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煩悩まみれの聖職者と女子高生(悪役令嬢)だけで世界を救うって本気ですか? 〜終末世界は残念な二人に託されました〜  作者: さかもり
第二章 各々が歩む道

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頼みの綱

『ジョブJKは聖女に昇格しました』


 わたくしは愕然としていました。突然の通知に何が起きたのか理解できません。

 戸惑うわたくしを気にすることなく通知が続いていく。


『ステータスにジョブ補正が加わります』


 呆然と顔を振るだけです。ディーテ様から聞いた話では制約をクリアしてからジョブチェンジを目指すはずでした。しかし、脳裏に告げられたのは明確なジョブ昇格通知であって、ステータスを確認をするもJKという固有ジョブはなくなっています。


「どうして……?」


 わたくしは力なくへたり込んでしまう。どれだけ思考したとして結論は得られない。

 急にしゃがみ込んだわたくしにエルサが驚いていたけれど、今は説明できるほど冷静ではありません。


「聖女になると体力値と戦闘値が上がりにくくなる……」


 JKであった頃も上がりやすいという感覚はありませんでした。しかしながら、聖女という明確な後衛職は制約の妨げとなるようです。


 また補正によるステータスダウンはなかったものの、驚くほど上がった信仰値や知恵値とは異なり、肝心の体力値と戦闘値は少しも上がっていませんでした。


「今よりも上がらないとすれば……」


 現状のレベルは23。帝都ラズンベリまでの道中で少しばかり上がっていたのですが、ネックとなっている体力値は一つも上がっておらず、あと140が必要なままです。


「戦闘値はスキルのおかげでマシなのですけれど……」


 シルアンナ様が引いた超怪力というAランクスキルのおかげで戦闘値は50%増となっています。よって問題となっているのは上がりにくい体力値。華の女子高生による二割アップの恩恵はありましたけれど、制約の値には遠く及ばない。


「お嬢様……?」


 堪らずエルサが声をかけた。急にへたり込んだわたくしに戸惑いを隠せない様子。ぶつくさと独り言を呟くわたくしが心配でならなかったのでしょう。


「エルサ、教会へ行きます!」

「えええっ!?」


 困惑するエルサ。ペタリと座り込んだかと思えば、わたくしは唐突に立ち上がっている。加えて何の脈略もなく教会へ行くだなんて、気が触れてしまったかのように感じられたことでしょう。


 エルサの反応など気にする暇はありません。わたくしは一刻も早くディーテ様に報告すべきなのです。現状は主神様の意見を聞くことが急務であるのですから。


 駆け出すわたくしにエルサは何事かと思うけれど、従者である彼女はわたくしを追いかけるしかありません。


 大聖堂へと到着するや、即座に祈り始めた。またもや主神ディーテ様が脳裏へ顕現してくれるようにと。


 しばらくすると、脳裏に輝きが満ちた。これにはホッとしている。わたくしが期待した通りにディーテ様が現れてくれたのです。


『ヒナ、大変なことになったわね……』


 やはり彼女は現状を理解しているようです。今し方、起きたこと。わたくしが聖女にジョブチェンジしてしまったことを。


『ディーテ様、どうして急にジョブが昇格したのでしょうか?』


 まずは原因を知りたいと思う。ラズンベリ皇城から出てから一時間も経過していない。あの瞬間に何が起きたのか、今でも不思議に感じている。


『ジョブやスキルは世界が決定しています。初めから世界は貴方を聖女とするつもりだったのでしょう。恐らく引き金はアルテシオ皇帝の認識。あのあと彼は諸侯を集めて、ヒナが聖女であると公言しております。加えてパーティーの最中、アルテシオ皇帝に意見する貴方を見た者たちの認識。権力者が多く招かれておりましたので、聖女として彼らが信じた影響も少なからずあるでしょう。元より貴方は聖女であると教会が公言しております。聖女への昇格はステータスよりも一定数に周知されることが条件なのかもしれません。聖都ネオシュバルツにて聖女認定された貴方は世界中に存在する数多の信者に認められていたのでしょう』


 頭を振るしかありません。聖都に住んでいたことがネックになるだなんて考えもしていない。聖女としての認識が広まり、それを切っ掛けとしてジョブチェンジしてしまうなんてと。


 わたくしは正義に基づいて意見しただけですの。皇帝陛下に認められようという下心などなかったというのに。


『世界様が決めたのですか?』


『世界は貴方の運命など加味しませんからね。魂の管理は女神の管轄ですし、世界はその時々で適切な選定を行うだけなのです。予定外のSランクジョブ昇格ですけれど、切り替えて行くしかありません。ヒナは今まで同様、それ以上に努力を積み重ねてください』


 嘆息しつつも頷く。わたくしも分かっていますわ。現状を危惧してディーテ様に祈ったのですから。


『正直に厳しい状況であるのは間違いありません。過去に一人、アストラル世界で聖女となった者のデータが残っております。ただ彼女は冒険に出てレベルを上げるような人物ではありませんでした。なので参考程度ですけれど……』


 言ってディーテ様は過去に存在した聖女様のデータを見せてくれる。レベルは62と現状のわたくしと比較して三倍弱。知恵や信仰は流石の数値を叩きだしていましたが、肝心の戦闘値と体力値は現状のわたくしよりも低い。


【名前】シエル・ディア・ラマンダ

【種別】人族

【年齢】48

【ジョブ】聖女

【属性】光

【レベル】62

【体力】31

【魔力】238

【戦闘】32

【知恵】240

【俊敏】33

【信仰】255

【魅力】166

【幸運】112


『シエルは残念ながら48歳で失われています。聖女となった頃、レベルは30でした。知恵や信仰の値はヒナと変わらないくらいでしたので、聖女に選定される基準ステータスは思いのほか低いのかもしれません』


 ディーテ様はもしかすると魅力値や幸運値も必要になるかもと付け加えている。


『ここで重要なのはレベル30からレベル62までの変化です。体力値はその間に3しか上がっておりません。現状のヒナは体力値50です。スキルによる二割の加算分を考えると170という数値まで上げなければ制約の200に届きません。過去の聖女と同じ割合で体力値が伸びるとすれば、レベル1200を超えない限り、制約を遂げられないことになってしまいます』


 突きつけられたのは絶望的な目標でした。旅立って二ヶ月は経過していたというのに、レベルは23。制約の日まで一年を切っていることを考えると、レベル1200以上だなんて夢物語です。


『わたくしはここまでなのでしょうか……?』


 呆然と聞くしかありません。この先に旅を続けたとして、一年で1200以上のレベルになるなんて不可能なのですから。


 絶望感を覚えていたわたくしでしたが、意外にもディーテ様は打開案を持っている様子。彼女の表情は厳しいものでありましたけれど、諦めた感じでもなかったのです。


『レベル1000超えは伝説級ジョブのみが成し得ます。異界の勇者や英雄たちもレベル1000を超えていたのですから。つまりヒナは……』


 ディーテ様の話は理解に苦しむものでした。異世界を例に出されたとして、わたくしには関係のない話です。


 眉根を寄せるわたくしに、ディーテ様は理解不能な話を続けた。


『クリエス君を頼りなさい――――』



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