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VRMMOを作ろう!  作者: 末次克臣
8/8

下準備してます

出来上がるのが遅いなぁ、サクサクと仕上げられない俺・・・

「これで一通り?」


机の上にはカナが作った資料がバラされたうえで並べられている。

もうかれこれ一週間が過ぎている。ノートを解体して、1ページごとに種類分けをし、カナの説明を逐一受けながら、資料を誰にでもわかるように並べて。まさかこれ程の時間が掛かるとは思わなかった。


「そうね、後はファイルに閉じましょう」

「はいよ」


アサミからプッシュ式のファイルケースを受け取り、一束ずつ挟んでいく。カナもアサミからファイルをもらって資料を纏めていった。


今日はケンゴとクマさんはいない。二人ともバイトが入っていたので、そっちに行ったのだ。一見両手に花だが、片方は幼女、もう片方は腐女子なのでそんな展開は無い。もう淡々と黙々とやってる。

そして資料を見ながら思ってたことを言った。


「やっぱり足りないな」

「うん」

「どうかしたの?」


俺がつぶやいた言葉にアサミが首を傾げる中、カナも同じことを思ってたのか肯定した。


「資料を見てて思ったんだが、やっぱり欠けてるところが何ヶ所かあるんだよ」

「私もそう思う」


綺麗に並べ、順番を決め、そして纏まったからこそわかる。ジグソーパズルの様に並べられた資料に、足りない部分が欠けたピースとして所々に隙間を空けている。


「なるほどね、でもそれはこれから埋め合わせればいいじゃない。これはそのための作業なんだから、足りない部分が見つかっただけで良しとしなさい」


確かにその通りだ。こうやって仕分けなかったら、作り上げてる最中じゃないと気付かなかっただろう。

だが、気になってしょうがなかった。分かったからこそ、気付いたからこそ、そこを埋めたい、補いたいとおもってしまう。

だが、ここはグッと堪えて作業を続けることにした。今はファイルに纏める作業、補填はまた今度だ。


「そうだな」

「わかった」


それからは黙々とまた作業だった、並べ終わったとはいえ、量が多いだけに作業は夜の9時までかかった。そして俺のおごりで弁当を買ってきて。部室の中で3人で晩飯になった。


「それにしても、よくできてるな・・・」


カナの作ったストーリーは主人公が異世界に飛ばされ、その中で様々な出会いをし、元の世界に帰る手立てを探すというもの。しかも多岐にわたる選択肢とシナリオ、数種類のエンディングと飽きの来ない中々に面白いものになってる。しかも、冒険者どころか、生産者、果ては領主にもなれるという使用になっていてプレイの幅は凄まじく広い。


だが、ここまで作り込みがあると気になる点も出てくる。


足りないエリアもそうだけど、モンスターの種類、武器や素材の種類、そして話が抜けてる所などの補うべきポイントがわかる。これが順番決めや仕分けした成果だと改めてやってよかったと思う。


「そうねぇ~、出来に関してはあんまりわからないけど、量はすごいと思うわよ」


後で数えたんだがノートは85冊、そして仕分けしてまとめられたファイルは30冊になった。しかも補填する部分があるからまだ増える。


「ん、頑張った」


小さくうす・・・ではなく、細い体で胸を張る。パッと見、威張る幼女である。ほほえましい光景だが、これだけのことをやり続ける努力を純粋にすごいと思う。


「カナ、いつからこれ書き始めたの?」


それは俺も気になった。何せこの量だ、1か月どころか1年でも無理だと思う。


「中学のころから?」

「いや、そこ何で疑問形なのよ・・・」

「あんまり覚えてない」


あんまり覚えていないというのはさすがにどうかとも思うが、9年前のことをそれほど覚えてる人はそんなにいない。忘れたというのも仕方のない事だろう。


「約9年か、確かにそれだけの重みがあるよな」


一部のノートは少し茶色く変色していた。俺はノートを取っておくなんてしないから、そんな事になったノートは初めて見た。


「でも、まだ不完全」

「何言ってんの、これから完成させるんだから不完全なのは当然でしょ」


不完全なのがよほど気に入らないのか、すごく渋い顔をしてファイルを睨むカナ、そんな彼女の頭を撫でながら母親のようになだめるアサミは意外と様になってる。


「とりあえず、続きはまた明日だな」

「ええ、明日はケンゴとクマも来るんでしょ?」

「うん、そう聞いてるよ」

「わかったわ」


明日はみんなで作業、というかまとめ終わったので本当にこれから先の作業になる。なに、3人寄れば文殊の知恵どころか5人もいるんだ、何とかなるだろう。


それを確認したアサミは立ち上がって、自分の荷物が入ったリュックを背負って帰る支度をした。カナも一緒に自分の荷物が入ったカバンを持って立ち上がった。


「じゃーねー」

「また明日」

「おう、おつかれー」


軽い挨拶をして二人は帰って行った。一人部屋に残された俺も、自分のリュックを背負い帰ることにした。部屋の電気を消して、しっかりと施錠、鍵が掛かったことを確認して、長い廊下と階段を歩いていった。まだ途中だが、一段落が終わった。自分の部屋への帰り道は少し足取りが軽かった。

なかなか形にできない上に、余計なものを書いてるというどうしようもないことに・・・


これだけはキッチリ仕上げたい

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