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まとめ

第12章 憲法レポート


第1章から最後までをまとめたメモを見ながら、レポートを作ることにした。

「そういえば、憲法解釈ってどんなふうなものになるの?」

「昨日説明したとおりだけど、判例によって解釈するとか、内閣法制局による解釈を参考にするとかっていう方法があるね。それに、いま俺たちがしているような一般の人たちが行うこともあるよ」

「ふーん……」

メモを確認しながら、A4サイズのレポート用紙に書いていく。

「それで、どうやってまとめる?」

「憲法の条文の流れに沿って」

そういうと、俺はパソコンで下書きを始めた。


第1章:天皇について

 天皇は内閣の助言と承認に従って、勲章授与や総選挙の日にちなどを公示することなどの国事行為を行う。天皇は日本国民の統合の象徴として存在しており、皇位の継承などについては、皇室典範によって決められる。

第2章:戦争放棄について

 第2章に書かれている非武装平和主義は、どこの国でも行われているとされている交戦権の否認のみならず、軍隊の保有すら否定している点で徹底されている。

第3章:国民の諸権利について

 国民に対しては、憲法が保障する基本的人権をはじめとする諸人権に対しては、公共の福祉に反しないという区切りはある一方で、ほぼ誰にでも開かれている。一方で、主語に『何人も』と書かれていない条項は、日本国民のみに与えられている権利または、いわなくても誰にでも普遍的に与えられていると理解できる権利のどちらかとなっている。なお、日本国民である要件に関しては、法律で決めることになっている。

第4章:国会について

 立法権は国会に属している。国会に関しては、衆議院と参議院の2院制になっている。同時に2院の議員になることはできない。参議院よりも衆議院のほうが、さまざまな権利がつけられている。議員は国会が開かれているときは不逮捕特権があって、逮捕されるためには議決が必要になる。

第5章:内閣について

 行政権は内閣に属している。法律・政令を公布・施行するためにはすべての主務大臣の署名が必要になっている。すべての大臣は文民でなければならない。内閣総理大臣が指名されていない場合は、すべての案件に先立って指名選挙がおこなわれる。一方で、内閣は衆議院で内閣不信任案が可決された時には総辞職をするか総選挙をしなければならない。国務大臣は、議員でなくても内閣総理大臣の許可なくして訴追されることはない。

第6章:司法について

 司法権は最高裁判所および法律によって設置される下級裁判所に属している。行政機関が終審裁判所として機能することは許されていない。最高裁判所裁判官は10年ごとに国民審査に付され、その結果として罷免されるか、定年になるか、心身の不調によるか、国会による弾劾裁判所によって罷免されることを除いて辞めることはない。

第7章:財政について

 国の財政はすべて国会の議決に従う。国の支出を見張るために、会計検査院を設置する。租税などを新しく課する場合は、国会の議決を必要とする。内閣は毎会計年度に予算を国会に提出し、終わってから支出も国会と国民に最低年1回は報告しなければならない。

第8章:地方自治について

 地方自治の本旨に基づいて、地方公共団体の組織や運営の方法について法律で決める。一つだけの地方公共団体に対してのみ適応される特例法に関しては、その場所の地方公共団体の住民の投票によって過半数の賛成が必要となる。法律の範囲内でなら、条例を制定することができる。

第9章:憲法改正について

 日本国憲法を改正するためには、衆議院と参議院の総議員の3分の2以上の賛成をしたうえで、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行う投票で過半数の賛成を必要とする。憲法改正が無事に成立したら、天皇が国民に対して新しい憲法を公布する。

第10章:最高法規について

 日本国憲法は、日本国内で施行されている法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部が憲法に反していると認められる場合は、一切を無効とされる。天皇、摂政と全ての公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務がある。

第11章:その他

 この日本国憲法が施行されてから、参議院が成立していなかった場合、衆議院が国会として機能する。この日本国憲法は、公布の日から半年たった時に施行する。憲法によって規定されている人が、この憲法下で後任者が任命された際には、その職からおりる。

第12章:判例などについて

 裁判所の憲法解釈については、判例を参照するのが一番いい。裁判の結論である判例を見ることは、憲法の解釈に重要な目印となる。全部の条項について判例が出ているわけではないが、一部の条項については十分な1次資料になる。


「これで完成かな?」

「中学生にしては、中身がアレだけど…気にする必要はないよね」

桃子が何か心配するような顔をしながら、伊野上をのぞきこむ。

「大丈夫だろうさ、何か言われたとしても、俺たちが勝手に考えたって言うことだし」

パソコンで打った下書きをみながら、桃子が一気に移していく。

「すこしぐらい文字数増やしてもかまわないよね」

「ああ、大丈夫さ」

A4レポート用紙2枚分という制限だったから、できるだけ文字数を減らしてから書くということにしたらしい。

足りない分は、適時補うことになったが、それでも一番最初に書いたまとめの文章からほとんど増えなかった。


お昼を迎えるころには、レポートは終わっていた。

桃子は一回思いっきり伸びをすると、晴れ渡っている青空を窓から眺めた。

「これで終わりなんだね」

「そうさ」

伊野上はけだるそうにあくびをしながら立ちあがった。

「夏休みの宿題もこれで全部だから、後は遊びまくるだけで大丈夫だな…っと、ひとつ忘れてた」

「どうしたの?」

「あんさ、日本国憲法の関連で、一番重要なものを忘れてたんだ」

「なんのこと?」

「大日本帝国憲法だよ。日本国で初めての近代憲法といわれているそれもする必要があるかもしれない。文字どおりの"自由"研究としてだけど」

「いいじゃない。しましょうよ、また二人で」

桃子は妙だと思うほどに"二人"というところに力を入れていた。


「じゃ、そういうことで」

伊野上は、お昼ご飯を食べたらすぐに家へ帰って行った。

取り残された桃子は、何もすることができず、井上が出て行った玄関の扉が静かに閉まるのをじっと見ていた。

日本国憲法の私的解釈はこれで終わりです。

「こんなの解釈の範疇に入らねーよ」という叱責を除いて、皆様からのご意見をお待ちしています。


大日本帝国憲法についても、似たように進めていきたいと考えていたり。

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