骨取引
クライドはザンビエへ到着した。
ウラー家の屋敷はもうわかっている。
しかしいつみても活気あふれる大きな屋敷だ。
前に訪れた時よりも
さらに活気が増してるんじゃないかと思う。
「こんちわ。
クライドです。ケイさんいますか?」
ウラー家の商店を兼ねる入口を入り
ケイを訪ねる。
「毎度おおきに!
お待ちしておりました。こちらへどうぞ」
あっさりと通される。
前はあんなに苦労したのにね。
そういえば
あのいやらしいバントーの男の姿が見えないな。
見かけたらちょっと脅しつけてやろうかと
思ってなんだけど。
「こちらへ」
客間へと通される。
調度品など豪華な客間だ。
俺はVIPといったところか?
ほんと前と対応全然違うね。
商人だけに現金な奴ってか?
あれこれと考えを巡らせていると
ケイがやってきた。
「ようこそ、ご足労おかけしますぅ」
商人らしい態度で深々と頭を下げる。
ケイが以前言ってたな
商人が深々と頭を下げるのは
表情を見せないようにして
何か企んでるから油断したらあかんで
って。
ケイは何を企んでるのかな?
などと考えながら
「いえ、私もケイさんに要件があったから構いませんよ」
「そりゃ、おおきに」
「なんか、イコン族以外にもナグル族にも
仕事をいただけているそうで」
「あぁ、隊商警護の。
せやね、ほんま助かってる」
「役に立ってるなら良いんですけど
それにしても魔物にまかせて良いんですか?
隊商警護って人間、冒険者の専売特許だと思うんだけど」
「あぁ、構いやしまへん。
冒険者達はより大きい報酬とより大きな経験
目当てでギリギリの任務を受けたがるんです。
それじゃ成功確率が悪くてね。
こっちは冒険者の成長よりも自分トコの荷物のほうが
重要ですやろ?
せやから確実に任務をこなしてくれるナグル族で良いんです」
「それなら良いんですけど魔物にまかせて平気なんですか?」
「そりゃ周りからは羊の群れを狼に番させるようなもんって
よーけ言われましたわ。誰もやりたがらない」
「そうでしょーね。
まぁ冒険者と魔物どっちが狼か?って言われれば
それはそれで微妙な話ですけど」
「あはははっ、そうやね。
それに商売は誰もやりたがらないところに商機あり。
商売とは究極賭けですわ。
そこに爆発する何かがあるんですわ」
「商売の爆発・・・」
商人というと商売をする人、こざかしい人
というイメージを勝手にもってたけど、
このクラスになると歴戦の勇士並みだな。
「まぁやりすぎたり、見極めしそこなって
爆死するやつもよーけいますけどね」
ニヤリと笑うケイ。
「なるほどね、ところで気が付いてると思うけど
俺も魔物ですよ?」
一応念のために言っておく
これから様々な交流を持つのに魔物って気が付いて無かったら
後々面倒だからね。
ケイは懐から何か紙を取り出し読み上げる
「クライド the スケルター。
諜報魔族イコン族で下働きをし
特殊工作軍パックスで頭角をあらわす。
ドーガ家と魔王軍との戦において功をなし
魔王軍に入る。
しかしながら層が厚い魔王軍において
軍採用にならず雑用係となり現在に至る」
「よく調べてるね」
ちょっと違うけどな。
クライドの経歴らしきものが書いてあると
思われる紙を懐にしまいながら
「取引する可能性がある
相手の情報を集めないでどないするんですか?
いくら危ない橋を渡るのが商売と言ったって
調査ぐらいやりますわ」
魔物とわかってるどころか
そこまでわかってるなら話が早い。
「なら話が早いですね。
私はザンビエ5人の情報が欲しいんです。
魔王軍の財務系の人らから頼まれましてね。
雑用係のつらいトコですよ」
「良いでっしゃろ。
せやけどタダというわけにはいきまへんで。
私らも情報の価値は知ってますから。
取引だす。
商人は損することはしまへん」
うーんやっぱり簡単にはいかないか。
「取引できるかどうかわからないけど
こっちはザンビエの情報が欲しい。
そちらの言い分は何?」
「何、あんさんなら簡単なことだす。
魔王軍におけるのあんさんの役割を
教えてもらいま」
なかなか鋭いねこの人と思いながら
さらりとはぐらかす。
「役割?調べがついてる通りですよ?
魔王軍雑用係。これで取引になるんですか?
つまらないから取引不成立とか勘弁してくださいよ?」
「とぼけたらあきまへんえ?
なんで一介の雑用係が
ザンビエ5人衆の情報を知りたがるんでっか?
なんで一介の雑用係が
イコン族を動かせるんでっか?
なんで一介の雑用係が
魔王直属なんでっか?」
お、ひっかかってくるね。
全部言い逃れできるんだけどね
ザンビエの情報調べて来いって雑用って言えるし
イコン族のシーノさまにすごい世話になってて
その関係でシーノさまの兄であるエイトさんと関係性が深い
って言えるし
雑用係は魔王直轄ですよって言えるし。
しかし、まてよ。。。。
今の任務はザンビエと顔つなぎ。
つまり魔王軍とザンビエをつなげば良いんだけど
俺自身とザンビエは特別につながっちゃならないなんて
制限は無いよな。
ということは、ここで誤魔化すよりも
正直に全部教えて、特別な関係を構築したほうが吉だ。
「さすが、良い目利きですねケイさん。
そうです俺は魔王軍極秘諜報員です。
魔王様と直接対話できる存在です。
雑用係という身分は表向きです。
魔王軍内部ですら、俺の正確な立場を知ってる
者は幹部クラスでもそういません」
「やっぱり!」
ケイは、はたと自分の膝を叩く。
ここで間髪いれずにクライドは
「先ほどの調査事項で、弱いから戦闘要員になれなかった
的な事項がありましたけど
諜報員だからといって戦闘力が無いわけではありませんよ?
忍びこんで
人一人二人の暗殺任務くらいは行えますからね」
ケイはニヤリと笑い
「分かってます。
あんさんの立場は誰にも漏らしません。
そない怖い脅しせんといて。いけずやわぁ。
取引成立や!全部教えてあげましょ!」
「え?良いの?」
脅しが効いたのか効いてないのかわからないけど
なんかうまくいった?
「もちろん!
あんさんに賭けようじゃないか!」
「ホントに良いの?」
「言いましたやろ?商売は究極賭けやて。
あんさんに賭けましょ」
極秘諜報員です。キリッ。
ばらしたら殺ります。キリッ。
ってかっこつけたけど
ここまで自分のこと買われると
ちょっと気が引ける。
「だ、大丈夫っすか?」
「大丈夫。
あたしは賭けに負けたことがない。
じゃあ、まずはザンビエ5人の話をしましょか。
他のことも追々包み隠さず教えたげます」
「ありがとう!」
「規模が大きい順番に説明しましょかね。
まずは、ザンビエ5人衆筆頭。
アリ・マイト。
ザンビエ5人衆の中で一番規模が大きい
トコですわ。この人の性格としては
一見、人当たり良く感じるが腹黒い人でおま。
次は
あたし、ケイ・ウラー。
規模は自慢じゃありませんが、No2なんですよ。
人となりは、あんさんにおまかせします。
三人目は
ヨハン・ロー。
真面目一徹。誠実という言葉がよく似合うお人でんな。
悪く言えば融通が利かない。あと腹黒い人でおま。
四人目は
オウ・キーニ
とにかくケチ。人の使う金ももったいないというくらい
筋金入りのケチ。あと腹黒い人でおま。
最後五人目は
モウカ・リマカー
非常に軽妙洒脱なお人でよーけしゃべります。
ですが攻撃的ともいえまんな。あと腹黒い人でおま。
五人衆はこんなとこでんな」
腹黒くないやついないのかよ。
「ザンビエの他の情報は追々教えてあげましょ。
知りたいことがあれば気軽に聞いておくれやし」
「ありがとう!
じゃあお言葉に甘えて一つ聞きたいんだけど
ザンビエにはあんまり関係ない話で
ケイはリュウと知り合いかい?」
ケイはリュウという言葉が聞こえた瞬間
パッと明るい顔になった。
「あぁ、リュウの一人とは知り合いですわ。
いやー奇遇やわぁ、今回あんさん呼んだ
要件が、そのリュウ絡みなんですわ。
そうでっかー、あんさんザンビエ以外にも
リュウとも顔つなぎたいんですなー」
今までで一番ニヤリとした顔をクライドへ向ける。
クライドは思わずブルッと身震いしてしまう。
「ほな、あんさんに仕事の依頼や。
リュウの一つ、ノア家という家があるんです。
そこにお金届けておくなまし。
簡単なおつかいですやろ?」
「え?そんな簡単で良いの?」
お金届けるくらいどーってことないんだけど。
物騒な世の中って言っても
一般的な強盗レベルなら今のクライドにとって
どうという相手ではないし。
「そう。簡単なことですやろ?」
「うん、まぁ、でも何でお金持っていくんだい?」
何かいやな予感がしてクライドが尋ねる。
「ウラー家は代々ノア家に資金援助してるんですわ。
もしも何かあった時、リュウの一族の名前は大義名分に
なるからね。
でもね、あいつらごっつい金にがめついんだよ。
人の顔見れば、資金増やせ、損はさせないと二言目には
言うんだ。そもそも得なんかしたことないからね。
あんさんと違ってあいつら、商売のしの字も知らない。
人にたかるばっかりで。だからいやなんだよ。
今回も要求がしつこくてね。
しかも今回は資金を増やさないとウチと手を切るとか
ふざけたこと言ってんのさ。
でもウチとしては、これ以上金額あげるのは嫌でね!
なので、この金額で納得させてきて。
簡単でっしゃろ?
あんさんは、ちょっとお金届けるだけで
リュウと顔がつなげて、ウチらに恩を売れて。
美味しい話でっしゃろ?
あんさん、リュウと知り合いになりたいんでっしゃろ?
魔王様の命令か何かでっしゃろ?」
ニヤニヤとケイが笑う。
ひぇー
やっぱりザンビエ商人は油断ならねぇ!!!!!




