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クズが異世界を通ります  作者: 山崎トシムネ
第5章「セオス教」
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「器」

セオス教徒の崇める唯一にして絶対の神、創造神セオスの巨像を中心にして、山嶺を削る様にして造営された教国の首都。



巨像の背後にあるセオス教の聖地でもある教会では、創世官と大神官達が集まりセオス教総本山、セオス教国の円卓会議が開かれようとしていた。



「皆の者、今日の議題についてじゃが…」



進行役の大神官がそう声を発したところで…



「本日は私が仕切らせていただきます」



スラリと現れた男の背中には、人のものとは思えない大きくて純白の翼が生えていた。



現れた男は懇切丁寧な口調で続ける



「セオス様の予言通り、"器"が現世に出現。私自らが確保に向かいました」



男がその様に口にすると…




「おお!」



「器がついに現れたのか!!」



「生きているうちこのような奇跡を見れるとは…」



大神官達は驚嘆の声を上げ、中には涙する者もいた。



誰もが口々に喜びの声を上げる中、1人険しい表情を浮かべた男…


セオス様の実質的なトップ、創世官は周りの雰囲気とは異なり、重苦しい声を発した。



「器は…どこに出現したのだ?」



創世官の言葉を受けて、浮き足立っていた議会の面々は、再び厳格な雰囲気に戻り天使に注目する。



「流石は創世官、そこを気になさるとは…。セオス様に1番"近い"だけの事はありますね」



天使は微笑みを送るが



「そんな事はどうでもいい。私は教典に導かれているだけだ…。それで、どこなんだ?器が出現したのは」




天使は創世官の言葉に対し顔色一つ変える事なく、続けた。



「バフース。元帝国領バフースです」



天使の言葉を受けて、議会は静まり返る。


やがて誰かが口を開く。



「バフースといえば、今やあの…」



「ああ、人外供の長。魔王などと語る奴が治めているのではなかったかの?」



「じゃとすると…」




「非常に厄介だ」



創世官は険しい表情を浮かべて、そう呟く。




「でも器自体は確保したんじゃろ??」



「ええ、ですが教典にもある通り…」



「"器"、"場所"、そして"生贄"が揃わなければならん」



議会の面々の表情はより一層険しくなる。




「ならば…戦争しかあるまい?」



大神官の中でも最も高齢な神官はその様に発言した。




「我らには"使徒"を始め、"光"という切り札もある。セオス様の為には戦争しかあるまい!」



「そうじゃ!!バフース一帯を完全に押させなければ…。なんて言ったって正確な位置は誰にも分からないのじゃからな」




「しかし…どうやって"山越え"を?大山脈をどのように越えるというのじゃ?」



「それに魔王とやらの軍勢もじゃ、あの帝国が手も足も出ずに敗れたのじゃぞ?今も続々と亜人供が各地から集まってると伝え聞く…。戦争したとて、本当に勝て…」




大神官はそこまで口にするも、言葉を飲み込んだ。



何故なら、天使の男がいつのまにか手に持っていた槍が目の前に突き刺さっていたからである。



「それ以上は神への冒涜ですよ。神セオスに敗北などあり得ない。そしてそれは、セオス様に作られしこの国とて同じ。その様な発言は控えて頂きたい」



「す…すまぬ。不敬であった」



「わかれば良いんですよ。神は寛容ですから」




思わぬ形で中断してしまった議会だったが…



「現実的な話はまた今度だ。取り敢えず器を連れてきてくれ。セオス様の御言葉を頂戴しようではないか」



「そうですね創世官。我々が語り合うよりも神の御言葉を頂戴した方が早い」



天使はそう言うと、1人の男を連れてきた。



「こちらが器を賜ったライナスという青年です」



「何だここは…お前達は誰なんだ?!」



ライナスは周囲の状況を飲み込めずに、慌てふためいているようだ。



「どういう事だ??」



創世官の言葉に天使は



「今は"降臨"していなさらない為か、神の言葉も聞けないみたいです」



「具体的にはいつ降臨なさるんだ?」



「さあ?セオス様の機嫌次第でしょうか?」



「なら待つとするか…、我らが主人の言葉を」



「そうですね。それと彼を酷使し降臨させ過ぎると壊れてしまう恐れもあるかもしれませんので、神の言葉を聞くのは程々にして下さい」



「ああ、変えの器を用意するのは容易いが…神に選ばれたこの青年を大切にしてやろう。…神の供物として」




「おい!何だよ!!誰なんだよお前達は?!タバタはどこだ?!おいっ!!タバタっ!」




教国の円卓会議の会場には、青年の悲痛な叫びが響いていた。

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