拍手まとめ
人界になれた頃。
ねえさんと散歩していたら、魔獣が現れたんだ。
おれ、雷光を駆使して魔獣と戦ってさあ。ねえさんを庇って怪我をしてしまったんだ。
血が一杯出た。
青褪めたねえさんが、凄く心配して付きっ切りでお世話をしてくれることになった
右手が完全にだめになっててさ。食事の世話とか・・・え、えへへ。うれしかったぞ!
こんなに心配してくれてさ、一生懸命お世話してくれるんなら、怪我した甲斐があったなあ・・・って思ったことは、内緒な!
もう、レイがうるさいのなんのって!
フォルトラン殿下もすごーく忌々しそうな目で見るしさ。
でも、やっぱりねえさんは優しいからな。
怪我させた事を気にしてくれているんだ。
ま。レイに言わせりゃ。
「嬢様を守り抜くのは当たり前。怪我などせず、嬢様に気を使わせる事態を引き起こすなど、未熟者め」
・・・ってことなんだけど。でも、いいじゃん。
夕方になってさ。いつもなら、風呂に入る時間帯だったんだ。
でも今日はさ、怪我もしてるし、いいかって思ったんだけど・・・ねえさんが。
縋りつくような顔で、お世話するって言ってくれてさあ。そ、そそ、その・・・一緒に風呂に入ることになったんだよ!
ちょ・・・引くなよ!
だっておれ、まだ、五歳だし! そりゃ身体は大きいけどさ!
異性と一緒にお風呂に入れる年なんだぞ!
レイの眼差しが殺すって言ってたな!
フォルトラン殿下にはぎりぎり睨まれてさ!
ちょっとびびったけど、でもさ。
一緒にお風呂。
幸せだ。
そしたら、ねえさんがねえさんが・・・。
身体を洗うねって言って・・・。
一生懸命石鹸泡立てて、身体に泡を纏い始めてさ。
なんか、おかしいなー・・・って思ったんだ。
タオルを離して、あわあわの身体を・・・そっと、背中に押し当ててきた!
びっくりして石鹸で滑って転んだよ!
そ、そしたら、ねえさんが悲鳴上げてさ!
慌てて飛び込んできたレイに、すっぱり、殺られそうになった!
なんかもう・・・。魔王閣下!!!
いたいけな少女に、なんてことを教え込むんだよおおおっ!!!
夜、夢に出ちゃうじゃないかああああっ!!!
「ってえか、ねえさん!!!」
「ひゃいっ!」
「身体は石鹸つけたタオルで洗うんで、石鹸つけた身体で、あらうんじゃないんだからねっ!!!」
アルファーレン閣下。
この、むっつりめっ!!!
*******
ダウニーでは、エイミールの顕現を演出する前に、魔狼、魔豹、魔蛇が顔をあわせてなにやら画策していた。
「・・・あれはダメだ。力にむらがある。それよりも小型だが、こっちの奴のほうが、機転が利いていいだろう」
「・・・うん。俺もそう思う。あとこいつかな。対空戦にはもってこいだぜ。あああ、この身体が飛べれば、エミー乗っけてやるのに・・・」
「乗っけて、あんあん、言わせたいのう・・・」
「「死ね」」
冷静な突込みを即座に入れて、彼らは、精査した魔族戦士の能力値を見極めていく。
エイミールの側を固めるに足りる精鋭を選出し、エイミールの前に跪かせるために。
実力があり、有益な行動をするであろう、魔族戦士を選んでいく。
綿密に人選を謀る。
・・・恐らくここでエイミールに出会わなければ、間違いなく魔界に名を轟かせたであろう、歴戦の猛者たち。
・・・しかし、彼らの道を踏み外させる事に対して、三頭に最早躊躇はない。
大事に大切に、仕舞い込んで誰にも見せなかった、彼らの宝。
今は、その宝を守るための駒は、何人いても足りなかった。
「「「間違ってもエミーが惚れるような男はダメだ(だぞ)(ダメじゃぞ)」」」
それを横目で見つめながら。
(御方様・・・。それダメでしょう・・・)
レイ・テッドは無言だった。
かくして。
三頭が、選びに選び抜いた精鋭が。
ダウニーでエイミールに跪いた彼ら魔族である。
・・・単なる、マゾじゃ、ないよ?
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・・・そんな、エイミールに縛ってもらいたい彼らは。
今日も恍惚の表情で、エイミールの側に(すんごく離れているけどね!だって側の三頭がこわいんだよ!!)侍っている。
「・・・嬢様・・・」
うっとりとはるか彼方に垣間見れる、エイミールの横顔に酔い痴れ。
チラリ動く目線の先にドキドキし。
どこの女子高校生?な感じで、崇拝しきっている。
だって。
エイミール様の魔法の術式、気持ち良いんです・・・。
恍惚のうちにイケルんです。彼方へ!そんでもって現実に立ち返ってみれば、溢れるパワー、漲る魔力!!!
これで、心酔しきらない馬鹿はいない。
日々信奉者が増えていく。
でも。
さわっちゃ、ダメダメ。見てるだけ。ちかづいちゃ、だめだめ。拝むだけ。
間違っても、魔狼さまの、ご機嫌を損ねちゃいけません。速攻、殺されるよ?
魔豹さま、魔蛇さまの嬢様との戯れを邪魔しちゃいけませんよ? かみ殺されるからね。
抱きしめてもらってた、あの子犬獣族。彼は、運がいいのか悪いのか、彼らの目線で何度も殺されているけどね。嬢様が悲しむと知っておられる三頭が、かろうじて、殺さず、生かしているそうだ・・・。
でもたぶん。
死んだほうがましかもしれないよなあああ。
あの三頭の目線にさらされて、嬢様の天国(胸の狭間)にいるんだぜ?
・・・俺なら。
・・・俺ならなあ・・・。
・・・うん。死んでもいいから挟まれてみたい・・・。
エイミール率いる魔族戦士は揃いも揃って・・・馬鹿ばかり・・・。
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強大な魔力を内包した魔族戦士は基本一匹狼。群れることはせず、自分が主で自分が全て。
それが常なのに・・・。こんなにも心惹かれる主に、出会えた今、過去の自分ははるか彼方。
「嬢様・・・」「嬢様・・・」「嬢様あああぁぁぁ・・・」
魔族戦士たちは悶えていた。
あの魔法陣の心地良さを味わった今、彼らは女を抱くだけでは得られない快感を得てしまった!
煌く黄金の魔方陣。重厚な魔方陣に囚われて身体を一から組み替えられるあの快感!
繊細な指で男を撫で上げられているような、背徳感。
背中を駆け抜ける到達感。
突き抜ける爽快感は得がたいものだった。
目を閉じれば、眩いばかりの魅惑の太ももが脳裏に浮かぶ。
恥じらいを浮かべる我らが女王に。
彼らは今日も身を投げ出して懇願する。
「嬢様あああっ!!!」
・・・踏んでください!!!
ねだれば我らの嬢様は、頬を染めつつ、すらりと長い足を差し出して。
「・・・えと。こ・・・こうですか・・・?」
むぎゅ。
(((((・・・・・・至福・・・・・・)))))
しかも一生懸命踏んでくださるので、そ、そ、その・・・太ももの影に隠された・・・白いレースが・・・。レースが・・・。。。。。
はっ!!!
覗いてません!!!
覗いてなんかいませんって!!!
ま、魔狼様・・・?魔豹さま・・・?魔蛇様・・・?
な・・・なんだか、寿命が百年は縮んだような気がするのは、気のせいじゃない、ね・・・?
鋭い爪と牙で、致命傷を受けたけど、それでも、また明日があると思えば乗り越えられるんです。
嬢様に、踏んでもらえるのなら、使い魔生活も悪くないと思うのだ。
必ず、あなたのお役に立ちます。
ですから、嬢様。
そ、その・・・明日もまた、踏んでもらえますか・・・?
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「ま、魔王!!!覚悟!!!」
剣を捧げ持ち、正眼の構えでこちらを見据える少女。黒髪の黒い瞳の可愛らしい顔立ちの娘だ。煌く鎧に身を包み、きらきらした瞳はリアナージャを捕らえ、動かない。
その後ろで、隙なくこちらを見据えている男。同じく黒髪、黒い瞳。簡素な装いだが、隙がない。娘より、はるかに場慣れしている模様で、リアナージャを見つめている。
リアナージャが眉を寄せ、身じろげば、少女がびくうっと身体をすくませた。
「・・・お、おに、お兄ちゃん。そ、その・・・ほ、ほんとにこの人が、魔王、なの・・・?」
「・・・魔力」
「魔力が大きいの?でももし違ってたら?」
「・・・強い」
「強いの!?強いって、わたし負けちゃう?」
少女の問いに男がふと笑って、抱き寄せた。腰から胸の際をすすす、と撫で上げ耳元にそっと息を吹きかける。
「・・・平気。俺がいる」
「うん!」
(・・・ううむ。なんじゃこやつ等?)
いつもの勇者だと思ったら、可愛らしい小娘と、なんだか嫌なにおいのする男の二人連れ。しかも気のせいか、男の眼差しが物騒だ。
とりあえず、遊ぶか?
せいぜい楽しませてくれれば。
そう思っていたのに!
「貴様!強いのぅ!久しぶりに、血が騒ぐ!その身のうちの血潮の色を、見せてくりゃれ!」
叫びざま魔力を叩きつけた。楽しい。楽しいぞ!久しぶりに血が騒ぐ!
高揚する魔力。色を帯び熱くなっていく。逆巻く魔力、渦をえがく魔道!
交差し、高まり、天を突かんばかりに上り詰める、二本の、力。
とどろく轟音。なぎ倒される瀟洒な城。その只中で。
リアナージャと、黒の男は向き合った。
交わす眼差し。不敵に笑う美貌の女と、顔色ひとつ変えない、冷めた目線の男。
「うぬの名は?わらわの名は、リアナージャ!リアナージャ・ナーガ!竜の長ぞ!」
「・・・竜?」
「え、あの・・・魔王じゃ、ないの?」
「魔王?・・・あの色ボケは新婚旅行じゃ。わらわのエミーを独り占めにしおってぇええ!」
剣を収めて、男が声を出した。
「・・・まちがえた」
「あ、ごめんなさい!てっきり、強くて綺麗だから、魔王だとばっかり思ってました!」
ぺこりと礼儀正しくお辞儀する娘をまじまじと見て取って、リアナージャはふふんと微笑んだ。
「当たり前じゃぁあっ!アルファーレンに負けるわらわではないわ!!エミーのために譲ってやったのだからな!」
えっへんと胸を張れば、爆乳がぶるんとゆれた。それをどこか羨ましそうに見つめる少女の目に、リアナージャが気付いた。
少女の胸はみごとな地平線。かすかな丘すら・・・なかった。
「・・・いいな・・・」
「・・・平気。俺が大きくしてやる」
「もー!おにいちゃんったら、またそんなこといって!」
嘘じゃないのに・・・。とたそがれる男。明るく笑う少女。そんな少女の笑顔を見つめて、微笑む男。
それを見てリアナージャが呟いた。
「・・・なんじゃ、お前も近親相姦志願者か」
・・・はあ、やれやれ。