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僕の仲間は60,000,000,000,000(60兆)人もいる。  作者: キヨ
第三章 60,000,001,000,000『人』に達した動員数のライブ
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第四十一話 波乱万丈な「女神参拝式」 女神、死す

「こ、これは……あ、そう!聖壇から降りて直々に奉納品をお受け取りになるとは、まさしく女神様が信者を迎える儀式における『限定版』ですね!きっと安達さんは誠意が女神様を深く感動させたとあって、この最高級の礼遇を受けたのでしょう!」


 司会者の考えもどうやら僕の意図と合致したようで、「月隠の顔」のアドリブをうまくカバーしてくれた。


 確かにファンたちの不満を和らげる効果としてはほぼゼロだったが、少なくとも他人が僕と「月の女神」二人の関係について邪推するのをある程度防げた。


「ご主人様、只今さぞご満悦のことでしょうが、ご両親からのお言葉を忘れないでください……」

「はいはい~覚えてるよ! 安心したまえ!これは全て文緋が、俺にサプライズを仕掛けるために意図的に演出してくれた『雰囲気』なんだ!」

「恐れ入りますが、拙者にはその意味が理解できません。」

「見てれば分かるさ~」


 下界に降り立った「月の女神」は、オープニング時の熾天使の姿ほど華やかではないが、僕との距離を縮めようと懸命に努力するその姿は全く変わっていない。


 ほんの十数歩のやや乱れた足取りで、一見越えられないと思われた天の川さえも乗り越えた。


 先ほどの言葉を撤回する。今、僕が立っているこの場所こそが、女神様に最も近い場所。


 なぜなら、この瞬間、二人の距離は、どちらかが手を伸ばせば互いに触れ合えるほど近いからだ。


 生憎、全国に生中継されるカメラの前では、司会者や機動隊の目の届きうる場所では、僕が黙り込むほかない状況は不変のままだ。


 従って、僕はあの定番の白い歯をむき出しにした笑顔で彼女を迎え、両手で彼女が夢にまで見た「奉納品」を差し出した。


 彼女の体には微かな震えが続き、仮面の下からは息遣いが漏れ聞こえる。


 両手を上げるという極めて簡単な動作さえも、力尽きそうにせざるを得ない様子。


 単に雰囲気を醸し出すだけなら、少し役に入り込みすぎているのではないか?


「ご主人様、『月隠の顔』の様子がおかしいです!このまま続けるのはあまりにも危険です!」


 と、目が注意を与えてくれた。


 実のところ、初っ端から、いわゆる「雰囲気づくり」などという論点は全く説得力がないと分かっている。


 何より大事なのは、彼女がこの花束を受け取り、このライブの残りのごくわずかの手筈を完遂さえすれば、家族の誇り、個人の成就、兄妹の約束、賭けの勝利――何もかもが、最も完璧な形で完結するということだ。


 未来のことなど、未来の僕たちに任せておけばよい。


「文緋がこの瞬間のためにここまで耐えてきたのだから、俺が臆する理由などあってはならない。」


 彼女の震える手が、僕の花束まであと数センチだけしか離れていない。


 その距離がゼロになった時、ハッピーエンドが予定通り訪れる。


 何も飲み込んでいないのに、喉元は本能的に、嚥下動作を繰り返している。


 まぶたも、まばたきの仕方を忘れたかのように、一瞬たりとも閉じようとしない。


 その時、花束を包むフィルムがサラサラと音を立てた。


 それは外部の物に触れた時にだけ響く音だった――


 距離=ゼロセンチ。


 その両手はついに花束と触れ合う瞬間を迎えたが、ハッピーエンドは訪れなかった。


 距離を示す数字は「ゼロ」にほんの一瞬留まっただけで、花束に指紋を一つ残す時間さえなく、再び大きくなっていった。


 というのは、彼女の両手は花束をただ掠めただけだったからだ。


 その後、彼女の二の腕、肩、そして身体ごとが、僕の方へと倒れ込んできた。あたかも長年風雨にさらされたりした挙句、とうとう自身の重みを支えきれず、轟音と共に崩れ落ちた塔のように。


 その仮面は僕の胸の真ん中に直撃し、服越しに僕の心を粉々に砕いた。


「お兄ちゃん……ごめんね……約束を守れないのが……私……」


 その言葉は、あの仮面の下から漏れ出た、最後の微かな声だった。


 それっきり、何も聞こえなくなった。


「嘘だろ……嘘だよね……お前ってば……今さらこんな下手な演技で俺を驚かせようとしたって……引っ掛からないんだぞ……」


 左手で彼女の氷よりも冷たい体を抱きしめ、何度か優しく揺すってみたが、何の反応もなかった。


 焦りのあまり、より強く揺すりながら、彼女の耳元でヒステリックに叫び始めた。


「おい……頼むから、もうこれ以上、俺を苦しめないでくれ!!!早く起きろ―――!!!」

「全員注意! 直ちに緊急事態対応計画通りに実行せよ!」

 


 ―――――――



 ステージ上から突然、けたたましいアナウンスが響き渡った。


 わずかな雑音は混じっていたが、北崎さんが発令していることははっきりと聞き取れた。


 命令が下るやいなや、現場の生中継の電波は即座に遮断され、次に舞台の中央エリアが下から昇ってきた巨大な金属製遮光ドームに覆われた。


 外側からは内部の様子を全く覗き見ることはできないが、その中にいる者は外での全ての出来事を見ることができる――


 この前、僕の冗談っぽく言った「史上最大規模かつ最も激しい集団暴動」が、なんと的中してしまいそうに、この遮光ドームの外で繰り広げられている。


 言うまでもなく、「月隠の顔」が突然倒れるのを目撃して取り乱したのは僕だけではない。


 ファン全員が、この世の終わりのようなパニックに陥っていた。


 絶望の悲鳴や泣き叫ぶ声が、立て続けに岸に押し寄せる波のように、遮光ドームの中になだれ込み、ファンの中にはステージに突進しようとさえする者も現れ、危機に瀕した「月の女神」を奪還しようとした。


 幸い、ずっと小屋を護衛していた機動隊が、先陣を切って襲いかかってきた数千人のファンをいち早く制圧し、さらに会場外に待機していた機動隊の大部隊が増援に駆けつけてきたおかげで、この正気を失いかけた「大軍」の暴挙を食い止めることができた。


 一方、遮光ドームの中の者たちも手をこまねいていたわけではない。ただし、人数はかなり増えていた――


 伊久美秘書が、数名の職員、医療チーム及び機動隊隊員4名を率いて、ドタバタとステージ中央の昇降装置から事故現場にやって来た。


 彼女たちがここに来た理由は見当がつく。僕の懐から「月隠の顔」を奪い取るためだ。


「安達さん、どいてください。後始末は我々が引き受けます。」


 少し前まで僕に敬意を払ってくれた伊久美秘書が、今は厳しい口調で、「月隠の顔」を強く抱きしめて離そうとしない僕に命令している。


「後始末だと……?彼女はてめえらの荷物か……それとも商品か?」


 派手な衣装の下には、微塵の温もりも、血管の鼓動もなく、胸元の律動さえもない。


 彼女を「商品」と呼んでも過言ではないだろう。何しろファッション店のショーウィンドウに展示されているマネキンも、まさにこんな姿だからだ。


「どうか冷静になってください!彼女は今、救助を必要としているのです!」

「彼女をこんな有様にしちまったのはてめえらだ……この忌々しいライブのためにな!!! 罪人の分際で、救助って言う資格なんてあるものか……笑わせるな……」

「どうやらまともな話し合いはできそうにないです。となると、力ずくで対処させてもらうしかありません!」


 四人の機動隊隊員が駆け寄ってきて、僕と「月隠の顔」を強引に引き離そうとする。


「細胞たち!いいか!どんな手段を使っても構わん!絶対に妹を彼らに奪われてはならない!」

「つまり、攻撃的な手段を使ってもいいっていうことですか?」

「どうするかはお前たちの勝手だ!とにかく俺の命令を実行しろ!」


 他人を傷つける行為に正当性と必要性を与える理由は、これほど簡単に見つかるものだったのか。


「でもご主人様、そうしても妹さんの役にあんまり立たないような気がします……」

「そうですね、この人間たちは『月隠の顔』を心から助けようとしているみたいですし、拒絶するべきではないのではないでしょうか?」

「お前たち、一体どうしたんだ!俺の命令に逆らうつもりか!」

「ご主人様、拙者はあの秘書の言ったことが正論だと思います。妹さんを手放すべきです。」

「何だその言い草は?心臓さんまで俺を裏切るつもりか?どうでもいい!協力してくれないなら、お前らなんて要らん!俺一人でも彼女を守れる!」

「正気を取り戻せ!!!理性を失ったり、自棄になったりした兄に、妹を守る力なんてありゃしねぇ!!!」


 精神空間での心臓の怒号が収まったら、現実世界では、彼女の背中にへばりついていた僕の左手が、力なく垂れ下がった。


 機動隊隊員たちが意識を失った「月隠の顔」を地面に横たえてから、医療スタッフが素早く近づき、彼女の容態を確認しようとする。


「状態は危篤です。直ちに病院へ搬送しろ! 搬送中も常に救急処置を施さなければなりません!」

「了解です!」


 僕はそのまま地面にぼんやりと座り込み、担架に乗せられた彼女が搬送担当の者たちと共に、昇降装置に乗って消えていくのを静かに見送った。


 涙が滝のように、水分を失った赤いバラに降り注ぎ、しおれた花びらに潤いを与えようとしている。


 残念なことに、涙と花びらの間には、どうにも浸透できない薄いフィルムが挟まっている。


「ついてきてください。彼女にとって今一番必要なのは、家族がそばにいてくれることです。」


 涙で濡れた顔を上げると、ぼやけた視界の中に伊久美秘書が現れ、僕の前まで来てそう言ってくれた。


「ご主人様、先ほどの無礼な口答え、深くお詫び申し上げます。しかし、どれほどあの人間たちを恨んでいようとも、現時点でこの人間たちを信じるよりほかありません。」


 心臓の忠告を聞いた後、僕はもがきながら地面から立ち上がった。すると突然、四角い物がズボンのポケットから落ち、足元に転がった。


 それを拾い上げると、後悔の念はさらに深まった。


「もしあの時、花束じゃなく、このお守りを彼女に渡しておけば……こんなことにはならずに済んだかもしれない……」


 僕は右手で花束を、左手でお守りをしっかりと握りしめ、外で強制的に退場させられたファンたちとは反対の方向へと歩き出し、伊久美秘書に続いて昇降装置に乗り、天国と地獄の両方へと通じるその分かれ道へ赴いていく。


 不甲斐ない兄風情には、文緋の進む方向を導く力があるかどうかは分からないが、少なくとも自分の方向だけは定められる。


 文緋がどちらへ進もうとも、僕は必ず、彼女のそばにいてあげて、共に歩んでいく。

補足


余計な話かもしれませんが、このエピソードのタイトルは『城之内 死す』っていう名タイトルとは一切関係ないです!(笑)

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