「バフース攻防戦」
「警報を鳴らせ!!急ぐんだっ」
帝国領最南の都市バフースを、数多くの帝国兵が慌ただしく駆け回っている。
バフースは強固な城壁に囲まれた城塞都市でもあり、並みの軍隊なら攻略するのに時間と手間がかかるはずなのだが…
「敵はスケルトンの軍勢だ…人外の可能性が高いな」
慌てふためくバフースの守備隊を見ながら、帝国の絶対的権力の象徴でもある"元帥"からこの地の守備を任せられている守備隊長はそう呟いた。
アンデットや亜人の連合軍であった場合、城壁そのものが役に立たない可能性も出てくる。
死が死では無いアンデットの人海作戦によって、積み重なった死体を利用したケースやオーガやバグベアなどの巨大で怪力の亜人による怒涛の攻撃によって城壁が意味をなさないケースが過去何度も確認されている。
仮にそうなってしまった場合
「帝国軍の主力である10軍団のどこかに助力を求めるしか…」
いくら帝国軍の装備が優秀だからといっても、亜人の戦闘力や数の暴力の前には敵わない。
現時点で敵の総数は不明だが、人外の敵の相手にした我らがすべき事はただ一つ。
「援軍が来るまで持ちこたえるぞ!バフース市民を守るのだ!」
守備隊長は自らを鼓舞する意味も込め、近くにいた兵士達にそのように言い放った。
それにしても…
決して小さくは無いバフースが丸々包囲されているとは…一体どれだけのスケルトンがいるのだ?
それにそれだけの数を用意し、使役する敵とは一体…。
今までに経験したことの無い敵に守備隊長は一抹の不安を感じながらも、冷静に現状について思考を巡らす。
何か上級の…いや、下手をしたら災害指定級のアンデットや亜人が統率しているのでは?
兎に角、微動だにせずに包囲を続けるスケルトンは取り敢えず放っておいて
「観測魔導師!索敵はどうなっている?」
「はっ!それが…妨害の魔力干渉を受けていて、周囲の状況が観測できません」
「何?!」
どういう事だ?!帝国の観測魔導師を妨害出来るなど、熟練の魔術師でも難しいはず…
そんな時だった
ドォゴォォォォォオオオ!!!!
凄まじい音が響き渡った。
「何だ?!何が起きた?!?!」
「報告します!飛来した黒い球体がバフースの防御魔法と接触…防御魔法が崩壊したようです…」
「何?!?!不味いぞ…それでは敵の魔法を防ぐ術が…」
「敵方より魔法が飛来!!!各員衝撃に備えよ!!!」
見張りの兵士から声が飛ぶ。
直後、バフースの城壁に数え切れない程の魔法攻撃が炸裂したのだった。




