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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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ドラゴンゾンビ

 邪竜との戦闘を覚悟した俺は大深林を抜け、南北を繋ぐ街道へと出ていた。


『あら?』


 急にミアが声を上げる。強者たる彼女が普通の魔物に反応するはずがない。まだ邪竜はずっと遠くにいるはずなのにと、俺は不安を覚えていた。


「ミア、どうした? まさか邪竜の気配でも感じたんじゃないだろうな?」


 俺が聞くと、ミアは首を横に振った。この様子であれば、とりあえずは安心しても良さそうである。


『実は私の使い魔が一体失われたようです。そこそこ強かったはずなんですけど』


「んん? 使い魔って、出しっぱなしなのか?」


 確かチチクリは召喚されていた。しかし、召喚が喚び寄せるという意味合いなら、この大地のどこかにいたことになる。


『悪魔は神出鬼没ですからね。他の使い魔は基本的に出しっぱなしです。かつて可愛がっていたヒュドラゾンビとかも。放置場所に設置した召喚陣で強制転移させるのですよ。地縛霊となったとき、大半をリリースしましたけどね……』


「危ねぇ奴だな? ヒュドラなんかが出没したらパニックどころじゃ済まないぞ?」


『ヒュドラゾンビは五体ともリリースしていませんし、大陸の南西にある島でおとなしくしてますよ? 基本はアンデッドですから食事も必要ありませんし。まあゾンビなので島は完全に毒素で汚染されているかと思いますけれど……』


 聞いた話を鵜呑みにしたとして、ミアの使い魔が失われたなんて話には疑問しか残らない。何しろレベル200超えのチチクリが一番弱いと彼女は話していたのだ。


「その使い魔は勝手に死んだのか?」


『いえいえ、アンデッドですからね。以前に召喚したことのあるドラゴンゾンビですよ。殺しても死なないはずなのですが……』


 益々意味不明である。殺しても死なないアンデッドがどうして消失したというのだろう。


「失われたのは間違いないのか?」

『もちろんです。契約で繋がっていますからね。私からの魔力供給も途切れていますし……』


 ミアは使役した魔物と今も繋がっているらしい。不意に魔力供給が途切れたことは使い魔が失われた事実を明確にしているようだ。


「なら討伐されたんじゃないか?」


『魔王候補にでも出会ってしまったのでしょうかね? ヒュドラゾンビと違って大陸内に放置していましたから。災難級以上はあったはずですけれど……』


 俺は薄い目をしてミアを見ている。災難級以上もあるアンデッドを野に放っているなんて。千年間に亘って何の問題もなかったことの方が驚きであった。


「まさか命令とかしていないだろうな? 戦闘の……」


『基本アンデッドは生者を求めますからね。近付けば攻撃しますよ。でもあのドラゴンゾンビは丁度良い大きさの部屋に入れてあったのです。確か海に面した場所に放置された難破船でした。非召喚時は大部屋に仕掛けた魔法陣に縛り付けていたのですけれど……』


 一応はミアも歩き回らぬように命じていたという。しかしながら、余計に失われた理由が分からない。一般人に倒せるはずはないし、本当に魔王候補と出会ったとしか思えなかった。


「ま、災難が一つ減って良かったじゃないか? ドラゴンゾンビなんてこの世に必要ない」


『結構可愛いのですけどね。喜ぶと猛毒が漏れますけど……』

「最悪じゃねぇかよ……」



 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 わたくしはセイクリッドフレアを撃ち放っていました。

 真っ直ぐに撃ち出された純白の光はドラゴンゾンビ様に直撃しています。


 鳴き声はなく、ドラゴンゾンビ様はただ焼かれていくだけ。真っ白な炎によって全身を焼かれ続けています。


 対するわたくしは静かに眺めているだけでした。効いているのかどうかも不明であったのですから。


「お嬢様!?」

「落ち着いて。今し方、覚えたのよ。これが効かなければ、もう終わりだから」


 万策尽きた状態です。セイクリッドフレアが効かないのであれば、わたくしたちに勝機はありません。今し方、昇格したセイクリッドフレアが再昇格なんてことにはならないのですから。


 程なく輝きが消失。と同時にドラゴンゾンビ様の腐肉が剥がれ落ちていく。

 最後は骨も崩れ始め、ゾンビ体であった巨体はただの亡骸に変貌していました。


「倒した……?」


 正直に実感がありません。大量の魔力回復ポーションを使い切るほど聖魔光を撃ったのです。少しも効いた感じがなかったというのに、昇格した魔法では一撃だなんて信じられるはずもないわけで。


『レベル289になりました――――』


 唐突に届く通知。それはドラゴンゾンビ様の魂が消失した証拠でした。わたくしが討伐し、魂強度を奪った事実を明確に伝えています。


「嘘……?」


 慌ててステータスを確認する。一度にレベルが250以上も上がるだなんて考えもしていないことなのです。



【名前】ヒナ・テオドール

【種別】人族

【年齢】17

【ジョブ】聖女

【属性】光・火

【レベル】289

【体力】76(+15)

【魔力】370(+74)

【戦闘】73(+87)

【知恵】383(+76)

【俊敏】44(+8)

【信仰】407(+81)

【魅力】246(+49)

【幸運】159(+31)

【加護】ディーテの加護

【スキル】

[超怪力]戦闘値50%アップ

[華の女子高生]制服を着ているとステータス二割増

・ファイアー(100)

・フレイムアロー(45)

・プロージョン(100)

・ハイプロージョン(41)

・ライトヒール(100)

・ヒール(99)

・浄化(99)

・聖魔光(100)

・セイクリッドフレア(1)



 ゴクリと息を呑んでいます。本当にレベルが289になっていました。スーテタスの伸びも半端ないものです。体力値や戦闘値こそ聞いていたままの伸び率でしたが、現状のわたくしは明確に強くなっています。


「お嬢様、どうかされましたか?」


 呆然としているとエルサが声をかけています。完全に呆けていたわたくしを心配したのでしょう。


「実はレベルが289になったのよ。ドラゴンゾンビ様を倒したら……」

「確か30とか仰ってましたね。魂強度を数値化したものは……」


 エルサにはピンと来なかったのかもしれない。何しろステータスチェックは女神様の加護によるものです。自分自身のレベルを確認できないエルサにはその凄さが分からないのだと思います。


「一度に259も上がったのよ? もっと驚いてくれてもよくない?」


 流石に口を尖らせるしかありませんね。驚きを通り越して呆然とするしかなかったのよ。エルサにも同じような反応をして欲しかったというのに。


「いやでも、最後の神聖魔法は凄かったですね……」


「アンデッドにしか効かないみたい。聖魔光と同じ聖女専用の魔法だって。クリエス様の悪霊様にも効くのかしらね?」


 エルサは小首を傾げています。今の話に疑問を持ったみたい。クリエス様の話は以前にしましたけれど、彼女はクリエス様と悪霊様がどう関係するのか分からなかったようです。


「クリエス殿は悪霊に取り憑かれているのでしょうか? 大丈夫なのですかね?」


「そうなの。それも二体。でもクリエス様はクレリックだし、何とかなっていると聞いたわ。わたくしはその悪霊様を祓うよう、ディーテ様に命じられているのよ」


「いや、クレリックならご自身で祓えないのでしょうか?」


 疑問が増えていく感じ。まあ確かに。普通は二体も取り憑かれてしまう前に祓えなかったのかと思いますわね。


「それが二体とも災禍級の悪霊様でね。常人であれば取り憑かれた瞬間に死んでしまうくらいの。クリエス様だから何とかなっているらしいわ」


 なるほどとエルサ。どうしてか益々クリエス様に興味を持ってしまった感じです。


 非常に強いというクレリック。それだけでもエルサは興味を抱いているようですが、二体も悪霊に取り憑かれているなんて冗談にしか聞こえませんものね。


「ねぇ、どこかにドラゴンゾンビいないかしら?」


 味を占めたわたくしはエルサに尋ねました。もし仮にドラゴンゾンビ様が五体いたのなら、レベル1200も狙えるような気がしたからです。


「あんな怪物がその辺りにいてたまるものですか! 私は二度とゴメンですからね!?」


 生死を彷徨ったエルサは二度と戦いたくないようです。彼女は何もできなかったし、足手纏いとなるのが嫌だったのでしょう。


「んんー、せっかく希望の光が射してきたのになぁ」


 しかしながら、わたくしも理解しています。先ほどのドラゴンゾンビ様は災難級であったはず。普通なら村や町が滅びたとしてもおかしくはないのだと。


 再び小舟へと戻り、わたくしたちは南大陸へと舵を取る。


 クリエス様が待つその大地を目指して……。


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