01
「リンゼお前との婚約を破棄する!!!」
私は突然婚約者からこう言われました。
私の名前はリンゼ・エルカリアで今年で16になります。エルカリア伯爵家の令嬢で、アルドラス公爵家の次期当主であるチャールズ様との婚約が決まっておりました。
私はチャールズ様との婚約準備を色々と始めていたのですが、突然チャールズ様に呼び出されてアルドラス公爵邸の貴賓室までやってくるとすぐにチャールズ様が現れてこう宣言されたのです。
私は突然の事で意味が分かりませんでした。
すぐにチャールズ様に尋ねます。
「チャールズ様、婚約破棄と言われたのですか?」
チャールズ様はこう私に言い返しました。
「ああそうだ!!婚約破棄だ。テメエとの婚約を解消すると言ったんだ!!!」
すると後ろから声が聞こえてきました。
「婚約破棄なんて当然でしょ??」
私は後ろを振り返るとそこにはドレスで優雅に着飾った、青いロングヘアーでスタイルのよい女子が立っていました。
私がその女子に尋ねました。
「なんでセシルがここにいるんですか?」
セシルはリネアス子爵家の令嬢で私と同い年になります。
貴族学院時代も同級生ではありましたが、知り合いと呼べるほどの深い付き合いがあったわけではありませんので顔と名前を知っている程度ですが。
セシルが私に言いました。
「チャールズ様と私が婚約するからに決まってるでしょ?」
私がセシルに驚いて聞き返しました。
「セシルがチャールズ様と婚約???」
チャールズ様が私に大声で言いました。
「この公爵家の跡継ぎであるチャールズ様に貴様みたいな女はふさわしくない。そういう事だ!!」
セシルがチャールズ様と婚約??ええっ??どうして??
私はその理由をチャールズ様に尋ねました。
「チャールズ様??私に何か至らない点があったのですか?」
するとチャールズ様は大声で私を怒鳴りつけました。
「至らなかった点がありましたかだと???おおありだ!!!」
セシルも私を怒鳴りつけます。
「そうよ!!おおありよ!!!そんな事も分かんないの??」
二人が絶え間なく私にどなりつけました。
「いいかお前はこのチャールズ様に大きな迷惑をかけたんだ!!!」
「そうよチャールズ様に大迷惑をかけたのよ!!!」
私が二人に尋ねました。
「なにがいけなかったんですか??」
チャールズ様が私にどなりつけます。
「なら教えてやる!!半年前に開かれた舞踏会を覚えているな??」
私はチャールズ様に言いました。
「はい、半年前の王家主催舞踏会に出席してくれたのチャールズ様が私の姿を見て気に入ってくれたのですよね?」
チャールズ様が私に言いました。
「違う、気にいったんじゃない。俺様は貴様に騙されたんだよ!!」
「いいかこのチャールズ様はこう考えていたんだ!!テメエはすごい美貌があるがそれをわざと隠し続けているのだろうと考えたんだ!!地味な女を演じているだけで本当は華のある女だと思ったんだ。だからテメエに婚約を申し込んだんだ!!だが実際は全然違った!!テメエは本当に何の価値もないただの地味な女でしかなかった!!!つまりテメエはこのチャールズ様を騙したうえに大迷惑をかけるところだったんだぞ!!!」
四か月ぐらい前にチャールズ様の方から婚約を申し込んでこられて、私はその申し出を受けたのです。
なんで私がどなられているのか全然分かりませんでしたが、そんな事はお構いなしに二人は私を責め立てました。
「そうよあんたはチャールズ様に大迷惑をかけるところだったのよ!!!」
「だからテメエは婚約破棄されるんだ!!」
「そうよ、あんたが捨てられるのは至って当然よ。あんたみたいな華のない女、捨てられて当然でしょ。あんた地味すぎるのよ!!!いい?チャールズ様の妻になる女は私みたいに華がないとね。」
私はただただ二人の言葉を黙って目に涙を浮かべながら聞いていました。
「ああセシルならこのチャールズ様の妻にふさわしい女だ。華もあり性格も良い。テメエみたいな地味なだけで何の価値もない女とは大違いだ。」
「いやーテメエみたいな地味女がいなくなるから本当にせいせいするぜ!!!」
私はチャールズ様に涙目で言いました。
「チャールズ様、すいませんでした。」
ですがチャールズ様は私をにらみつけながら言いました。
「いまさら謝っても遅ええんだよ!!」
セシルが私に言いました。
「チャールズ様の言う通りよ。それにあんたなんかがチャールズ様の妻として舞踏会にでも出たらチャールズ様の評判は地に落ちるところだったのよ。あんたなんかいない方がマシよ!!」
チャールズ様が私に言いました。
「その通りだ。テメエなんか舞踏会に連れっててもアルドラス公爵家の名を貶めるだけだっただろう。まだ魔物のゴブリンを舞踏会に連れてった方がはるかにマシだ!!」
「そうだ、いい事を思いつきました。」
「何を思いついたんだ?セシル??」
「こいつの呼び名ですよ。こいつをこれから、ゴブリンイカ女!!って呼んでやりましょう!!」
「ゴブリンイカ女?どういう事だセシル??」
「この女がうぬぼれないように自分の立場を分からせる必要があると思います。この女には自分がゴブリン以下の存在でしかないと分からせるんです。あの汚らわしくて卑しい存在である魔物ゴブリンほどの価値もこの女にはありませんから。こんな女をゴブリンと同等に扱う事すらおくがましいですから。この女はゴブリンよりも下の下の存在で、ゴブリン以下の女なんです。だからゴブリンイカ女です。」
「なんてすばらしい考えなんだ。この地味で華のカケラもない女にピッタリじゃないか。よしこれからこいつをゴブリンイカ女と呼ぶ事にしよう!!!」
「セシルは本当にいい女だな!!!俺の考えをよく理解してくれている!!!」
「ありがとうございます。」
そして二人が大声で私に言いました。
「とっとと出てけ!!!このゴブリンイカ女!!!」
「そうよとっとと出て行きなさい。ゴブリンイカ女!!」
そして二人は貴賓室のテーブルに置かれていたカップの水を私にかけてきました。
私は耐えられなくなり二人に水をかけられながら公爵屋敷の外に飛び出しました。
そしてすぐにエルカリア伯爵家に連絡をして実家から馬車を呼んで実家に帰りました。
私は実家であるエルカリア伯爵邸に帰る馬車の中でずっと泣いていました。
私の何がいけなかったの??
チャールズ様は私が至らない女だから追い出されてしまったの??
そして無理やり追い出されなければならなかったのは私のせいだったなの。
私は泣きながら実家であるエルカリア伯爵邸へと戻っていきました。
その日の夜は自室で一晩中泣いていました。