魔王軍幹部との攻防
「さて、どうしたものかな」
魔王軍幹部であるガルグはクレーターの真ん中で辺りを見渡す。周りにはガルグを囲むように構えている上級者の冒険者と兵士が数名。数は頼りないが、一人一人がアルファ達と共に戦っている精鋭達と同じくらいの実力を備えている。
しかし囲まれているガルグは余裕の態度を崩さない。
「どうしたも何も……お前はここで終わる。その禍々しい魔力から魔王軍幹部であることは確かだろう。だが、それでも俺達全員を一斉に相手するのは無理がある」
一人の冒険者がそう言い放つ。するとそれを聞いたガルグは急に笑い出した。
「はっはっは! 面白いことを言う。人間は皆お前のように愉快なのか? これは殺すのは惜しいな。どこか牢屋に入れてずっと見ていたいくらいだ」
「何だと!?」
ガルグの明らかな挑発に憤る冒険者。いや、挑発ですらないかもしれない。本当に思ったことを言っているだけかのような不快感があった。
「違うと思うのならば試してみろ。愉快な笑いを提供してくれた礼にお前達の最初の攻撃を避けないでやろう」
「……舐めんなよ」
全く負けることなど考えていないガルグの提案。当然そんなことを言われたら腹が立つ。ガルグを囲んでいる者達の殺意が大きくなった。
「いくぞお前ら! 奴を消し去れ!」
一人の冒険者が声を上げると同時に一斉に魔法攻撃が放たれる。どの魔法も強力であり、通常の魔族であったら塵も残らないだろう。
大きな音とともに全ての魔法がガルグに着弾し、爆発した。
「ったく、過信しすぎだ。いくら自信があってもそんなのは自殺行為……」
言葉を紡ごうとした冒険者は黙り込んだ。今し方跡形もなく吹き飛ばしたはずの魔族の姿が土煙の中から現れたからだ。
「ふむ。魔法の質はなかなかいい。それなりに鍛えているようだ。しかし……私を負傷させるにはあまりに遠い」
ガルグは何事もなかったかのようにそこに立っていた。
「な……」
それは冒険者達の戦意を削ぐのには十分だった。完全に戦意消失している訳ではないが、こちらの全力攻撃を全て受けて無傷となると勝ち目の薄さを嫌でも感じてしまうのは仕方ないことだろう。
「もういいだろう。これが格の差だ。抗うだけ時間と命の無駄だよ」
ガルグはスーツのネクタイをキュッと締めた。その瞬間、雰囲気が更に変わる。そう、殺意の雰囲気だ。
「では、もういいかな。もう日は完全に沈んでしまって真っ暗だ。早く帰って休みたいのでね」
そう言った瞬間、ガルグの姿はもうそこになかった。
正面にいた冒険者の目の前にいつの間にか移動しており、手をナイフのように地面に垂直にして振り下ろした。
振り下ろされたその手は人どころか巨大な岩すらいとも容易く粉砕する威力だ。ガルグからすればそれでも手加減しているが、上級冒険者でもその攻撃を受け止めることは至難である。
「!?」
「ほう?」
そのままいけば冒険者の体は真っ二つになっていたであろう。しかしその冒険者に手が当たる直前にガルグの手がウォーターカッターのような超高圧水と超強風の風圧によって弾かれた。
これには流石のガルグも驚いたようだ。その二つの攻撃を受けたことによって手には傷ができている。
(どこかに隠れている者がいるな。それにさっきの二つの魔法……私に傷をつけることができる程とは、少なくとも今私が視認している人間達とは格が違うようだ。それにしても妙だな。驚くほどに気配を感じない。魔法も手に当たる直前まで認識できなかった。いや、魔力を感じ取ることができなかった。これは一体どういうことだ?)
ガルグは辺りをキョロキョロ見渡す。ついさっき殺されそうになった冒険者は尻餅をついて固まってしまった。同じく周りの冒険者や兵士も突然のことで思考が上手く回らす固まっている。
ガルグの攻撃を弾いた攻撃。これは勿論、世莉架によるものだ。
(成る程。今の攻撃であの程度のダメージしか与えられないのね。確かにこれは手強い。明らかに常軌を逸している)
世莉架は相変わらず瓦礫の陰にいた。世莉架の自身の気配を消す能力はメリアスのギフトによって得たものではない。世莉架が地球にいた頃から身につけていた技術の一つだ。
(魔力を隠蔽したことで攻撃は当たったけど、ずっとこのまま攻撃を当てるのは難しそうね)
隠蔽。それが世莉架の今の所発現している特殊属性である。世莉架が赤黒いドラゴンのルーナと白いドラゴンのドーバと出会った時、世莉架の土の魔法をルーナとドーバに気づかれずに当てることができたのは隠蔽をかけていたからである。しかし、隠蔽はどんなものにでもかけることができる訳ではない。世莉架は魔法自体に隠蔽をかけることはできない。そのため魔力に隠蔽をかけたのだ。それによって魔力感知を避けたのである。
少しでも魔法が使える者は魔法を構成する魔力を感じることができる。大きな攻撃になれば成る程、その魔法を構築している魔力は大きくなるため、遠くにいても魔力を感じることがある。だが世莉架の隠蔽は魔法の規模が大きくなれば成る程隠蔽するのに必要な魔力が大きくなるが、それでも隠蔽をかけることができれば気配で魔法を察することはできなくなる。視認できるのであればいいと思いがちだが、魔法を使える者同士の戦いにおいては魔力の感知がとても重要だ。強者同士の戦いなら尚更で、目で追うだけでは絶対に回避できない攻撃は魔力で感知するしかなく、魔力から読み取れる情報は戦いにおいて非常に有用である。
更に魔力だけでなく、自分自身や他者に隠蔽をかけることもできる。姿は消えないが、気配が消えるだけで様々な場面で真価を発揮することだろう。
つまり、隠蔽という特殊属性、もとい特殊能力は地味だが非常に有用性と希少性の高いものなのだ。
(私にはこの戦いに勝利すること以外にも目的がある。それを達成するには……やっぱりこいつの相手をアルファとエルファに任せたいわね)
「おい、先程攻撃した人間! 近くにいるなら出てこい! どうせなら強い者と戦いたいんだ。此奴らではあまりに実力不足なのでな」
ガルグは少々楽しそうにしていた。事実ガルグにとってほとんどの冒険者や兵士は弱すぎるだろう。
(……一先ず隠れながら奴をこの場所に留めておくしかないわね)
世莉架はそのまま隠れて攻撃を続行するつもりだ。
「早く出てこい。隠れながら私の攻撃を捌き続けるのは流石に難しいだろう? しかもただ捌くのではなく、この弱い人間達を守りながらだ。賢い選択をすることを願うよ」
ガルグの挑発とも余裕とも言える発言。しかし世莉架がそんな言葉に惑わされることはない。
「……そうか、ならば仕方ない。精々足掻いてみせろ」
ガルグはまたも周りの冒険者達に狙いを定める。
(もしもアルファ達がこちらの援護に来れない程に苦戦しているのであれば、あまりしたくないけど私が冒険者達を気絶させてから奴と戦うことになるかしらね。まぁ、アルファ達なら来てくれると思うけど)
世莉架は自分の力が極力人には見せないよう心掛けている。本当の力が露見してしまって有名になるのは世莉架からすれば最も悪手なのだ。
ガルグは早速動いた。周りにいる冒険者達を殺すためだ。
「!」
しかし、世莉架の炎の魔法で遮られた。またも隠蔽の魔法を使ったため、ガルグは気づかなかったのだ。それでも視界に入った瞬間に反応して避けることができるのは異常なことではあるのだが。
「さては特殊属性持ちだな? ここまで術者自身もだが魔力までも感知できないのは通常の魔法によるものではない」
このようにして少しでも時間を稼ぐ世莉架。周りの冒険者達はやっと自分たちを守ってくれる存在をしっかりと認識した。
「だ、誰かは分からないが俺達の味方であることは間違いなさそうだ。お前ら、少しでも対抗できるように何人かで固まって動くんだ! 少しでも粘って時間を稼ぐぞ。そうすりゃアルファ達が来てくれる!」
最初にガルグから攻撃されそうになった冒険者がそう言い放つ。冒険者達にとっても世莉架と同様にアルファ達を待つことが勝利条件だ。
「あぁ、そういえば我が軍勢を一瞬で吹き飛ばして進んでいた人間がいたな。そしてアルファという名前は聞いたことがある。人間の中でも相当上位に位置する強者だったかな。是非とも戦ってみたいものだが、目の前に人間がいるのだし、全員葬ってから行くしかないか」
ガルグにとっての優先順位は人間の殲滅であり、最終的にアルファ達強者と戦えればそれでいいようだ。
「よし、さっさと終わらせよう。隠れている者も出てくる気はないようだし、ここで時間をかけるのは勿体無い」
それからはガルグと世莉架の間接的な戦いが始まった。それを見ていた冒険者達は呆然としていた。何が起きているのか全く分からず、動くことができない。
ガルグが冒険者達を攻撃しようとすると世莉架の隠蔽の魔法をかけた魔法が妨害する。
しかしそのスピード感は凄まじい。何かが動いていて魔法が行使されている、ということしか認識できない人間がほとんどであろう。
ガルグと世莉架の戦いは完全に冒険者達を蚊帳の外にしていた。冒険者達は見えない協力者に頑張れと応援することしかできなかった。
**
一方、アルファ達の協力を仰ぐために第一線の方へ走るハーリアとメリアス。
前からも後ろからも戦闘音が聞こえる状況に不安は募るばかりだ。
「……」
二人の間に会話はない。ただただ戦闘音が聞こえ、たまに振動が起こる。
やがて第三線の場所に着いた。しかしそこには全く人がいない。
「どういうこと?」
勿論作戦の中では第三線にいる者の大半を動かすといった作戦もあった。しかし必ず数人は人を残すのだ。それは全ての戦線で適応されているルールだ。だが今二人の眼前には誰もいない。まるで戦争が起きてから人がいなくなり、廃墟と化したかのような光景だ。
「まさか全員やられた……って訳じゃないよね?」
誰もいない状況にメリアスがハーリアに尋ねる。
「戦闘音は聞こえるから全員やられたってことはないと思うけど……みんな第一線の方に行ってるのかな。とにかくアルファさん達の元へ向かおう」
そのまま進んで行くと第二線の場所に着いた。
「な、なんで……」
しかしそこにも人がいない。ただ第一線の方に近づいているために戦闘音や人の声などが聞こえる。
「前線で苦戦しているから前線に人を集めたのかな。そうなるとアルファさん達の救援を期待できないかもしれない」
ハーリアは考える。もしもアルファ達が本当に救援ができない状況だった場合、町を出て首都に逃げろとセリカから言われている。だが本当に逃げるつもりはない。ただ逃げずに戦おうとしても少なくとも幹部であるガルグを相手にすることは無理だ。
「ハーリア、行こう。まずは第一線に行かないと何も分からないよ」
「うん、そうだね」
ここにいても何も変わらないし何も分からない。まずは行動することが大事だ。
走っていると段々と城壁が近くなってきた。もう少しで第一線だ。
「ん……?」
その城壁の外から誰かが飛び出してきた。その後、近くにいた人もその飛び出してきた人について行っている。その二人は完全にハーリア達の方へ向かってきている。
「も、もしかして」
一人は体に炎を纏って、もう一人は体に光を纏って高速でこちらに向かっている。
その二人はあっという間にハーリアとメリアスの目の前に辿り着いた。
「お前達、第四線で何が起こっている?」
そう、その二人はアルファとエルファである。そのことに安堵したハーリアとメリアスは現状を語る。
「現在第四線にて突如空から落ちてきた魔王軍幹部の一人と上級冒険者、並びに上級兵士が戦っています。他の者達は皆魔王軍幹部が落ちてきた時の衝撃波で吹き飛ばされ負傷しており、動ける状況にある者達はほんの少しです」
「やはり幹部か。まさか空からとはな」
ハーリアの説明を聞いたアルファは苦い顔をする。
「死者は?」
「まだ全員を確認できた訳ではないので分かりませんが、恐らく死者はまだ出ていません。しかし危険な状態にある者は多いです」
「なるほど」
「後、今セリカもそこにいます。隠れていましたが心配なので……どうか助けてください」
ハーリアはセリカのことを話す。
「セリカが!? なんでそんな危険な場所に……貴方達と一緒にこちらへ来るべきでしょうに」
エルファはまだ幹部の近くにセリカがいると聞いて身を乗り出す。
「落ち着けよ。セリカのことだ。きっと何か考えがあるんだろう。今はとにかく一刻も早く魔王軍幹部を葬ることが先だ」
「えぇ、そうね。急ぎましょう」
「あ、えとそれで私達はどうしたらいいですか? 後メリアスの安全の確保もしたいのですが……」
ハーリアはこれからの自分たちの動き方を聞く。
「現在第三線までの戦力は全て前線に当てている。俺達が幹部を相手にするとなるとどうしても前線が押されてしまうからな。お前達は一先ず城壁に向かって戦えるようなら戦ってくれ。魔法が使えるなら城壁から、もしくは城壁の外に行ってある程度距離をとった状態で攻撃を頼む。危険だから近距離での攻撃はしないようにな。それと安全の確保に関しては城壁の中だ。城壁内には負傷した者が治療を受けている。そこならまだ安全だな」
「分かりました」
「決して無理はするなよ。子供を戦わせるなんて悲しいことは本当はしたくないんだがな」
「はい、無理はしないようにします」
アルファの優しい部分が出た。アルファは最初ハーリアとメリアスの参加を認めようとしなかった。それはエルファも同様だった。メリアスは見た目だけだが、ハーリアには関してはまだ子供だ。こんな戦争に巻き込みたくはないのだろう。
「それじゃあ俺達は魔王軍幹部の元へ向かう。幸運を祈る」
「はい、お二人もどうかご無事で」
そうしてハーリアとメリアスは城壁の方へ、アルファとエルファは魔王軍幹部であるガルグの元へ向かった。
**
「なかなかやるな。これは尚更正々堂々と真正面から戦いたくなる」
ガルグと世莉架の攻防は以前続いている。ガルグも世莉架も未だ涼しい顔をしている。
(私も奴はまだまだ本気を出していない。これから奴が本気を出し始めたら私もそれ相応に力を出さなければならない。そうなったら周りの冒険者達も巻き込んでしまうでしょう)
「しかしながら流石に飽きてきたな。このままでは埒が明かなそうだ。そろそろ真面目にやろうか。互いにな」
ガルグは世莉架が自身と同様に本気を出していないことを感覚的に察していた。
(……まずいわね)
世莉架は思考する。このまま隠れた状態でガルグを長時間足止めする魔法を考える。
「相変わらず反応は無しか。ならば仕方ない」
ガルグが動き出そうとした時だった。
「おっと」
ガルグの足元が勢いよく盛り上がった。それによって空中に放り出されたガルグの周りに土が生成されていき、それはガルグの三百六十度全てを囲った。
そしてその土の壁は急激に縮んでガルグを押しつぶそうとした。
「ふん、なんだこれは」
しかし容易く膂力だけで土は破壊されてしまう。
破壊された後にガルグの目の前に広がっていたのは炎の壁だった。
「今度は炎か」
だがガルグは一瞬でその炎の壁を抜けて更に空中へ行く。
すると真上に水の塊が生成されていた。
自身のスピードも相まってガルグはその水の塊に突っ込んで行く。しかし水圧など物ともせずに水の塊から這い出た。
すると地面の方から強風が吹く。それもとんでもない風量で自然では起きないような強風だ。それによってガルグは更に上空へ行く。
「なんだ、私を上空へ追いやりたいのか? この程度の魔法で?」
ガルグには児戯にでも思えているのであろう。そしてこれらの攻撃は当然ただの時間稼ぎだ。
「……!」
ただの時間稼ぎではあるが、それでも全くダメージを与えるつもりがない訳ではない。
ガルグの頭上には光と闇の塊があった。それも魔力が凝縮された超高濃度の魔法だ。人が生身で触れれば一瞬でこの世から消え去るだろう。
「……まさか全属性持ちか? いいや、複数人でいるのか。どちらにせよ、こんな芸当人間ではなかなかできないだろう」
流石に驚いた様子のガルグだ。しかし余裕が消えたわけではない。
「受けて立とう。存分に私に浴びせるがいい。魔力の奔流を」
ガルグは避けることはせずに堂々と受け止めるようだ。
世莉架は光と闇の塊からその魔力を下方へ向けて放つ。その様子はまるで神による攻撃のように神々しい。白い魔力と黒い魔力は絡み合い、大きな柱となってガルグを飲み込む。
世莉架に守られていた冒険者達は呆然としていた。あまりに現実離れした光景に言葉を発することすらできない。
その攻撃は第一線にいた冒険者達にも見えた。誰も彼もがなんだあれはと戦闘を中断してまで世莉架の魔法を眺めていた。今は夜であるため、尚更目立つ。
魔法が放たれた場所は元々ガルグが落ちてきたことによってできたクレーターがあったが、更に荒れた地になっていることだろう。
「……」
土煙が立ち込めていて視界が悪い。しかしながら段々と土煙は晴れていき、ガルグが姿を現す。
「なるほどな……これは驚いた」
そこには明らかに大きなダメージを受けた様子のガルグが立っていた。着ていたスーツはボロボロになり、特に両腕から多くの血を流していた。
「流石に腕に付与した防御魔法だけでは防ぎきれなかったな。これほどの魔法をよく人間が使えたものだ」
ダメージはかなり入っているはずだが、普通に立ってハキハキ喋っているガルグはやはり並大抵ではない。
「それにしても楽しいな。久しぶりに人間との戦いで高揚しているよ。さぁ、続きをやろう」
ガルグはまだまだ戦えるようだ。それどころか世莉架の魔法を受ける前よりも威圧感は増し、明らかに本気の戦闘モードに入ったことが分かる。
「……」
しかし先程までの怒涛の魔法が収まり、途端に静かになった。
「……おいおい、まさか魔力切れだなんてことはないよな? そうだとしたら興醒めもいい所だぞ」
ガルグは不機嫌そうに顔を歪める。
「まさか、魔力切れなんて起こさないわ。ただ、私の役目が終わったというだけのこと」
世莉架は瓦礫の陰で不敵に笑みを受かべ、颯爽と何処かに消えていった。
「はぁ。まさかこんなつまらない幕切れとは。仕方ない、さっさと終わらせるか」
そうしてガルグが周りの冒険者達を殺そうとした時だった。
「!」
ガルグの顔に向かって細く赤い弓矢のようなものが途轍もない速さで飛んできた。それを頭を傾けて避けるガルグ。避けられたそれはガルグの背後にあった瓦礫の山に当たる。すると一瞬で瓦礫の山がドロドロに溶けた。それは超高濃度の魔力、超高火力の炎の弓矢だ。
「さっきのすげぇ魔法を誰が使ったのかは分からないが……ここらで選手交代だ」
そこには鎧を着た二人の美男美女。剣を片手に持ち、体を炎や光で纏っている姿は先程の世莉架の魔法のように現実離れしている。
「……やっと来たのか」
ガルグは口角を上げる。強者と戦うことが好きな者にとって、その二人と戦うことは歓喜すべきことだろう。
「お前ら……!」
「すまん、待たせた」
「遅くなってごめんなさい」
アルファとエルファ。他の冒険者や兵士を遥かに凌駕する実力の持ち主二人がついに魔王軍幹部の一人であるガルグと合間見えた。




