に支援するという
相手がいること。
「どちらから支援のお約束をいただけ
そうなんですか?」
「使いっぱしりに言う必要は無いで
おじゃ!」
「使いっぱしりではありませんよ?
代理人ですよ。
それもケイの側の者というわけでは
ありません。
私があなたを見くびったように
あなたも私を見くびってる」
「どういうことでおじゃ」
「こう見えて各国の情報に
多少通じてる者でしてね。
どこからの支援なのか分かれば
それが正しいかどうか?
良い話かどうか、僭越ながら
ご意見述べさせていただけるかと。
正直、私は別にウラー家に
こだわる必要は無いと思いますから」
半分嘘だ。
少しくらいは各国の情勢を知ってるが
別に通じてない。
正しいか良い話かの判断なんて出来ない。
しかし
ウラー家から支援を受けなければ
ならないと思ってないのは本当だ。
俺の目的は、リュウと顔をつなぐこと
だからだ。
「ドーガ家でおじゃ」
ドーガ家!現在魔王軍と交戦中の
相手じゃん。まずくね?
「ドーガ家のどなたと
お話されたんですか?
当主セコン・ドーガ?それとも
貴族3人衆の誰か?
どなたの代理人でしたか?」
ガーチェが驚いたような顔をして
「詳しいんでおじゃね!」
まぁ敵対してるからね。
しかし少しは信用されたようだ。
「ドーガ家の者と名乗ったから
当主と思われるでおじゃよ」
「その代理人、どんな風貌でしたか?」
「風貌、見た目は、青い顔した男
だったでおじゃ。
人間では無いでおじゃね。
ドーガ家は魔王軍と敵対中だから
魔物と手を組んで戦力増強させてる
という噂は本当でおじゃね。
しかし魔物と言えども
態度や作法は感心するレベルで
あったでおじゃ。
貴公よりも礼儀作法がなってたで
おじゃよ?」
やかましいわ。
それよりも青い顔!!!
高位不死者だ。
ドーガ家にハイアンデットはいない。
そもそもハイアンデットは
俺が知る限り、魔王軍にしかいない。
ジュード・アークとその連中。
何を企んでいる・・・・。
クライドの表情が険しく一変した
ことでガーチェが反応する。
「ま、まずいでおじゃか?
い、いや違うでおじゃ。
麿にドーガ家と手を組んでほしくない
からそんな演技してるでおじゃね!
だまされないでおじゃよ!」
ありえない。
ドーガ家を名乗るジュードが
リュウと良い関係を築こうとしてるとは
思えない。
なぜなら、
そもそもジュードが信頼に値しないという
個人的な思いは別として。
そもそも、
なぜドーガ家を名乗ったのか?
何を企んでいるのか?
もう一つは
魔王様は、人間とある程度の融和路線
で行こうとしている。
(逆らう者は容赦なく抹殺であるが)
に対して魔王軍幹部を含めたほとんどの
魔物達は人間と融和する気はあまりない。
ジュードに至っては人間への完全なる支配
と徹底殲滅の強硬路線だ。
リュウと手を組むなんてありえない。
奴らにとってリュウ家を復興させる
ことなんてメリットが無い。
この話、ガーチェから見ても
ケイから見ても、魔王様から見ても
俺から見ても誰も得しない。
そもそも本当に支援金を出すのかどうか
すら怪しい。
「な、なんでおじゃ?
黙って脅す演技でおじゃか?
ともかく麿にはお金が必要でおじゃ!
向こうはケイの倍額出すと言ってるんで
おじゃ!それと同等かもっともらわねば
ダメでおじゃ!!」
「良いのか?」
「な、何がでおじゃ・・・」
「あんたの本来の目的はリュウの復興
ではないのか?
それが目的ではないのか?
目先の金に目がくらんでその大きな志を
失っても良いのか?」
「う、う・・・」
じっとガーチェの瞳を見つめながら
問う。
「そ、そんなこと無いでおじゃ!
金がすべてでおじゃ!」
「ならばなぜ話が来た段階ですぐに
そっちに行かない?
もっと言えば、なぜウラー家、ドーガ家
両方から受け取ろうとしない?」
「あんたも何かきな臭いとうすうす
気が付いてるんじゃないのか?
それで何とかケイからの金額が
増やせないかとしてるんじゃないのか?」
クライドは、ズイッとガーチェに
近づく。
「あんたが一見、金に汚いと
人に言われるような態度をとるのは
志のためではないのか?
その志を捨てるのか?」
ガーチェは唇をわなわなと震わせながら
「そんなことわかってるでおじゃ!
でも食えないのじゃ。
麿の肩には多くの麿に使える者たちの
生活がかかっておるのじゃ!
貴公に何がわかるのじゃ!
どんなことを言ったところで
貴公も麿達の思いを夢物語とあざ笑う
が良いでおじゃ!!」
心なしか涙ぐんでいるようにも見える。
どこも一緒だ。
エイトさん、ワズムさん
シックスの大将。
ケイ、そしてガーチェのおっさん。
人の上に立つってそういうことだ。
大将の言葉を借りれば
みんなを食わせなきゃならねぇ。
好きだぜ、そういうなりふり構わないの。
「ガーチェのおっさんよぉ。
他の誰かが、あんたの態度や志を笑っても
俺は笑わない。
俺にだって大志がある。
だから俺はあんたの志を笑わない。
だけど
その志を捨てるというなら
俺はあんたを蔑む」
驚いた顔をしたガーチェが顔を上げ
じっとクライドを見つめる。
「考えてもみなよ
単に金よこせって言っても
ハイそうですねなんてならねーよ。
ケイは商人だからね。
ガーチェのおっさんが譲れないことが
あるように、ケイにも譲れないことが
あるんだ」
「じゃあ、どうすれば良いでおじゃ」
まるで駄々っ子のように
ふくれっ面でガーチェがつぶやく。
「ケイにとって何かメリットを
提供してやれば良いのさ」
「提供なんて麿には何も無いでおじゃ」
はぶてたおっさんがソコにいる。
「例えばさ
リュウの名をケイの軍隊に与える
なんてどうだい?
ケイが抱えてる軍隊はしょせん金で
雇われた身分無き者だ。
そこにアンタがお墨付きを与えるのさ。
それ以外にもいろいろできると思うぜ。
アンタ達は独自の情報交換ネットワークを
持ってないか?多分あるだろう?
その中でケイに役立ちそうな情報を
渡すのさ。情報は馬鹿にはできないぜ」
「それで、それがお金を増やすに
値することでおじゃか?」
「正確にはわからねぇ。
でも、何かを提供するキモチは
あるってことを伝えられれば
ただ、金くれ、金くれって言うよりは
印象違うぜ」
「仮にダメでも少なくとも
ドーガに移り変わるよりましだぜ。
どうだい?ケイに相談してみては?
俺、少しはケイに口きけるからさ。
商人ってのは儲かる話は
ちゃんと聞く耳もつんだから」
うん、うんと何度もうなずく
ガーチェ・ノアであった。
しかし
ガーチェのおっさん
さっきから
金の入った袋から手、離さねーな。




