「骨戦士」
「どういうことだよシャーリー!今あいつが使ったのって…」
「ふふん!見たでしょ??…そう!スケルトンウォーリアーはなんと、、、闇属性魔法が使えちゃいまーす!!」
驚愕する利央とは裏腹に、シャーリーの顔に浮かぶのは満面の笑み。
「いやいや!闇属性魔法ってそんな簡単に使えないもんじゃ無いの?!魔王しか使えないってゆー伝説のやつじゃ無いの?!?!」
取り乱す魔王に対してシャーリーは
「だーかーら!貴方しか使えないんだから…貴方の魔力を勝手に使わせてもらったのよ!あなたの身体の一部をね」
「え?!…いつ?!どこで?!?!何を?!?!?!」
「ちょっ、落ち着きなさいよもう…、そんな大したもんじゃ無いわよ。毛よ!毛!髪の毛を少しだけよ」
「あっ…なんだ。髪の毛か。てっきり使用済みのてぃっ………。いや、やっぱいいや」
「??…兎に角、貴方の魔力を内蔵させたからあーやって闇属性魔法を使えるって訳よ」
2人の会話を他所に、ゴブ一郎は6本の腕にそれぞれ異なる武器を持った巨大な骸骨と改めて対峙していた。
「ジーバ殿とシャーリー殿が作っただけはありますね。リオ様より授かりしこの力まで使うとは…」
普段は武人然とした口調のゴブ一郎だが、次の一言は
「面白い」
と心底楽しそうな、普段の彼からは想像もつかない笑顔と口調で笑っていた。
そんなゴブ一郎と対峙するスケルトンウォーリアーだが、その名の通り髑髏の顔に表情は無い。
主人の命令のまま動く殺戮マシーンは、ゴブ一郎の動きをじっくりと観察しているかのように微動だにしない。
「ふっ…様子見か?ならこちらからいくぞっ!」
「…」
ゴブ一郎は右腕に魔力を集中させ、黒いオーラを纏わせる。
「まだまだねゴブ一郎さん。…こうかしら?」
シャーリーは目を閉じ、何やらブツブツと魔法の詠唱を始めたようだ。
「ん?…え?!、あいつってシャーリーが動かしてんの?!」
「………」
シャーリーが何かを唱えると、スケルトンウォーリアーは6本ある腕全てに魔力を宿し、黒く禍々しいオーラが腕を包んだ。
「一本対六本…勝ったわね」
シャーリーの言葉通り、スケルトンウォーリアーは6本ある腕を一斉にゴブ一郎に向けて振りかざす。
「あーあ、甘いねシャーリー」
「?!」
腑抜けた利央の言葉が聞こえた直後、シャーリーは魔力で繋がっていたスケルトンウォーリアーとの通信が途絶えた事に気づく。
「なに?!?!なにが起きたの?!?!?!」
困惑するシャーリーだったが、訓練場に目を移すと、全てを理解するのだった。
「嘘…負けたの?…こっちは6本だったのよ?」
見ると、粉々に砕けた6本の腕が地面に転がり、腕失ったスケルトンウォーリアーが呆然と立ち尽くしているかのように佇んでいた。
「力の使い方…ですかね」
普段通りの口調に戻ったゴブ一郎は、ボソッとそんな事を呟くと、戦いの様子を呆然と眺めていた挑戦者達の元へと向かう。
「まだやるか?」
「い、いえゴブ一郎様。我々の負けです」
「はい…」
「ハッキリイウト、モウカラダガウゴカナイ」
「空も飛べねぇしなぁ」
「鱗もボロボロですよ」
5人は清々しい顔で敗戦を受け入れたようだ。
「さっすがゴブ一郎。やるねぇ」
「ねえリオ。なんでスケルトンウォーリアーは負けたのかしら??決して弱い魔力じゃなかったし、ゴブ一郎さんと同じように貴方の魔力を元にしてるのよ???」
シャーリーの言葉に、利央は僅かに呆れ顔を見せると
「はぁ…。シャーリー、スケルトンウォーリアーは確かに俺の模造品…てか劣化品だけど。あいつは違うだろ?」
「で、でもゴブ一郎さんだって初めは…」
「あいつの力はもはや俺のコピーなんかじゃないよ。何百、何千時間と鍛錬してあいつのオリジナルになったんだよ。コピーじゃオリジナルには勝てないのさ」
利央はあたかも自分が世紀の名言を残したかのように、渾身のドヤ顔を決めるが…
「ふぅん…。なんとなくわかったけど、、、こぴーって何?!おりじなるってどういう意味なの?」
「………」
利央はお互いの健闘を称えあっている武闘会の参加者達と、それらに対して送られている惜しみない拍手を尻目に、なんとも言えない表情で会場を後にするのだった。




