健骨診断
たいしょうがぼろもうけした
「けんこーはだいじだよー」
「何すか、大将?いきなり」
「前回の流言任務、ラ・モンド軍団の担当者さんは
大喜びでした」
「よかったじゃないっすか」
「おかげさまで、特別報酬をいただきましたし、
ワシ自身も小麦相場で一儲けしました」
完全なるインサイダー取引だな、逮捕されろ!
「そして特別報酬と同時に大切な特別任務も
いただきました」
「へぇ~」
「それもこれもクライドさんの大活躍のおかげです」
「へぇ~」
「ということで、クライドさんにご褒美として、
この特別任務を引き受ける権利を差し上げます」
「結局仕事することになっとるやないかい!」
「うははははは、特別任務は難易度が高いんだよ。
できるメンバーは限られてる、選択権はねぇ」
■
ということで、特別任務を
引き受けることになってしまった。
もちろんリーダーとしての任務だ。
任務内容は、ドーガ家当主セコン・ドーガの
健康状態を探ること。
当主の健康状態というのは極秘事項だ。
例えば当主がもう長くない、とわかれば
指揮命令系統が乱れていることが想像できる。
だから攻め込もう!や
当主が死ねば撤退するだろうから
もうちょっと守りを粘ろう!
というふうに戦略を左右する事案なのだ。
極秘事項の調査ということで、メンバーは
結構選りすぐりだそうだ。
まずは、
おなじみゴブリンのワン・パックス。
リーダーとして任務にあたることが多いベテランだ。
だが今回はクライドがリーダーで、彼がメインとなる。
実は、偵察、潜入スキルがパックスで指折りの実力だ。
今回の任務対象は極秘事項で情報収集だけでは難しいことが
容易に想像できるため、直接潜入ミッションをこなせる
ワンが選ばれた。
「いよぅ旦那ぁ!今回はリーダーだな!
オレも肩の荷が下りて、のびのびと仕事が
できるってもんよ。楽しみにしててくれ!」
続いて
ホブゴブリンのドク・パックス。
今回、初顔合わせとなる。
こちらも潜入任務がこなせる逸材だ。
そして彼は相手の顔を見て
その健康状態がわかるというスキルの所持者でもある。
今回かかせないメンバーの一人だ。
スキル、健康診断ってとこかね?
「はじめましてクライドさん、よろしく!」
そして最後は、
これまたおなじみ、オークのブリッツ。
クライドが初めてボコった相手だ。
彼は簡単ではあるが、治癒魔法が使えるということで
他のメンバーにもしものことがあった時のための
バックアップにあたる。
「クライドさん!怪我したらいつでも言ってください!」
今回の任務はいつもより少ない、4人構成だ。
だが選りすぐりのメンバーであることは間違いない。
メンツを見る限り、任務の難易度が高いことが想像できて
ちょっと嫌になる。
クライドはふと考える、しかしパックスの連中って
冷静に考えたら便利だよなー。
色んな特殊任務をこなせるメンバーがそろってるし
何より良いのが、全員ある程度、戦闘力や脱出能力が
あるから安心して任せられるよな。
ホント便利だよなぁー、
彼らを見た目や種族だけで判断して正規で雇わない
魔王軍って見る目ないんじゃねーの
ってちょっと思う。
何が能力重視の多様性だよ、
なんてちょっと思う。
■
ナブの街。
ドーガ家当主が住むナブ・ドーガ城のおひざ元の街。
ドーガ領で最大の規模を誇る街だ。
事前情報によると、
この街にある屋敷にドーガ家当主セコン・ドーガは
一カ月を超え、かなり長いこと滞在しているらしい。
噂によると民の様子を見ているそうだ。
あやしい
普通、当主は城に暮らす。
民の様子を見たいなんていっても長くて2、3日くらいだ。
そうじゃないと城の仕事が止まる。
酒場に入り今回の任務の作戦を立てることにする。
「さて、今回は情報収集だけじゃ厳しいだろうな。
危険だが潜入も必要だ。覚悟してくれ」
ワンがニヤリと笑い
「旦那、旦那とブリッツはバックアップですぜ!
潜入は、オイラとドクでやりやすからね!」
え?とあっけにとられるクライド。
「旦那は自分が前面に出ることが多い。
まぁ任務の一番の実力者が
旦那だから仕方ねぇーんですがね。
本来はリーダーってのは後ろに控えるもんでさぁ。
そして今回の任務は、旦那にゃあ悪いけど、
オイラのほうが旦那より実力が上だ。
だから旦那はバックアップ。
いっつも旦那が危険な役割だからな、
今回の危険はオイラがもらう」
なるほど、だから今回はワンがメインで
自分がリーダーなのかとシックスの人選に納得し、
そしてワンの提案に胸が熱くなる思いがした。
「ふむ、クライド殿は潜入せぬのか?」
とクライドの右側から吐息交じりの声が聞こえる。
「ほぅ、魔物、キサマよりも上の実力者がいるとな」
とクライドの左側から吐息交じりの声が聞こえる。
急に左右から声が聞こえたもんだからクライドは思わず
「ぎゃあ」
と悲鳴を上げて立ち上がってしまった。
酒場が一瞬静まり返り、みな一斉にクライドを見るが
やがて、何事もなかったように喧噪を取り戻す。
ルイド家、諜報部隊隊長ハンスと
タルマ家、諜報部隊筆頭隊長マレーが
クライドの背後から声をかけたのだ。
両者とも超一流の諜報員のため、
流石にクライドであっても気を張っていないと
背後を取られてしまう。
「な、なんだよ、てめーら」
クライドは耳をごしごししながら、
ハンスとマレーに抗議する。
「親しい顔があったゆえ、声をかけた、貴殿は何者か」
「ほぅ、お主も魔物と知り合いか、お主はどこの者か」
互いに微妙に構える。
素人目にはちょっと動いただけに見えわかりにくいが
市街地等で戦闘が多い諜報員特有の完全に
殺しにいくときの構えだ。
ハンスとマレーの間に一触即発。
そんな嫌な緊張感が流れる。
その緊張感に耐え切れないクライドが
「あ、こちらがルイド家諜報部隊隊長のハンスさん
で、こちらがタルマ家諜報部隊筆頭隊長のマレーさん。
お互いよろしくぅ、まぁテーブルに座りなよ、
ねぇねぇ、今日は何の任務?
俺はねぇ、ドーガ家当主の健康状態を探りに来た」
と、バキバキに緊張感をへしおる。
「魔物、己をふくめこの場で必要な情報を開示することで
争いを防ぎ、なおかつ我らが手を組まねばならぬように
仕向けるとは、流石よ」
いや、敵地の酒場で思いっきり争われたら迷惑だから
なんですけどね。
「と、ところでハンスは何しにきたの?バカンス?」
「私は、クライド殿と同じドーガ家当主の健康状態を
探りに来た」
「あ、そう。マレーも、もしかして健康状態探り?」
「左様、魔物。キサマと同様複数人の部下を
つれてきておる」
「あ、そう。ハンスは?いつものように一人?」
「私以外は皆未熟で危険ゆえ、あまり表へは出せぬ」
「ほう、、、未熟ゆえに出せぬか、ならば永遠に
お主は一人よのう」
「なに?」
再びハンスとマレーがにらみ合う。
やっぱりこの緊張感が苦手なクライドが
「マレー、OJTだね!いつかは実戦に出さないとね!
というアドバイスだね」
「おーじぇいてぃー?、ふむ、心を鬼にして
いつかは実戦にださねばならぬ・・・・
マレー殿助言かたじけない、
何か礼をしたいところだが・・・さしあたっては・・・」
「うむ、うむ、無用よハンス殿、同じ上に立つ者として
身につまされる思いよ」
なんだか、二人の間がほぐれてきたのでよかったなー
と思うクライドであった。
と
ハンスが懐より銀粒を数個取り出した。
「さしあたっては、この銀粒など
価値あるかと思うが・・・」
銀粒、クライドと一緒にタルマ家の銀山に潜入した際
(ついでに悪代官をぶっ殺した際)
ちょろまかしてきた物だ。
銀粒を見るや否や、マレーは目をむき
「銀山侵入者の件!もう一人の犯人はキサマか!!
ルイドの者!魔物!共犯者ゆえに仲良しか!」
「はっ、しまった忘れておった!
我が殿が大喜びしてくれたゆえ、マレー殿も喜ぶかと
思ってしまったわ!!」
マレーとハンス。再びにらみあう両者。
「えー、っていうかハンスまだ、それ持ってんの?」
とクライドは気が抜けるような驚いた声を出す。
「むろんだ。ルイドの殿に全て献上し、
いたく喜んでいただいた。
そしてお優しきことに、
私に半分も褒美としてくださった。
その残りだ。クライド殿は、お仕えする方から褒美として
いくばくか頂けなかったのか?」
頂けないっていうか、献上どころか
銀粒手に入れたことすらシックスの大将に
一切教えずにすぐに、ぷわ~っと使ったとか絶対言えない。
「ふむ、ルイド家は新興の弱小国家と聞く。その主従が
身を削るようにつつましく銀粒をわけあうとは。
なんと、なんと素晴らしき主従関係よ!ハンス殿!」
「おぉ!マレー殿」
なんか勝手に盛り上がってら・・・。
まぁ盛り上がってる連中はほっといてクライドは
パックスのメンバーと再び作戦会議に戻る。
「あ、アホ共はほっといてさ、さっきの続きなんだけど、
ドーガ家の当主の健康状態。
マジで当主の命あんまりながくねーなって
何もしないでも思うぜ。
だから、潜入はよほどの危険をおかす必要はない。
確認でじゅうぶんだ」
「ちょっとまってくだせぃや旦那!
なんで当主の命が長くないって言いきれるんでさ?
そんな情報どこから手に入れたんで?」
「ん?だってマレーやハンスって
この状態を見る限りでは疑わしいかもしれないけど
本当は超がつく一流の諜報員なんだよ。
その超一流をわざわざ危険な任務に突っ込んで、
健康状態を探るってことは、命が長くない可能性が
高いことを何かしらでつかんでて、それを確実なものに
するために投入したってことが想像できるんだ。
ってことは、命が長くない確立は非常に高いよねってこと」
「な、なるほど!!やっぱり旦那すげぇな!!」
これって大手コンビニや大手ファミレスが出店してる場所は
すげー金かけてマーケティングした結果だから
人が来る確率が高い。
ということは自分たちも近いところに出店すると
おこぼれがもらえる確率がある。
というハイエナマーケティング理論と同じなんだよね。
あと、クロノスゲームでも上級者が
たむろってるところではレアアイテムが出現する可能性が
高いから、ハイエナ行為する。
とかも同じ。
「我らがいることただそれだけで当主の命を予想するとは!
さすがだな!魔物!!!」
マレーがクライドの至近距離で叫ぶ。
近いって・・・・
「うむ、流石だクライド殿、私も負けてられん。
任務に向かう」
そういうと、ハンスは酒場を出ていった。
「それでは我らタルマ諜報部隊も行くとする」
マレーも酒場から出ていく。
その後、ごく自然に数人が酒場から出ていったが、
あれがマレーの部隊なんだろう。
「さて、それじゃ我々も行きましょうか!」
ということでクライド一行も任務にとりかかるために
酒場を出ていった。
クライドは、ふとハンスとマレーと俺たちで協力すれば
ずいぶん楽に確実にこなせて良いのにとちょっと思うけど、
そこまで、馴れ合いは、しないか。
とも思う。
■
先ほどの情報収集の結果わかったことだが
セコン・ドーガは、城にはいない、
現在は街の屋敷に滞在しているそうだ。
マレーやハンス等各国の諜報員の投入。
そして当主は街の屋敷に長期滞在。
もうこれも怪しさ爆発、確定やね。
当主の命、そう長くないというのは
ほぼほぼ確定だから、安全優先でいく。
ということで一応、ワンとドクに
潜入してもらうことにする。
あくまでも無理しない。という方針でだ。
さらにもしもの時のための連絡用アイテムとして
遠隔の札を使う。
このお札は、2つセットでお互いの声が聞こえる
という札だ。
トランシーバーだな。お札にはリアルな唇が書いてある。
ちょっとためしに使ってみる。
「あーあー、マイクテスマイクテス、
ワンさん聞こえますか?」
「まいくてす?旦那ぁとりあえず聞こえやすぜ!」
ワンの言葉に合わせてクライドが持つお札の唇が
リアルに動く。
めちゃくちゃ気持悪い。
まぁ、正常に動作することが確認できたから良いか。
ということで、ワンとドクにドーガ家当主、
セコン・ドーガが住む館へ侵入してもらうこととする。
侵入してもらう間、ブリッツとクライドは街で
当主の跡継ぎに関する聞き込みを行うことにする。
もし仮に、セコン・ドーガが長くないならば、
跡継ぎの情報は重要だ。
跡継ぎは、現在はまだ当主ではない。
当主ではない人物の情報は容易に集められるのだ。
これが当主になったとたん、情報入手が急激に
難しくなるんだ。
だから今のうち。
情報の戦いとは常に二手三手先を読んで行う物なのだよ。
ブリッツわかったかい。
なんつって
セコン・ドーガには一人息子がいることがわかった。
サー・ドーガ
評判はあまりよくない。
自分におもねる部下を優遇し、耳の痛いことを言う部下を
冷遇するという傾向にある。
また、これは父親と似たところなのかもしれないが
武力、腕力のある者を重要視しそれらがない、知将や
裏方に関しては軽視しがちだそうだ。
父親と違う点は、戦いの才は、あまりないであろう
と言われている。
何度か魔王軍との戦いに出陣したこともある。
事実上散々な敗北を喫したと言えるのだが
全て"混沌者"によって、結果的に引き分けとなっている。
しかしながら本当は勝てたのに"混沌者"のせいで
引き分けになったと思っているらしく
"混沌者"とはあまりうまくいってない。
典型的ないわゆるバカ息子といったところか。
魔王軍的には厄介な"混沌者"と仲たがいしてくれれば
ありがたいであろう。
次期当主の情報を集め終わったがお札の唇は動かない。
大丈夫かな?とちょっと心配になっていると
ほどなく、ワンとドクが戻ってきた。
「旦那ぁお待たせしやした。きっちり潜入成功しやした」
「うん、お疲れ!」
「え?別に大して疲れてやいやせんぜ?」
「いや、目上の人に対して
"ご苦労"っていうのは失礼に・・・まぁいいや。
で、どうだった?」
「へい、もうドクが見るまでもねー状態でやした。
猛烈にせきこんでましてね、しかもせきの度に
血吐いてるんでさ」
さらにドクが補足で
「顔を見る限り、高熱もあるようです。
簡単な病気ではありませんな。寿命は予想できませんが、
そう長くないでしょうな」
まぁ驚きは無いな、
各国の諜報部隊が同時に健康状態を探りに来た。
城におらずに屋敷にいる。
状況証拠だけで健康状態はかなりよろしくない
というのがわかるよ。
こりゃ、魔王軍とドーガ家の戦い、一つ動くかな?
と妙に心高ぶるクライドであった。
おねつがでてた




