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クズが異世界を通ります  作者: 山崎トシムネ
第3章「魔王軍編成計画」
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「暗躍」

「上手くいったか?」



眼鏡と呼ばれる高価な魔道具に全身統一感のあるタキシード。



オベロン王国において王族に次ぐ最高位の身分である公爵位を預かる男、ルシュコール公は明かりのない暗い部屋の中で闇に向かってそう声をかける。






「………はい」






闇から現れた男は全身にボロボロの皮装備を纏った、肌が異常に白く見るからに不健康そうな男。




彼こそが王国に3つしかない白銀等級冒険者パーティの1つ、沈黙の影所属の"殺糸のシュウ"。




「良くやった。…下がれ」





シュウは再び音もなく闇へと消えて行く。














これで帝国との争いに"あの男"を引っ張り出せたな。






報告によると奴は亜人たちを庇護し、瞬く間に大国と張り合える程の強力な軍隊を作り上げたらしい。








そして対峙した帝国軍の1軍団を容易く殲滅か…












やはり使えるな。










いや、想像以上だ。






奴を追いかけようとしていたピーターの足止めをして正解だった。






ピーターの足止めには幾らかの犠牲が出たが、それに見合う効果が期待できるはずだ。





あの時の奴には時間が必要だったからな。






強固な軍隊を手にした奴にはピーターも気軽に手出しはできないだろう。







それもそうだ。あの男にはもっと働いてもらわねば困るのだよ。










私の"野望"の為に。










ルシュコール公は不敵な笑みを浮かべて、闇に向かって手招きをする。








闇から現れたのは異様に肌の白い幼い少女だった。




真っ白な髪の毛はさながら雪のように白く透き通っていて、端正な顔立ちは将来さぞかし美形になると確信させられる。






そんな少女だが、彼女の表情は先程から全く変化しない。




…というか少女には表情そのものがないのだ。











「お前の為にもだったな」







ルシュコール公は少女の頭を撫でながらそう呟いた。








頭を撫でられるが、相変わらず少女は無表情のままであった。






































「リア隊長!!急いでくださいよ〜」


「わかってるわ!!あと少しだけよ」




リアは彼女と同じ金属鎧に身を包んだ少女に涙目で懇願されるが、それを意に介していない様子だ。




「急がないと本当に見つかっちゃいますって!!!リア隊長ー!!」




半泣きになっている少女の名前はハンナ。ナオス騎士団所属であり、リアにとって初めての部下である。




彼女たちが所属するのはナオス騎士団で最近作られた新たな部隊の"闇属性魔法対策隊(仮)"である。





隊員はリア・タナルカ・アーネル隊長以下、見習い騎士のハンナの2人のみである。





彼女たちの任務はその名の通り、王国中を騒がせた闇属性魔法の使い手に関する情報を集めることなのだが…




「あれは!!!"人狼"では?!…彼らは力のある者の言葉しか受け入れないはず…なぜゴブリンの命令通りに動いているのかしら?!」


「隊長ぉ〜!!そんな事よりも早くしないと見張りのオークが帰ってきちゃいますって!!早く逃げましょうよ!!」



ハンナは自分のおさげをいじりながら、涙ながらにリアに訴えるが




「貴方は先に帰ってて良いわよ、私はもう少し観察してから行くわ」



「帰るって…この大森林の中を一人でなんて無茶ですよ〜。もぉー、隊長〜」






なんなのよこのめんどくさい子は…。




完全に他の隊でお荷物だから私のところに回されて来たのね。



初めての部下がこんな子だなんて…


これなら1人の方がよっぽど行動し易いわ。



やがて我慢の限界が来てしまったのか、ハンナは突然


「た!!い!!!ちょー!!!!!!帰りましょうってー!!!!」


耳に響く程の大声を張り上げる。




「?!?!バカ!!何やってるの!!!」


「だって隊長が〜」




「ナンダ!!!オマエラハ!!!」




「あっ!!」


「もう…なんでこんな子が…」





彼女たちは見張りのオークに見つかってしまうのだった。

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