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【最終章・序話】

 第一の発見者はこう述べたという。


「入口も、床も、天井も、何から何まで黄金で出来ていた」と──。


                  ◇


 トランパル近郊、二人の冒険者が歩いている。

 彼らはそれぞれ遺物の入った袋を手にし、街へと帰る途中だった。


「へへっ、しっかし大量だな。これでしばらくは飯に困らねえ」

「お前がまた賭け事に使わなければの話だがな」

「許せって、散々謝ったろ」


 二人とも、和気藹々と軽口を言い合いながら、帰り道を歩いていた。

 日も暮れ始め、人間は彼ら二人しかいない。

 出来るだけ急いで帰らないとな、と片方の冒険者が口にした直後の事だった。


「ん……おい、なんかヘンじゃないか?」

「何が?」

「ほら、なんかあの辺り歪んで──」


 そう言い切る前に、空間が大きく捻じれるように歪み──光った。

 あまりの眩しさに思わず目を塞ぐ二人。光は数秒間持続し、ゆっくりと消える。

 恐らく目の前で迷宮が現れたのだろうと考えていた二人だったが、眼を開けるとそこには──。


「な……なんだありゃ……!?」

「眩しい……! 外壁が金色だ!」

「いいや、ありゃ間違いなく金だ……"黄金"だ!」


 まるで神殿のような佇まいの、黄金で出来た地下への入口が出来ていた。

 二人はその荘厳としたそれに恐れ慄き、急いでトランパルへと逃げ出す様に走り出した。

 

 噂で聞いた事がある、全てが黄金で出来た迷宮があると。

 生きて戻って来たものは数える程度で、何人もの人間を飲み込んできた"魔宮"があると。

 二人はそれが目の前に現れたのだと、すぐさま理解した。


                  ◇


 白と金で彩られ、まるで宮殿を思わせるような廊下を、白いフードを深く被った人物が歩いている。

 その人物が向かう先には一つの巨大な扉。こちらも豪勢な作りである。

 人では開かないような大きさの扉だが、その人物が手をかざした途端、ゆっくりと開き始めた。


 扉の先は、まるで外を思わせる広い空間が広がっている。

 青々とした空、浮かぶ雲、広い草原、草原を点々とする花畑──そして、その中心に存在する小さな白い家。

 フードの人物が向かう先はその家の、柵で囲われた庭である。

 

 庭は綺麗に整えられた低木と、野外用の白い小さなテーブル、白い椅子が二つ。

 その椅子には、白に近い金色の肩まである長い髪に、透き通るような青い目を持った男性が座っていた。

 フードの人物はその男性の前へ立つと、その場で跪く。


「転移は無事完了しました」


 その人物は声からして女性であり、男性はにこりと微笑んでその人物を迎える。

 彼女は跪いたまま、その男性へと向けて話し続けた。


「……お身体の調子はいかがでしょうか──"カルーン様"」


                  ◇


 ──迷宮測量士や冒険者が踏破を夢見る迷宮がある。

 彼らが欲しいもの全てを与えるとされる迷宮がある。


 最高にして最難関、生還者はほんの僅か。

 それでもなお、人々を惹き付ける未踏の迷宮がある。


 その迷宮の名は──。




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          "ハズレスキルから始める迷宮測量士"


             ~最終章 "黄金の迷宮"~




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