「衝突」
「誰だ?!」
コーカスは叫ぶ。
「やべぇ?!俺らの会話聞かれてね?これ??」
「リオ様…威圧も兼ねて拡声魔法を使うと先程言ったはずですぞ…」
「さっき言ったばっかりじゃない…」
「…」
「…ちっ、違うから!わざとだから!!わざと相手に聞かれてる事に気付いてない事にして相手を油断させ…違うな、気付いてない事に気付かない振りを…ん?よく分からなくなってきた…」
「…バカね」
「とにかく!!…えー、どこの国か知りませんが俺の生活を脅かすような…何だっけジーバ君?」
「軍事行動ですな」
「えー、脅かすような軍事行動は我々に対する宣戦布告と捉えるので…攻撃されても文句は言わないでくださーい。これで良い?」
「ばっちりですぞ」
「よしっ!!じゃあマイク…じゃなくて拡声魔法?切って良いや」
「了解ですぞ」
会話はそれ以降聞こえなくなった。
森が再び異常な静けさに包まれる中、帝国軍第4軍の兵士は皆、互いに顔を見合わせる。
団長のコーカスもまた聞こえてきた会話に対して、理解が追いついていない様子である。
「今のは…何だったのだ?」
とても戦場にあるとは思えない気の抜けた会話が聞こえてきたが…
聞き逃せない言葉があったな。
奴らは攻撃するような趣旨の事を言っていたはずだ。
そう考えると、やはり我々を包囲している連中の頭と見て間違い無いだろう。
不味いな。
我々が帝国軍だと知って撤退してくれれば被害も出ずに済んだのだが…。
敵は我々を国の軍隊だと認識した上で攻撃すると言っていたな、それにどこの国かはあまり気にしていない様子であった。
盗賊や傭兵にしては数が多すぎるし…
奴らは一体何者なのだ?
コーカスは思考の渦にハマっていく…。
「よーし、じゃあ始めますか?」
「我らの準備は出来ていますリオ様」
「私もいけますぞ」
「私も行けるわ」
皆準備出来ているようだ。
しかし…
これから俺がする事によってもしかしたら人が死ぬかも知れないんだよなあ。
それも俺の下らない欲望のために…。
うーん、罪悪感はあるけどさ。
人生ってそんなもんじゃん?
バナナの皮で滑って死ぬのと、俺の下らない欲望の犠牲になるのと何が変わるっていうのさ!
運が無かった。ただそれだけのことだよ。
というか…俺は魔王なんだから一々そんな事気にしてられないよね。てかもっと人間を殺すべきとすら思う訳よ。
「…どうしたの?怖い顔して」
「え?!…ああ、なんでも無い。じゃあ俺に合わせて一斉にいくぞ」
おかしいな、今までそんな事思ったこと一度も無かったんだけどな。
とにかく、目の前のことに集中しよう。
あれこれ考えるのは終わった後でいいや。
「よし…今だ!!!」
利央が闇属性魔法を人間の軍隊に放ったのを皮切りに、エリートゴブリン軍団にジーバ君、シャーリーが一斉に魔法を放った。
魔法は帝国軍内で凄まじい威力で炸裂したのだった。




