第一話 宇宙から帰還した死者
読者の皆様、こんにちは。こちらで私の拙著を少々紹介させていただきます。初めての執筆ですから、素人としての私にご指導やご教示いただければ幸いです。本作品は外国語で作成された原稿を日本語に翻訳したものでございます。そのため、語弊や言い方が不自然な箇所も少なくないに違いません。もしかしたら不適切なところがありましたら、どうかご指摘ください。心より感謝いたします。
なお、本作品は実在の人物や団体とは一切関係がありません。現実世界の出来事などと結びつけて考えないでください。
ご愛読の作品になれますよう励んでまいります。
広大な宇宙には、私たちの太陽系と全く同じパラレル太陽系が存在している。
その中には、私たちが住む地球と全く同じ惑星も含まれている。ひとまずそれを「地球型惑星」と呼ぶことにしよう。
21XX年4月20日、パラレル太陽系の火星。
時折、小さな天体がさっと通り過ぎる以外は、火星とその周辺の空間は普段と変わらず、死のような静寂に包まれている。
その日、地球型惑星からやって来た小型宇宙船が火星の大気圏を高速で通過し、火星表面のとある小惑星衝突の残骸の上空で徐々に減速し、その付近に穏やかに着陸した。
コックピットから、一人の宇宙飛行士がゆっくりと降りてきた。彼は、地球型惑星に比べてはるかに弱い火星の重力に、すっかり順応しているようだった。
この頃、地球型惑星における人類文明は、既に火星への着陸に成功し、しかも定期的に探査を行うことができるほどまで発展していた。
しかし、資金不足や各国間の意見の食い違いなどにより、人類はなかなか火星に基地を建設できていない。
「まったく、最近は虎視島宇宙センターも万象国国家宇宙局も、予算がものすごく足りねーみたいだなあ。自動サンプリング装置やサンプリングロボットを搭載した宇宙船を1機でも割り当ててくれないものか?また船外に出させられて、小惑星のサンプルを手作業で採取しなきゃならないなんて……」
と、宇宙服のヘルメットの下から、少し童顔っぽい男性の顔を持っている人が、ごく小さな声でつぶやいた。
「安達君、こちらは虎視島宇宙センター。聞こえたら応答せよ。」
「了解。予定通り着陸しました。サンプリング作業の準備が整いました。」
「よろしい。サンプリング完了後は、必ず手順通りに従って試料を保管すること。我々は帰還プロセスを常に監視し、安全な航行を保証してあげる。通信を保つようにしろ。」
この「安達君」、本名は安達池。22歳の陽の国の天才宇宙飛行士であり、おそらく地球型惑星における人類史上最年少の宇宙飛行士でもある。
学者の家庭に生まれ、父の安達政はかつてノーデル物理学賞の候補にノミネートされた現代物理学者であり、母の安達十香子は数カ国語に精通している文学者で、現在は陽の国の名門大学の文学部で講師を務めている。
幼い頃から宇宙探索に深い興味を抱いていた安達池は、人生の目標を最初から「世界最年少の宇宙飛行士」になることに定めていた。
さらに、両親から高い知能をしっかりと受け継いでいてこそ、彼の宇宙飛行士への道のりは順風満帆だったと言える――
「名門学者一家の神童」として頭角を現し、小学校から中学校にかけて極めて優秀な成績で連続して飛び級を果たし、12歳で難なく高校に進学した。
高校2年時には、両親の指導のもとで大学レベルの物理課程を独学で修了したという圧倒的な強みを活かし、世界トップクラスの大学から特例による早期合格許可を得た。
大学で楽々と博士号を取得した後、陽の国の虎視島宇宙センターで2年間の訓練を受け、身体能力と宇宙船の操縦経験が基準を満たすと、21歳にして本物の宇宙船に乗り込み、国際宇宙ステーションへ向かい任務を遂行しに行った。
こうして、安達池の夢は正式に実現した。
安達池の履歴を見ると、まるでチートのような人生だと感嘆せずにはいられない。唯一の欠点といえば、おそらく池の容姿だろう――
目は小さいとは言えないが、ただ二つの穴であるかのように生気がない。
身長は184センチ、その屈強な体格は宇宙飛行士の基準を満たしているが、顔立ちは少し幼さが残っている以外はごく平凡で、街を歩いていても振り返られることは絶対にないタイプだ。
ちなみに、池は生まれつき薄茶色の短髪をしている。これなら振り返られる確率が10%くらい上がるかもしれないが、この髪色のせいで不良と見なされてしまうのだろう。
本題に戻ると、人生は順風満帆とはいえ、今の池にとっては腹立たしいはずだ。
たった1年の経験しかない新人だとしても、火星まで行かせてゴミ拾いのような雑用をさせるなんて、酷いじゃない?
当初は宇宙の深淵を縦横無尽に駆け巡るのを目指していたのに、結果として一年経っても、最も遠い到着地は火星に過ぎない。
それに対し、自分より経験豊富でベテランの宇宙飛行士たちは、すでに大型宇宙船を操縦して太陽系を飛び出しているのだ。これは池のやる気を多少挫いてしまった。
「本当に退屈だ……早く終わらせて基地に戻ってぐっすり寝よう。」
「プログレス100%。サンプリング完了。」と、サンプリング装置の画面に表示された。
「OK、これで終了。」
一見、何事もないようで平和なサンプリング作業だった。
――――――――
同じ時刻、虎視島宇宙センター第一発射場の中央ホール。
様々な計器や装置の前に座るスタッフたちは、作業に没頭している者もいれば、のんびりとコーヒーを飲みながら談笑している者、あるいは両手で頭を支えてリラックスし、交代を待っている者もいた。
要するに、ごく日常的な仕事の雰囲気だ。池との連絡を担当する3号台のスタッフたちも、コーヒーを飲みながら談笑している連中の一部だった。
突然、監視用大型スクリーンの画面がオフィスに座っている中年の男性に切り替わった。
「こちら、リチャード・ラィアード(Richard Laird)です。緊急事態が発生しましたので、全員注意してください。」
「リチャード教授!お久しぶりです。どうかしましたか?どうしてそんな真剣な顔をしているんですか?」
「源文国の宇宙観測システムから届いた情報によると、太陽系外で地球型惑星から約275天文単位離れた位置にある小型恒星が崩壊爆発を起こし、小規模なガンマ線バーストを放出したことが確認されました。地球型惑星への影響はありませんが、その放射線が1分56秒以内に火星表面の約3分の2に直撃する見込みです。可能性は低いものの、念のため確認させていただきます。現在、貴方の側の作業員が火星表面で作業を行っていますか?」
リチャード教授の言葉が終わった途端、3号台のスタッフの一人が手にしていたコーヒーカップを床に落とし、顔には恐怖が浮かんできた。
「まさか……安……安達君はまだ……火星でサンプル採取中……」
「安達君って、安達池? 私の教え子か? なんてことだ……すぐに彼に連絡して、直ちに宇宙船に戻って避難するように伝えろ!」
事態の深刻さに気づいた3号台のスタッフたちは、一瞬にして慌てふためいてそれぞれの持ち場に戻り、一刻を争って火星にいる池との連絡を取ろうとした。
「安達君、こちらは虎視島宇宙センターだ。聞こえたら応答せよ、聞こえたら応答せよ!」
無線機の向こう側から、怒鳴るような声が響いた。
「了解。ちょっと、そんなに大声で叫ばなくてもいいでしょう? 採集を終えたばかりなのに、そんなに小惑星のサンプルを分析したくてたまらないのですか?」
「火星にガンマ線ビームが直撃しようとしている。説明する暇はない!直ちに宇宙船に戻って避難しろ!」
「冗談だろ? そんなの間に合うわけないじゃないか……」
「これは命令だ! 死にたくなければ命令を実行しろ!」
他に選択肢はない。池は迷うことなく宇宙船の方へ「全速で」駆け出した。普通の重力環境で走れるスピードよりもはるかに遅いながらも、これが池の限界速度だった。
「あと半分……間に合うだろうか……くそっ、まだ若いうちに人類の宇宙開発事業のために命を捧げるなんて、まだ心の準備できてないのに!!!」
あと三分の一の距離だ。無事に宇宙船に戻れるはずだ。宇宙船をあまり遠くに停めておかなくてよかった。
「何も起きてないじゃないか。本部の連中、俺をからかってるんじゃないか?」
そこへ、池は背中に熱を感じた。
最初は全速で走っているせいだと考えたが、その徐々に熱くなっていく灼熱は、体温保持機能を持つ宇宙服の内側でもはっきりと感じられた。
それだけでなく、周囲も明るくなり、まるで真昼のように見えた。
やはり、もう手遅れだった。
この時、池は宇宙船まであと5メートル足らずの距離にいたが、大量の宇宙線に直撃されるという残酷な事実は、もはや避けられないものとなっていた。
たとえほんの数秒間であっても致命的な放射線量を受けるわけだ。
激しい灼熱感が池の全身を駆け巡り、まるで本当に猛火に焼かれているかのようだった。
宇宙服のヘルメットに表示されたパラメータ画面によると、この時点で受けた放射線量は、宇宙服の防護上限の21783倍にも達していた。
この宇宙服は、大威力の核兵器が至近距離で爆発した際に発生する高強度の放射線を防ぐように設計されていることを考えれば、池が今、どれほど恐ろしい量の放射線を浴びているかが想像に難くない。
「あああああああああああ!」
骨の髄まで染み渡るような灼熱感に、池は死ぬほど苦しかった。
イメージしやすく例えるなら、今の池は電子レンジの中で回転しながら加熱されている食べ物と似たようなものだろう。
もっとも、両者の原理は異なるのだが。
「終わった……もうダメだ……死ぬ……まだ22歳なのに……太陽系すら出ていないのに……こんなふうに死ぬなんて……死んでもごめんだ!!!」
しかし、抑えきれない好奇心に駆られ、池は光が直接に目に入ることによって失明するかもしれないという莫大な危険をものともせずに、体を横に向け、自分を殺そうとしているこの「宇宙の殺し屋」が一体どんな姿をしているのか、ちらりと振り返って見た。
これは人類がガンマ線バーストを至近距離で観測できるVIP席であり、千載一遇のチャンスだったのだ。
意外なことに、池の目は失明していない。
目に飛び込んできたのは、様々な色が混ざり合った眩い光が押し寄せる光景だった。それは目が眩むようにさせるものではなく、むしろ鮮やかで彩り豊かであり、まるで地球型惑星上のオーロラのようなものだった。
もっと大げさに表現すれば、神が降臨した際に聖なる光が大地を照らし、敬虔な信者たちがその温かな聖光に包まれるような感じだった。
ただ、今回は神が聖光の温度を高くしすぎたため、敬虔に拝む信者であった池は、さながら火で自身を焼く異教徒のようになってしまった。
この時の池は、宇宙船のハッチから数歩離れた場所に立っていた。
宇宙船に戻るという考えは、すっかり忘れてしまっていた。もはや意味がないものだから。
池の宇宙への夢、池の人生は、始まったばかりなのに、もう終わってしまうのだろうか?
約30秒間続いた、火星の大部分を白昼のように明るく照らし出したその光線は、その後急速に弱まり、やがて完全に消え去った。火星はまるで何も起こらなかったかのように元の明るさに戻った。
火星に取り残されている池は激しい灼熱感に耐えながら、意識が朦朧とする中、どうにか宇宙船に戻り、ぐにゃっと操縦席に座り込んだ。
「あとどれくらい生きられるだろうか?」
池の頭には、この考えしか残っていなかった。たとえその場で命を落とさなかったとしても、死亡は時間の問題に過ぎない。
池の頭の中には、かつて陽の国の小さな村で起きた核臨界事故の記憶がよみがえった。
その犠牲者の一人は、高線量の放射能に直接さらされたことから、DNAと細胞の染色体が完全に破壊され、数十日間にわたる残酷な苦痛の末に息を引き取った。
また、核兵器を素手で分解して実験を行い、不慮の事故で致死量の放射線を被曝した科学者も、同じ恐ろしい結末を迎えた......。
池はそれ以上、考え続ける勇気がなかった。
「もし俺もあんな風になったら、絶対に自殺する……なら、ここで死んだ方がマシだ……」
「安達君、安達君、聞こえたら応答せよ、聞こえたら応答せよ、頼む、絶対に答えてくれ!!!」
「まだ死んでませんよ……でも、もうすぐかも。」
「そんな弱気なことを言うな!すぐに国際宇宙ステーションから救助隊を派遣するから、今の体調はどう?」
「ほんの一瞬、自分が焼けてしまいそうな気がしました。」
そう答えた途端、池は体中の灼熱感がもう感じられないようだと意識した。
極度の緊張と恐怖感以外は、全身に目立った異常はない。きっと死ぬ前に元気が出るという現象なのだろう。
「宇宙ステーションの同僚たちには迷惑をかけなくていいです。自分で宇宙船を飛ばして基地に戻れると思います。」
「本当に大丈夫か? 無理は禁物だ。やはり救助隊を迎えに行かせたほうがいいんじゃないか?」
「いいんです。すでに点検しました。宇宙船の状態はすべて正常で、いつでも離陸できます。」
「そうか。じゃ我々は着陸地点で待っている。何かあったら必ず連絡せよ。」
通話が切れた。ヘルメットの下で、池の顔には涙が滝のように流れ落ちていた。
明らかに、池は自分のみすぼらしい泣き顔を誰にも見られたくないために、救助隊の派遣を断ったのだ。
死への恐怖と、短い人生への悔いが、このわずか22歳の若き魂を蝕んでいた。
「もし……もし上層部の連中が金ばかり考えていなければ……こんな目に遭わずに済んだのに……人を人とも思わないクソ野郎どもめ!!!」
怒りと苦痛を必死に抑えながら、池は宇宙船を起動させ、地球型惑星へと飛び立った。
――――――――
陽の国・虎視島の宇宙センター発射基地。
着陸エリアの近くにある安全区域で、宇宙センターの総指揮官である下田勝聡が医療チームと緊急対策班の隊員を率いてここに集結し、安達池の帰還を厳戒態勢で待ち構えていた。
「安達池が着陸したら、緊急事態対応規程の第2章第8項に従って対応する。覚えているか?」
「了解いたしました、長官。準備は万全です。」と、秘書が答えた。
「リチャード教授の方はどうだ?」
「こちらでの状況をすでに伝えてあります。教授は、すぐに万象国の宇宙局から来るとおっしゃっていました。」
「教師と教え子の絆は深いものだね。じゃ、今後の隔離観察には教授にも参加してもらおう。観察対象が自分の教え子だとしたら、きっと興味を持ってくれるはず。」
「承知いたしました。早速教授のスケジュールを調整します。」
「よし、これは非常に価値のある観察実験になりそうだ。安達池の家族にはまだ連絡していないだろう?」
「ご指示通り、まだ家族には連絡しておりません。」
「急いで連絡する必要はない。たとえ安達池が要求したとしても。私の言わんとすることは分かるだろう。」
「はい、長官、よく理解しております。」
――――――――
約5時間後、安達池の宇宙船が地球型惑星の大気圏に突入した。着陸エリアから見上げると、宇宙船の輪郭が次第にはっきりと見えてきた。
「安達池より管制センターへ報告です。着陸の準備が整いました。」
「了解。着陸エリア周辺はすでに空いている。いつでも着陸可能。減速のため、逆推力装置を起動せよ。」
とっくに慣れた着陸手順でありながら、どこか違ったような気がする。
誰もが心の中で分かっていた。これはまさに、史上最年少の宇宙飛行士が、広大な宇宙から故郷へと帰還する最終回なのだと。
宇宙開発界が、これから頭角を現すはずの新鋭を失おうとしていると思うと、気の毒さを禁じ得ない。
何事もなく、宇宙船は平穏に着陸した。すでに待機していた緊急対策チームが真っ先に駆け寄ってきた。
ハッチが緩やかに開き、池の姿が現れた。
そこで目にしたのは、かつてのように熱烈に出迎えてくれる地上スタッフではなく、頭からつま先まで強力な防護服に包まれた十数名の緊急対策チーム隊員たちだった。
予想通りだと言えるだろう。池は、これから自分が何に直面するのか、すでに理解していた。
「お帰りなさい、安達さん。このような形でお出迎えすることになり、誠に申し訳ありません。本来であれば、まず重力環境への再適応を待たなければなりませんが、時間が限られています。基地全員の安全を確保するために、医療チームへ引き渡す前に、お身体の表面および宇宙船の機体外部に残留した放射線の粒子を除去する前処理を行う必要があります。ご協力をお願いいたします。」
「了解です。すぐに始めましょう。」と、池は平静を装って答えた。
遠くの安全区域で状況を観察していた下田総指揮官は、すべてが手順通りに進んでいることを確認すると、背を向けてその場を離れた。
――――――――
入念な処置が施された後、池は医療チームに引き取られ、基地内の高度隔離治療室へ移送される準備が整った。
「安達さん、このような事態になってしまい本当に残念ですが、どうか気を落とさないでください。私たちの医療チームには、世界トップクラスの急性放射線障害の専門家が揃っています。きっと最善の治療法を見出して差し上げます。」
「そうなんですか、それは良かったです。明日も国際宇宙ステーションで当直があるんです。もし欠勤したら、今年の評価が減点されちゃいますし。給料のためにも、早く治してもらわないと困るんですよ。」
池の半分冗談めいた返事を聞いてから、医療スタッフたちは黙り込み、周囲にも少し気まずい空気が漂っていた。
「きっと私を治してくれますよね……そうでしょう?」
「もちろんです。私たち医療チームは全力を尽くしますので、ご安心ください。」
担架に横たわったままの池は、これらがすべて自分を慰めるための建前だと分かっていた。
「そうだ、先生。対策チームの連中に、私がこんなに苦労して採取したサンプルを忘れずに研究部に渡すよう、お伝えください。」
「あ……はい、すぐに引き渡すように連絡します。」
そばの医療スタッフは、一瞬反応が遅れ、そして上の空の顔で返事をした。
きっと覚えてくれないだろう。死にゆく者のつまらない言葉を気にする必要がないのだ。
池は担架に横たわったまま、後方へと次々と過ぎていく廊下の天井をぼんやりと眺めていた。これは彼の人生で通った廊下の中で最も長いものだろう。
こうして、じっくり天井の「絶景」を堪能した後、池はついに隔離病室の中に運び込まれた。
ここはさすが基地内随一の病室である。完全無菌の環境、高級感あふれる内装、観葉植物がふんだんに植えられた心地よい窓の外の景色、高級な専用バスルーム、本革のソファ、超大型曲面テレビなどが完備されていた。
もしベッドやその他の医療機器がなければ、高級ホテルに泊まっているかと錯覚してしまうかもしれない。
医療スタッフは、担架から池を特製のベッドへと移した――ベッドというよりは、カプセルのような細長いコンテナといった方が適切だろう。
まるでSF映画でよく見かける、人が中に入ることができる機械的な物体のようで、まさにハイテク感あふれるものだった。
すぐに、池のすべてのバイタルサインが壁のモニターに表示された。心拍数、心電図、血圧、血糖値、脳波、血中酸素濃度などが一目でわかるようになっている。
これこそが、このハイテク感あふれる特製ベッドの役割だ。患者の体内に恐ろしいチューブを挿入したり、様々なセンサーを貼り付けたりする必要はなく、一度横になるだけで患者のすべてのバイタルサインをリアルタイムで表示できる。
ベッドから降りた後も追跡が可能だが、その範囲は病室内に限られる。
文明が高度に発達した現代であっても、一般の病院では集中治療室や高額な高級病室にしか、このような派手な特製ベッドは設置されていない。
池にとっては、幸運と言うべきか不運と言うべきか、滅多にないVIP級の医療待遇を堪能できる機会を得たものの、結局は一度きりの体験に終わってしまうとは、あまりにももったいない。
「安達さん、現在のところ、すべての数値は正常です。血液と脳脊髄液を採取して検査を行います。専門家チームが治療計画を策定中ですので、計画がまとまり次第、直ちに治療を開始いたします。どうかごゆっくりくつろいでください。」
「よろしくお願いします。ご存知の通り、私はあまり長く待てないんです。」
「ご安心ください。何かご用がありましたら、横のボタンを押して呼んでください。また、ご体調を常時監視する必要につき、専門家チームによる治療が始まるまでは病室を離れないようにお願いいたします。ご協力ありがとうございます。」
会話が終わったところ、医療スタッフは病室を出ていき、分厚い隔離用ドアが自動的にロックされた。




